見出し画像

ねー(ミスタッチ)

 倉庫へ続く道が壁になっている。ボタンは2つ、右か左か、どちらかが正解だ。少し迷って右にかけてみた。開かない。嫌な予感がして、その場を離れた。

「地下1階で火災が発生!」
 周囲がざわついていた。
「うそです! 僕が押しました」
 皆がいたい者を見るような目で僕を見た。
「電話をお借りします」
 司令部に連絡したかった。教えられた通り2番を押すとすぐにつながった。
「ささやま商事です」
「失礼しました」
 司令部にはつながらなかった。どうもおかしい。近くの人にもう一度教えてもらう。
「任意の2文字です」
 か、な、と押して待った。しばらくしても呼び出し音に切り替わらない。ずっと無音の状態が続く。待つことが苦しくなって、僕は周囲の人に説明を始めた。

「ボタンが2つあったんですよ。正解はソフトな方じゃないんです。カチッと押す方。カチッと押す方が正解なんですよ。書いといてほしいですよね。ねー……」


#ミスタッチ #ボタン #テレフォン

#夢 #小説 #緊急事態

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?