秘密トンネル(ありがとうおじいさん)
「この瓶を開けた者は望みを1つ叶えてやろう」
おばあさんの瓶の前に行列ができた。
2メートルを越える巨漢が最初の挑戦者だった。余裕の表情で瓶を手に取ったが、すぐに険しい顔色に変わった。想像を絶する頑固な蓋のようだった。熊のような大男が瓶を手に取るとピンポン球のように見え、すぐに決着がつくと思われた。熊は目を丸くし、首をひねりながら引き下がった。どうも並の瓶ではない。列を作る者たちの間に張り詰めた空気が広がっていく。ロープやハンマー、様々な道具を使う者もあったがどれも効果が見られなかった。マジシャン、寿司職人、浪人、忍者、体操選手、軍人、いかなる者の挑戦もはねかえされた。続いてどこにでもいそうなおじいさんが前に進み出た。おじいさんは地べたに座り両足の間に瓶を挟んで両手を使い唸り声をあげた。
「ウゥオォーリャーアァァー!!」
しかし、瓶は開かなかった。
いよいよ僕の番がきた。
瓶を左手に取り右手で軽く蓋に触れると瓶は開いた。
(おじいさんがほぼ開けていたのかも)
おばあさんの目は僕を勝者と認めていた。
「叶えてやろう」
次の瞬間、僕は瓶の中に吸い込まれて消えた。
(それは来世へとつながるトンネルだった)