レア・ケース&コーヒー
とんでもない事態が発生した。
マニュアルにはあらゆるケースを想定した、対処法が記されていた。それに沿って動けば解決不能の問題はないと長く信じられていた。それにしてもとんでもない事態が起きたものだ。
私たちはマニュアルを一旦置くことにした。今必要とされるページがまるでわからなかったのだ。
私たちはお菓子を食べた。歌ったり日記を書いたり昼寝をしたりした。それがよいことだとは思わなかった。それでも何か普通のことがしてみたかった。日常的な動作にくっついて落ち着いてみたかったのかもしれない。ぶらぶらと遊ぶ者がいた。パズルに興じる者がいた。酒に手を伸ばす者も現れた。
「そんなことをしている場合じゃない!」
AIマネージャーが駆けつけて言った。
私たちは何をしていいかわからなかった。
「これはどんな場合なんですか?」
マニュアルにない事態は初めてのことだ。
「今はどんな場合でもない!」
だったらそれは初めてのケースだ。
「そんなことが?」
「だから自分たちで考え動いてください!」
私たちはただおたおたとしていた。
コーヒーにしようよと誰かが提案した。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?