株式会社リストラ
唐突に会社を追い出された。路頭に迷い、全く縁のない仕事に手を付けたがやはり肌が合わない。
取っ替え引っ替え職を変えて変えてと繰り返した末には、何も手につかない、文字通りの無職へと陥ってしまった。あぁ、これが、これが指先一つで人間を飛ばしてきた私への罰なのか。なんと……。
仰々しい機械音と共にヘルメットが外され、開発担当者がにこやかな笑顔で私に話しかけてくる。
「いかがでしたか、非正規労働体験VRは。どの企業の社長さんも1時間も経たずにリタイアしてしまいますが、お客様が最長記録です」
溢れる冷や汗をハンカチで拭いつつ、私は素直な感想をついつい弱気に漏らしてしまう。
「いやはや……誇張込みとはいえリアルすぎるな。ゾッとしたよ」
「そうですか。怖がらせる意図は無いのですか、開発担当としては鼻が高いです」
この会社は将来起こりうるかも知れない様々な困難を疑似体験出来る事で大きくなった会社だ。特に私の様な高所得者にとっては備えあれば憂いなしで。
「それで……次はどんな体験をさせてくれるのかな」
「次は一番リアルです」
何故か開発担当者はズボンのベルトを外しながら、それを私の前に掲げて言った。
「突然首にされた人間からの恨み、という内容で」
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