アントニオ・タブッキの「レクイエム」で巡るリスボン #0
はじめに
私の生涯の愛読書のひとつになるであろう一冊が、イタリアの作家アントニオ·タブッキの「レクイエム」。イタリア人である作家が、唯一ポルトガル語で書いた作品である。
1999 年、初めてポルトガルに行く前にこの小説を購入した。その時は当然ポルトガルのことを全く知らない訳なので、幻想の中の架空の町にいる心地で、その世界に入り込んだものだ。
それから少しずつ、ポルトガルに行くたびに、作品の中に登場する場所に足を運んだりした。最近、また読み直す機会を得て、やっと実際の絵がお