心フォーメーション
またブレ球蹴っとんのかいな
どこに届けるの?
わからへんの
自分でもわからないの
現在地を見失いました?
なるほど
あんたらそればっかりや
見失ってばっかりや
でもほんまにそうですか?
前はわかってたんか
見失う前は見つけてはったんですか
ねえ
今となってはようわからへんね
何やようわからん話ですわ
そうして見失った体で
迷子になった体でどこに行くの
あきらめに向かって突き進むんか
そんなんばっかりやな
自分の居場所もようわからんもんが
ゴールラインだけを決めて
みんなすぐあきらめる
結論を出したら賢くみえるからな
そんなんでええんか
賢くありたいんか
自分を知った?
限界を知った?
ああ賢い
ほんま賢い人ばっかりやね
ええですか
まだ本題に入ってませんよ
ほんのプロローグやわ
まだピッチサイドにおるだけや
オーダーも組めてない
選手もピッチの状態も
何もまだ把握できてない
あんたのベンチは空っぽや
なぜならば
そこにビジョンがないからや
小説を書くいうことはどういうことや?
魂の赴くままに突き進むことか?
あんたら天才ドリブラーか
ええですか
小説を書くことはラインを引くことです
書くことと書かないものの間に
好きなものと好きでないものとの間に
いるものといらないものとの間に
それが最初の伏線になるんや
それが行き先を決めるラインになります
あんたどこに行くんや
わからへん?
そうやろ
そんなもんわからへんねん
コンビニに行くの?
お弁当買いに行くの?
おにぎりとお茶を買いに行くんか
そうやないでしょ
おにぎりは自分で握りなさい
アイデアは自分で沸かしなさい
わからないのは近所じゃないからでしょ
もっと遠くにあるんでしょ
行き先は生きる場所と同じ
それはご近所とちゃう
この辺にはないどこか
今ではないどこかへ
どこ行くねん
異世界か?
ほんだら今だけを見たらあかん
闇雲に突き進むな
立ち止まれ
今だけをつかみたかったら日記でも書いたらええ
日記は今日書くもんや
今日書くことを置いて明日書く
それが小説や
今は問題やない
夢や空想は今じゃないとこにあるんや
小説を書くことは言葉を呑むことです
深呼吸や
落ち着いてでーんと構えなさい
書くんばっかりが小説やない
書かないことも小説なんや
吐きたいのをがまんして溜めとくんや
遠出するためには内にこもらなあかん
遠足の準備や
そんじょそこらの遠足ちゃうで
壮大な遠足や
書かずに何するねんって
そりゃもう決まっとるわ
読むこと以外ないですやん
時代を読むんですか
読めるもんなら読みなさい
それが無理ならじっくりと自分自身を読み込むんや
読みながら自身を絞り込んでいくんや
整えて、煮詰めて、熟成させていくんや
そんでスペースを見つけるんや
本当に必要なものを見つけるんや
情熱を注げるものを見つけるんや
欲を持ちなさい
余計な欲を捨てなさい
何でもしよう思ったら何もできへん
可能性としてのスペースと生きるスペースは別や
宇宙いっぱいに小説を書くことはできへんのよ
的を絞ってコンパクトにするんや
猫の額を見なさい
ちょうどあれくらいや
そういう姿勢で臨まないと
猫にとって大事なスペースは大きさとちゃうねん
大きさや広さが幸福ではない
自分に合ったスペースがあったらええ
ええですか
小説は姿勢が大事ですよ
小説をまとめる前に生活をまとめなさい
生活の態度は作品に現れますよ
小説の神さまが見てはるんやな
高いところから
何やあいつあかんなーとか
あいつえらい頑張っとんなーとか
よう見てらっしゃる
ええか
前につんのめっとったら
ディフェンスの網にかかるよ
ゴールに届けへんよ
オフサイドトラップとかありますよ
小説は個人技だけでは書けないのよ
ドリブルの上手い選手はいっぱいいます
その辺の公園行ってみ
こいつなんやえらい上手いな
ドリブルも上手いしなんや宙返りかいな
化け物みたいに上手いな
そんなのなんぼうでもおるで
楽しいことやで
でも小説家は楽しいだけではあかんねん
楽しませるとこまで行かなあかん
小説家は一選手であってはならないのよ
監督もコーチもサポーターも
一人でみんなやらなかんのよ
だからやめられへんのよ
やめる暇もあらへん
前だけ見とってもあかん
今を見つめとってもあかん
必要なのはドリブルでもシュートでもない
もっと大事なのはビジョンや
目前の敵に怯えたらあかん
目先の共感ばかり望んだらあかん
もっと大きく描かなあかん
今あかんかて結構
駄目で元々やろ
堂々と立ち止まったらええ
それは必要な停滞なんや
何もなくて結構
空っぽの方がスペースあんねん
今ある空白を埋めることが小説家の仕事や
上を向いてごらん
そうや
今なんかに惑わされずに
現実から目を逸らすんや
想像のラインの向こうを見てみい
もっと遠く遠くを見通すんや
それが小説家の視線や
目を閉じても見えるはずや
未来にはスペースがある
そこに小説家のフィールドが開けてる
何も慌てることあらへん
旅を大きくするためには大きく息を吸うことや
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