学力の平均回帰性について

前回の記事の続きになります。

イブリースさんからの2つの指摘、
・学力(偏差値)の線形性の問題
・学力(偏差値)の平均回帰性の問題
の平均回帰性の問題についてつらつらと考えてみたいと思います。

あと「平均への回帰」という要素が想定されます。「平均が早慶になる学校」に入る難易度は早慶よりも高い可能性って考えられませんかね。12歳の時点で偏差値70だった人のうち、18歳時点で偏差値70の人がどれくらいいるのか。平均への回帰が存在する場合は中学受験時点で平均偏差値70の学校の18歳時点での平均偏差値は65になっていて、逆に偏差値45の学校は48になっている、なんて可能性があります。

イブリースさんコメント

ここで、平均回帰とは別に学力はそれぞれの生徒ごとに上下にランダムウォークしている効果が考えられると思います。同じような学力を持って入学した生徒が、ある子は東大に合格し、ある子は"深海魚"と言われるようになる現象は単に平均(偏差値50)に回帰する効果だけでは説明できないと考えるからです。(また一度深海魚になった生徒が何らかのきっかけで覚醒することもままあります)

生徒全体としてはゆるやかに平均回帰しつつ、個々の生徒の学力は生徒本来のポテンシャルに向かいつつも上下に大きくブラウン運動・ランダムウォークしながら推移する、という現象は、
数理ファイナンスにおけるバシチェック・モデルのような働きであると言えそうです(本当?)

ここから、普通の進学校と付属校の場合についてそれぞれランダムウォーク性と平均回帰性を考えてみたいと思います。

進学校の場合

まずランダムウォーク性にフォーカスして考えるならば、高校入学した生徒よりも中学入学した生徒の方が卒業時の上下の振れ幅が激しいはずです。
高入のある中高一貫校の生徒の学力分布を考えたとき、"平均学力"は偏差値キルヒホッフの法則で概ね同じはずですが、最上位層と最下位層は中入生徒が占めているのではないかと推察されます。(私は高入のない中高一貫校出身なので肌感覚が全くありませんが・・・)

一方で平均回帰性について考える場合、もし平均回帰の効果(速度)が十分に大きいならば、中学入学時における学校間の多少の偏差値差は6年後の大学進学実績にはほとんど関係がないのではないかと思われます。

しかし現実には御三家・御三卿と呼ばれる上位校と、種類物と呼ばれる中堅校の進学実績差はかなり大きいように思え、6年間でこの偏差値差が解消されているとは考えにくいです。

具体的なデータで立証することができず恐縮ですが、
筆者の肌感覚としては学校全体での学力の平均回帰性は中高6年間ではそれほど強いとはいえず、また個別具体の生徒について言えば本来持つポテンシャルに向かう効果やランダムウォーク性が与える影響が大きい、と考えています。

>「平均が早慶になる学校」に入る難易度は早慶(大)よりも高い可能性
について言えば、これはさほど大きくは変わらないだろうと考えています。

付属校の場合

進学校の場合と異なる点は、通常の付属校は進路のアップサイドを放棄する代わりにダウンサイドもない(進学先の大学が確定している)という点です。

進学校の場合は入った生徒の平均回帰性は高くないと言いましたが、付属校にわざわざ入学して利益確定させるという行動をする生徒(親)には逆選択が生じている可能性が高いと考えます。(日東駒専以上の大学の付属校を前提にします)
つまり、自分本来の潜在学力よりも今の学力がかなり上振れている(塾や個別指導などで本来の学力からかなりブーストしている(実際に出来ている)、早熟タイプ・4~6月生まれで若年時にのみ何らかの優位性がある)ことを感じている、"のびしろ"に乏しいことを感じている場合において付属校を志望する可能性が高いのではないかということです。

一方で大学側としては、燃え尽きた生徒ばかりを付属校から集めることには問題が生じますから、そこはハードルを多少上げることを考えるでしょう(もしくは早熟な生徒が逆選択で集中することで神の見えざる手によって同等の進学実績を持つ学校よりも入学難易度が上昇することでしょう)

つまり、進学校ではさほど問題にならなかった、生徒本来のポテンシャルへの(個別にはランダムウォークしながらの)回帰効果がマイナス方向にかなり大きいだろうと想像します。逆選択している(偏差値を盛って早期に入学している)学生は本来の学力に向かって平均的には段々落ちていくだろうということです。

ある大学の卒業生について偏差値キルヒホッフの法則が成立しているとすると、卒業時の平均学力(平均GPA?)はどこの時点から入っても同じでなければならないため、早期に入学を確定させようとすればするほど、その時点においてより高い学力の発揮を要求されてしまうのです。(しかしそれでもランダムウォーク性を考えれば卒業生の最上位層と最下位層はどちらも早期入学者が占めているはずです)

この逆選択による学歴確定効果が"付属校プレミアム"の源泉であり、大学受験よりも早期に確定させに行くほど(高校より中学、中学より小学校)、より高いプレミアムが要求されるのではないかと思います。

つまり付属校の場合、
>「平均が早慶になる学校」に入る難易度は早慶(大)よりも高い可能性
について言えば、より早期に入ろうとするほど高くなるだろう、と考えています。

ここから余談

なお、中高一貫校は教育効果が高いのではないか、という仮説については私は(自分自身が途中でかなり深海魚っていた経験も踏まえて)かなり否定的です。

「中学受験を考える塾長」さんもブログで述べていますが、指導力が飛びぬけて高い学校があればそれはデータ上もはっきりと表れてよいはずなのですが、現実にはほとんどそのような効果は見られないのではないかと思います。

一方で教育効果(偏差値を高める効果)とは別に進路方向を矯正する効果はある程度あるものと思います。

過去のnoteでも言及していますが、

都立三番手校は入学偏差値の割にはっきり私大(早慶・MARCH)に強いことが分かります。
また種類物男子校は私立医学部への進学が多いことが分かります。

学校の進路指導のたまものなのか、それとも同じような志向を持つ生徒を集められているのかはわかりませんが、(潜在意識に働きかけて?)進路の方向を左右する効果があるように思います。

余談終了

あまり煮え切らない感じになってしまいましたが、今後も付属校と同等の進学実績を持つ進学校との比較を通して、付属校入学のプレミアムについて考えてみたいと思っています。

いいなと思ったら応援しよう!