遅延小説家
書く時間がないんですか?
そうですか
あんたのSNSいうの
見せてもらいましたよ
ラーメン食べに行きました
モヤさま見ました
小説がわかりません
小説がわからなくなりました
それであんたここにおるんやね
熱心やないの
プレバト見ました
コナン君見に行きました
スイーツ食べに行きました
色々時間ありますね
ん?
そういう問題ちゃうの
どういう問題や
わかりやすく言いましょうか
この町にはカレー屋さんあります
でもあんたの中ではないねんな
なんでかな
「あんたが雲の方ばかり見て歩いてるからや」
だいたいないわけないやん
こんだけ町にスペースあんねんからな
カレー屋さんはあるよね
あんたがカレー屋さんを向いてないんや
カレー屋さんいっぱいあんのに
「それがあなたの時間です」
あんたカレー屋さん嫌いか?
そうでもないでしょ
むしろ好きやねん
好きやから怖いんちゃうん?
カレー屋さん行ってみたらなんや
いっぱいかいな
居場所なしかいな
あーあー
で
断られるのが怖いんかな
好きです
ごめんなさい
それが怖いばっかりに
ずっと片想いいうことにしとくんや
カレー屋さんを想像の彼方に寝かせて
この町にはないことにしとるわけやな
本当はあるのに
時間もそうや
「ないのは小説の時間だけです」
向き合って上手くいかずに
駄目でしたいうのが怖いんちゃうか
それで時間を言い訳にして
先延ばしにしてんのよ
何でもよくあることやで
「そういうあんたは遅延小説家なんや」
どうでもいいことする時間はきっとあんのよ
歯医者さんやパン屋さんはいっぱいあんのよ
そういう時間は気楽で傷つけへんからね
そやけど
ほんまそれでええんか
ないないないない言うてる間に
ほんまになくなってしまうよ
もったいないと思いませんか?
「本当はカレー屋さん見つけたいんでしょ」
簡単やで
カレー屋さんの方を向いたらええねん
ええですか
小説家の課題は時間だけですよ
時間を削り時間を食われ時間を忘れ
時間に乗って時間を追って時間に追われ
小説家の中には小説家の時間が流れるんや
時間とどうつき合うのか
それだけで小説は変わっていきますよ
「小説は時間をコントロールするものです」
ええですか
時間なんてのはあってないようなもんです
こんにちは
いまお時間よろしいですか
あるんですか
ないんですか
どないなんですか
少しあるんですか
少しならいいんですか
時間は長さとちゃいまっせ
ええですか
時間は心やねん
だからどないでもなんねん
伸びたり縮んだりするんですわ
生むのも消すのも心がけなのよ
どうですか
「小説の時間は見つかりましたか?」
見つけてしまったらもう書くしかないわな
間に合いますかって?
あんた誰と張り合っとんのや
今から書くからええんやないの
それはまだどこにも書かれてないわけやから
あんたはいま生きてんねん
生きてる者がいまから小説を書く
「いまから書くのが現代小説ですよ」
そんでええねん
遅延小説家から現代小説家へ
ぱーっと転身や
遅れた分くらいなんぼでも取り戻せる
見つけた分だけ
時間もスペースもあんねんから
スペースはずっとあんねん
反省もええねんけども
昨日の自分を責めててもきりがないわけや
それよりも明日の自分に何ができるか
「小説は明日の自分へのプレゼントです」
わくわくするやろ
だからみんなやめられへんのよ
まずはよそ見ばっかりせんと
自分のために書いていったらよろしい
書いてみんことにはわからへん
わかったら書いてみなさい
スペースはあんねんから
そこに自分の想像を走らせたらええねん
あんたやったらできんねん