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アメもムチも要らない

西表島から由布島まで、水牛車に乗って10分。
牛車だけで重さ1トン…さらに大人が12名ほど乗り、足場のぬかるみの負荷も加えると、一体どれだけの重さを感じながら、水牛は引っ張ってくれているのだろう。
2016年2月に訪れた時の水牛使いさんのお話が興味深いものだった。


■手綱がない!

ひと昔前までは、牛車を曳いてくれる水牛には、手綱(たづな)をつけていたらしい。
その当時は、鞭や手で叩いてカラダに染み込ませる「調教」が主流。
もう生まれて3年目くらいからは、鞭でバシバシ!

しかし、今は違う。

1歳くらいから、「言葉だけ」で動作を徹底的に覚え込ませ、手を出すのは「撫でる時」だけ。
その結果、手綱を使わなくても、心が通じ合えば、しっかりと働いてくれるようになるとのこと。

つまり、「調教」から「教育」に変えたということだろうか。
水牛使いだから、今でも「調教」という言葉は使ってはいるだろうが、実態としては、少し意味合いが違う「教育」に近い気がした。

乗っていてこの話を聴くまで気づいていなかったのだが、確かに水牛をコントロールする『手綱』はない。
声だけで水牛が反応している。

■強さを求められるのは…

「もちろん、この子達は一切人間の言葉は解りません。しかし、基本動作の中でしっかりと心が通じ合うと、きちんと働いてくれるんです。しっかり働いてくれる水牛に手を上げるなんて、大変失礼な事ですから。」

ボクらが乗っていた水牛車の人の話

稚拙な考えかもしれないが…
「調教」と「教育」…そこにある差は、おそらく「信頼」と「愛」があるかどうかということなんじゃないかな?

しかも、教育もどこまでも「答え」はない。
さらに、教育にはどこまでもゴールもない。

しかし、相手を信じ、相手を愛し、相手とていねいに向き合っていると、必ず「応え」がある。
その「応え」は、すぐには出てこないからこそ、教える側にも思慮深さと忍耐力という「人としての強さ」が求められる。

なんらかの「応え」に辿り着くまで、教える側が教わる側へ、できるようになるまでの信念と信頼と我慢の繰り返しなんだろう。

 

■日常生活のあらゆるところで…

企業組織でも、教育現場でも、学生スポーツでも、家庭でも…気づかぬうちに、私達は「教育」ではなく、「調教」になってしまっていることはないだろうか…。

西表島の抜けるような青い空の下で、つくづく感じていた。
めっちゃ無垢な自然がたくさんの空気から、つくづく想いを馳せていた。

牛であろうと、人であろうと…罵るのではなく慮る、どれだけ理解させるかではなくどれだけ尊重できるか…これにどこまで丁寧に向き合えるのか。
西表島独特の時間の流れに身を置くことで、気づいたことかもしれない。

教える人が強い立場を誇示するのではなく、教える人こそがどれだけ強い心を持っているか…。
つまり、本当に自分に強い人ほど、人には愛情深く、同じ目線で接する。
自分にしか関心がない人ほど、相手に強く当たり、上から目線で接する。

牛と人の暮らしの中の共生から、大切な一面を、西表島で垣間見たんだ。
温かさはあれど、アメのような甘えはない。
厳しさはあれど、ムチのような虐げはない。

 

■自分の弱さを認める勇気

もちろん、親(上司)の全てが「人を想う強さ」を持ち合わせているわけではない。ボクもそうだ。
だからこそ、共に生き抜き…共に育み合う。

「共生」の中での「共育」で良いんだと思う。

まずは、それほど自分は強くないということを、素直に受け入れる勇気を持つことからはじめれば良いんじゃないかな?

  • 子供を変えたければ、まずは我々大人から

  • 生徒や選手の意識を変えたければ、まずば先生や指導者の意識から

  • 社員の意識を変えたければ、まずは社長や管理職の言動から

由布島から西表島に帰る時の水牛使いの人は、三線を奏でながら観光客に唄を披露してくれて、それ以外の時は水牛と「会話」をしていた。
(思い起こせば、由布島へ渡る「行き」の水牛使いのおじさんは、怒号に近い口調だったので、水牛使いの全員がそんな感じでもないんだなというのはちょっと皮肉だったけどね。)

最後に、有名な話ながら、この言葉を引用しておこう。

福沢諭吉は、「学校というのは人にものを教えるところではなく、人が発達するのを邪魔せず促進する環境である。だからこそ、(educationに当てられた)「教育」という言葉は適当ではない」と言い、「教育」の代わりに「発育」という言葉を用いるべきと提唱している。

2019.6.13 SankeiBiz掲載 野村竜一氏コラムより
実は引き潮の時は人も歩いて渡れる

躍心JAPAN団長
河合 義徳

#教育より共育
#子供達の意識を変えたければまずは我々大人から
#やり方よりあり方
#勝ち組より価値組

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