もうかえるところがなくなった
打者一巡の猛攻が続いた。そこから先はよく覚えていない。打者は幾度となく巡ったようだ。その間にユニホームは何度もデザインを変えた。季節は巡り打者は年老いて流し打ちが増えたが、また巡りながら成長し世代を変えていく者も現れた。僕は独り火だるまになりながらマウンドに立ち続けた。ブルペンから駆けつける者も何人かはいたが、その度に強風が吹いたり怪獣が現れたりして、結局たどり着く者は誰もいなかった。体調を気遣って集合していた仲間も、次第に足が遠退いた。燃えていることが一つのステージとして定着してしまった。スコアボードは何度も反転し桁を増やしついには分解されて崩壊してしまった。高く打ち上がったピッチャーフライを見上げている内にゲームが成立したようだ。あー負けた負けた。(とっくに負けていた)フライはいつまでも落ちてこなかった。僕はベンチに帰った。
誰もいない。そこはすっかりイオンに変わっていた。監督もコーチも控えの選手も誰も残っていない。
「みんなどこに行ったのですか?」
「まあ。迷子になったのね」
(かわいそうに……)
振り返ったところに強い日射しはなく、大観衆の影も消えていた。
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