接点の強さを決めるものは

9月末より秀徹という身体操作道場に入会した。
なぜ、秀徹に入会したのか。
今年の春から仙骨をキーワードにして、トレーニングを開始していた私はYouTubeで”仙骨”をキーワードに動画を見ることが増えた。そこで秀徹なるものに出会い、これこそ私が今求めていることだ、そう思い、門を叩くことにしたというわけだ。
秀徹® - 人を強烈に強くする身体メソッド (shutetsukaratedo.com)

そもそも何故、仙骨なるものに興味を持ったのか。19〜29歳まで私はラグビーをやっていた。高校まで野球をやっていたが、いわゆるコンタクトスポーツは初めての経験だった。もともと臆病者の私はコンタクトプレーが苦手だった。だから怖さを払拭するためにもウエイトトレーニングは、チームで一番熱心に取り組んだ。
しかし、いざタックルする時は頭が下がり、腰が引けているために、相手を倒すどころか吹っ飛ばされた。それでも、時々ではあるが、私が相手を向こう側に倒すタックルもできるようになった。
とは言え、やはりコンタクトプレーはタックルのみならず得意とは言えないままプレイヤーとしては終わることになる。

そんな私はラグビーを辞めた後に、今の職業のトレーニングコーチをやることになり、ご縁あって
34歳からメインの指導先は19年間大学のラグビー部になった。今度は、私でなはなく指導する選手たちがコンタクトプレーに負けない身体作りをするのが、私の役割となったのだ。勿論、その中心はウエイトトレーニングである。帝京大学ラグビー部を見ればわかるが、強いチームはデカくて強いのだ。ラグビーはどんでん返しが少ないスポーツと言われる。その理由が、まさにフィジカルの差、一つひとつの接点での勝敗がそのまま試合の勝敗に反映されるのだ。だから、大学生のみならず筋肉量を増やすことと、下肢の筋出力を高めることが、接点で負けないためには絶対条件なのである。

接点の強さを決めるものは何か。
四つほどあげてみたい。

まずは力学にヒントがある。

運動量が大きいことが接点の強さになる。
運動量とは何か?
「運動の勢い」と言うのだが、ちょっとわかりづらいので、下の公式から考える。
運動量=質量×速度
運動量とは質量が大きくて速度が速いほど大きくなるというわけだ。ここでいう質量は、人の場合には体重となる。つまり、体重が重くてスピードが速いほど運動量も大きくなるというわけだ。
デカくて速いものと、小さくて遅いもの、当たったらどっちが強いかというわけだ。運動量という言葉を知らなくても、極めてシンプルな答えだ。

接点の強さを決めるものの二つ目、
それはメンタルだ。

上記の運動量は速度が大きいほど、大きくなると書いたが、私も含めて多くの人間は、コンタクトする際に恐怖心があるので、スピードを落としてしまうのだ。そうビビってスピードを落として当たるのだ。そうなると、当然、運動量は大きくならないから接点で負けてしまうというわけだ。コンタクトする際に一歩踏み込めるかどうか、それはビビらずいけるかどうかなのだ。

接点の強さを決めるものの三つめ、
いわゆる体幹の強さだ。

丹田とか、下っ腹に力入れるとか、仙骨を立てるとか、腰を入れるとか、軸とか呼ばれるているものだ。これは、もう押し合いをして対人で組んでみないと、その強さを実感するのは難しいのだが。

私が最初に、この体幹の強さを実感したのは、2004年にサポートを開始した大学ラグビー部の最初の夏合宿の時だ。
練習の最後に、2人組で1人が、相手の胸におでこをつけて、両手を脇をしめて相手の胸の下辺りに置き、その姿勢から相手を5m押していくという相撲トレーニングがあった。受ける側は、押す側より重心は高くなるのだが、簡単に押されないようにしなければいけなかった。

選手同士のペアは、合図と同時に、あっという間に5m押してしまうので終わってしまう。逆に言えば、受ける側は耐えることがほとんどできないのだ。それもそのはずで、相撲で言えば、頭をつけられ相手に下から脇を締めて両下手を取られている状態なのだ、誰がどう見ても押す側が有利なのだ。
しかし、一組だけは、受ける側がピクリとも動かなかった。その組の押す側は、プロップのレギュラーの4年生2人で、体重も110kgを超えている巨漢だ。しかも、2人ともその後、社会人のトップチームにて活躍できるほどの逸材だった。それなのに、その2人が交代でやっていても、その組の受け手はビクともしないのだ。その受け手は、その時42歳になる監督だった。監督は35歳までプレイヤーとしてやってはいたものの、引退してからは一切トレーニングはしていなかった。
しかも、選手2人はスパイクなのに、監督はアップシューズにも関わらず押されないのだ。
巨漢の2人は押せないので、なかなか終わらず息も上がっている。一方、監督は汗一つかいていないのではと思われるくらい余裕の表情なのだ。側から見ていると、踏ん張っている、頑張って耐えている感じが一切なかったのだ。
私は監督にどこを意識しているのか聞いてみた。監督は丹田辺りを触り、「ここを落としている感じです」と教えてくれた。
時々、人数の関係で私が受け手側をやる事もあったので、監督の教え通りにやってみた。すると、確かに私より重く筋力が強い選手が押してきても、私もまあまあ耐えることはできた。が、しかし、監督のように1ミリも動かないことは到底無理で、かつ、相当頑張って押し返そうとしているので、足も体幹も腕もむちゃくちゃ疲れるのだ。もう必死で押し返している感じでやっていた。
聞けば監督自身が現役だった時に、練習の最後に、この相撲の1対1の押し合いと手押し車100mと肩車200mを毎日やらされたのだと言う。

