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「台湾野球の文化史」を読んで

興味深い内容を本を書店でたまたま見つけました。
台湾の野球について、アメリカ人の方が執筆した446ページもある分厚い本です。

台湾野球の文化史 日・米・中のはざまで
アンドルー・D・モリス 著/丸山勝 訳
2022年9月12日発行 3,200円+税 446ページ


野球好きの私は2014年に初めて台湾に出向いたとき、台湾のプロ野球を観戦して、数年後に別の野球場でも観戦しました。

この間、日本統治時代に甲子園で準優勝した「KANO」のことを知り、嘉義にも出向きました。

日本の楽天イーグルスに育成入団した台湾人選手の宋家豪投手が活躍する様子も見てきました。年俸がついに1億円を突破しました。

書籍の目次は次の通りです

目次
第一章 日本時代の台湾野球 一八九五年―一九二〇年代
・植民地の形成と野球の移入
・「洗い清められた」者たち──初期の先住民チーム「能高」
・「同化の生き証人」東京を往く
・日本人でも中国人でもなく──一九二〇年代の漢族野球

第二章 台湾野球と人種間の調和 一九三一—四五年
・嘉農野球と霧社以後
・甲子園準優勝が意味したもの
・野球と日本帝国領
・台湾 ・皇民化、全面戦争、帝国のスポーツ
・「平等な処遇」が残したもの

第三章 国民党支配の初期― 「野球は中国語にならない」 一九四五―六七年 ・二・二八事件の陰影下での野球
・「自由中国の中国人」―冷戦期の野球
・国民党統治下の野球と日本人アイデンティティー

第四章 王貞治と一九六〇年代台湾の中国人意識のありか
・中国人意識の第一歩
・世界の中国人」の「里帰り」
・「王ワンちゃん」と「名無し犬」―国籍、悲劇 ・感謝の日々―選手引退後

第五章 チーム台湾― 「中華民国万歳!」 一九六八―六九年のリトルリーグ野球
・レジェンドとしての「紅葉」―一九六八年
・国家と歴史に組み込まれた「紅葉」―一九六八年以後
・アメリカへ―金龍軍、一九六九年チーム台湾―二つのナショナリズム

第六章 「中国人」の野球 一九七〇―八〇年代
・リトルリーグ野球と国家
・欠陥を持つ者の仲間意識 Ⅰ 殺人者 ・敗者が勝者になれるか
・挫折とリートスト―野球小説と野球映画
・欠陥を持つ者の仲間意識 Ⅱ 詐欺師たち

第七章「ホムラン・バッタ」  一九九〇年代以後の台湾プロ野球
・海外進出―一九七〇~八〇年代
・世界の中の台湾と野球
・中華職業野球連盟― 「阿Q投手」と「忍者捕手」
・助っ人選手と「中国的」野球との緊張
・台湾職業野球大連盟
・台湾プロ野球の凋落―一九九七~二〇〇一年

終章 二十一世紀の台湾野球
・台湾野球とノスタルジア
・野球、アイデンティティー、個人
・再論 野球と国家
・「野球は死なず」言説
・二十一世紀の台湾野球―先住民族、帝国の痕跡

本書を読み終えて

日本統治時代に若い日本人銀行員や鉄道労働局の専用競技として台湾に野球が入ってきたこと、その後、日本、中国、アメリカの文化とアイデンティティに、さまざまな影響を与えてきたことがよくわかりました。

特に印象にったこととして、1960年代後半に台湾のリトルリーグが世界でも強かったこと、しかし、その後、年齢偽装などが発覚したこと、1990年代に台湾にプロ野球ができた後も賭博問題などが発覚して、国内では人気がなかなか獲得できないでいること、一方で国際試合は盛り上がること、台湾出身ではない王貞治氏が台湾で愛されてきたことの経緯、KANOについても映画だけではわからない背景などもまとめられていることなどがあげられます。

日本語で記述された(もともとは翻訳ですが)台湾野球の本はおそらく他にないと思うので、この分野に興味のある方には貴重な一冊となるでしょう。

今後も台湾について、野球という視点を通して、いろいろと考えていくことができればと思います。


こちらは、アメリカ・ボストンで、ボストンレッドソックスの試合を観戦した時の記事です。



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