あれから20年経った今年から、私はラグビー部でなく、違う大学のアメフト部のストレングス&コンディショニングコーチとなった。
2月中旬から新チームがスタートし、3月初旬に4泊5日のトレーニング合宿が行われた。早朝にウエイトトレーニング、午前中にムーブメントトレーニング、そして午後が持久力と対人でのトレーニングというプログラムだった。ヘッドコーチから私への要望は、とにかくコンタクトで関西のチームに負けないフィジカルを作って欲しいというものだった。
この春合宿では、ウエイトはフォーム作りの段階で鍛えて強くするものではなかった。その代わり、午後からの対人トレーニングがコンタクトの強化に繋げていくものとして取り組んだ。
その中のひとつに、相撲トレーニングの押し合いも導入した。
2004年の時は、34歳だった私も54になり体重も軽くなり筋力も落ちていた。しかし、デモンストレーションは選手相手にやらねばならず、もう、それはそれは必死で相撲の受け手側で押されまいと頑張ってみた。私自身も久しぶりにやるトレーニングだったが、なんとかアドレナリンを出しまくったのと、選手よりはコツを知っていたので、少しは抵抗することができた。
しかし、そのおかげで、私は人生で初めて腹直筋を攣る経験をしたのだ。合宿も中日の昼休み、私はバックからペットボトルを取り出そうとした。すると、まさに腹直筋が攣ったのだ。それだけ必死になって押されまいと踏ん張っていたのだと思う。

そんな合宿を経験したことで、やっぱり選手への説得力を増すためにも、かつてのラグビー部の監督のように私自身がもっと強くなりたいと思い、この春から仙骨をキーワードにYouTube動画を視聴し、またパーソナルセッションを受け、日々仙骨を意識したトレーニングを開始したのだ。その中で冒頭の秀徹にたどり着いたのだ。

まだ稽古会は4回しか行けていないが、師範の藤原先生の強さは半端ない。まさに、ラグビー部の監督が涼しい顔でも押されなかったのと同じように、余裕の表情で圧倒的な力を出せるのだ。
監督とは違う言い方だが、やはり体幹の重要性、姿勢の重要性を稽古会に参加している方々に向けて、毎回様々なトレーニングを身をもって伝えてくれるのだ。私何ぞは、まだまだ話にならないが、1日でも早く藤原先生のような強さを身につけたい。

接点の強さを決めるものの四つめ、
それは、コンタクトスキルだ。

コンタクトスキルとは、ここでは効率のよい力の伝え方とは何かを書いてみたい。
それは何か。
力を出す方向とタイミングだ。
どんなにスクワットで筋力をつけたとしても、この二つの要素がズレていれば、力は効率良く相手には伝わらないのだ。
我々が地球上にいる限り、地面反力は押した方向と反対に、同じだけの力が返るのだ。効率よく力を伝えたければ、押す方向はむちゃくちゃ重要になるのだ。

そして、もう一つ。
力を出すタイミングは、まさにコンタクトする瞬間でなれけば宝の持ち腐れとなる。
野球のバッティングでも、ボクシングのパンチでも当たる瞬間に力を出せているかどうか。この力を出すタイミングを見逃すわけにはいかないのだ。

ここで重要となるスキルが抜重だ。
抜重とは膝を抜くとかも言われるが、簡単に言えば重力を利用して落下するもので、落ちた瞬間に切り返せば体重以上の力を地面からもらえるのだ。よーく見るとタックルの強い選手は、抜重とは言わずとも、ほぼほぼやっているのだ。
私が抜重という言葉を知ったのは古武術の甲野先生の技を動画で見た時だ。

甲野先生がゴザ(のようなもの)を敷いた上に立っている。そして、甲野先生の後ろから一気にゴザを引っ張っるのだ。普通に踏ん張っていたら転ぶところ、抜重をした甲野先生は、バランスを崩すことなく、そのまま立っていられるのだ。
そして、その抜重を利用したトレーニングが紹介される。

1人がスピードをつけて走ってくる、そしてコンタクトダミーを持って立っている選手に当たるというものだ。この立っている選手が、まさに走ってきた選手とコンタクトする瞬間に抜重するのだ。この抜重のタイミングが合うと、なんと立っている選手は吹っ飛ばされないのだ。バチっという感じで見事に止まれるのだ。
こちらは、言葉で伝えるのは難しいので、手前味噌だが私のYouTube動画を下記に貼り付けたいと思うので参考にしてもらえれば。

https://youtu.be/mrxNiS2PXYU?si=InajTlmJE9hYmEcg

以上、思いつくままに、接点の強さを決めるものを書いてきた。
まさか、54になって道場に入会するなんて考えたこともなかった。今現在の目標は、来春、アメフト部の合宿に帯同することができたなら、そこで55歳、64kgのオッさんが、100kg超える選手たちとの相撲トレーニングで圧倒したい。それも涼しい顔つきでだ。

もし、私がそれができたなら、接点の強さを語れる資格が本当の意味で持てるのかと思う。

さあ、今日も接点の強さを求めて鍛錬してきますか。





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