「Dior Tears」のクロッシェハットを再現してスキズの気分を味わいたい~糸決定&制作編~
前回はこちら。先にお読みいただけると嬉しいです
糸、見つかる
糸はパピーのコットンコナにしました。
決め手は希望の色が3色全てあったこととレース糸より太い綿の糸だったからです。
本物よりも茶色が薄く、赤も暗いですがこれ以上のものはすぐに見つからないと考えてこれに落ち着きました。撚りも本物の糸より強いので光の当たり方といいますか、照りっとする糸だったので編地の表面の雰囲気まで再現することはできませんでした。もし同じように作りたい人がいらっしゃったら、根気強く糸探しをしていただければと思います。ぬいぐるみにかぶせたい方は、25番刺しゅう糸を使うと高クオリティのものが作れると思います。
今回は画像という資料がありますので、アナログですが編み目を数えながら「〇段の時の1模様は長編み〇目、鎖目はたぶん◆目」という感じで簡単なメモをとり、実際に編んでみて気に入らなければほどく⇒変更点のメモをとる を繰り返しながら制作しました。
1日目
トップを編む
糸が届いた瞬間に制作スタート。
頭頂部から編み始めます。13目作り目で5段、普通に増し目をしながら丸く編んでいきます。
はじめは7号針で編んでいたのですが、サイドを数段編んでからかぶってみると頭包帯巻いてますか?ってくらいサイズが頭回りピタピタになってしまって、やり直し。8号針が手元になくて致し方なく9号針でやってみたものの今度はぶかぶかすぎてやり直し。てなわけで本格的な制作は2日目に持ち越しとなりました_(┐「ε:)_
2日目
翌日に8号針でトップから再スタート。前日にやり直しになった編地は配色の為に玉から切ってしまっていたので、ほどかずに段数の見本として見ながら編み進めました。
松編みに入る前の準備の段(なんといえばいいかわからない)は目の手前のすじを残して長編みを編みます。こうすることで編地が折れやすくなり、トップとサイドの境目が明確になります。(蝶つがいみたいなイメージ)
サイド~ブリムを配色変えながら編む
この帽子のデザインの肝となる松編み部分を編んでいきます。長編みは数えることができますが、長編みに包まれている鎖の目数は画像からでは知ることができませんので、画像の編地の隙間の開き具合と自分の手加減と相談しつつ調整しました。とりあえず思ったより鎖は少なめの方がいいということはわかりました。配色ゾーンについてですが1段につき色が変わるのは1本なので糸替えはしやすかったように思います。松編み1段目の茶色~真ん中の茶色までが同じ目数で、そこから徐々に松編みのサイズを大きくしていきます。
本物のデザインだとブリム部分の茶色は3段なのですが、この糸で3段編むとブリムが大きくなりすぎて個人的に使いづらくなりそうだったので、2段で止めて縁取りに入ることにしました。丈が長くなった原因としては本物よりも糸がゴツいので、1段の幅が太く仕上がったからだと思います。
最終段のブリムのふちは細編みでぐるりと編みました。
裏返し問題、気になりすぎてDiorに問い合わせる
前回の記事で気になった「帽子、モデルがかぶるときなぜ裏返しなのか問題」なのですが、最近また新しく帽子をかぶったHANくんの画像がUPされたんですけど
いやめちゃめちゃ帽子裏返っとるやん…
どうしてだよ。本来裏についてるはずのタグはどこ行ったの?(タグ見えない角度だけど)見せるのもおしゃれってこと???何の意図があるの?
(※他にも顔周りのアップのモノクロ画像が出回ってたのですが、紙面の内容っぽいのでここに貼るのは断念…そちらのほうがより編地が裏返しだということがわかります)
え、本当に誰もわからないのか??編み物知ってる人なら絶対気にするのに!まじで教えてくれよぉぉぉぉ!と辛抱たまらなくなりまして、勇気を出してDiorに問い合わせてみました。
内容としては「(オンラインブティックの商品ページに関して)リバーシブルなデザインでもないのになぜモデル着用の画像では裏面を表に出して着用しているのか、些細なことで申し訳ないが教えていただけるとありがたい」をめっちゃ丁寧な文章にして送りました。
こんな質問に真面目に返してくれるのかわからなかったのですが、なんと返事がきました。
モデルも表面着用だと…?う~ん…絶対裏なんだけどな…1番最初のコレクション発表時のショーとかプレス画像を見るとちゃんと表なんだけども…商品ページのモデルさんとHANくんがなぜ裏返しでかぶっているのか、結局真相にたどり着くことはできませんでした。無念。
とにかく、裏返してかぶっちまっても違和感がないくらい裏もきれいに始末しろということだけはわかりました()
気を取り直してアイロン&糸始末をする
この編地でこの形状なので待ち針は打てませんでしたが、それでも編み目とか形を整えたかったので平たく置いてスチームをかけました。糸始末は2本取り&絶妙な配色幅のせいで本数が多かったですがなんとか仕上げました。本当に糸始末って編み物で楽しくない工程です(._.)唯一楽しくない。
そんなこんなで
完成~!
仕上がった作品はこちらになります。いかがでしょうか
裏返しでもかぶってみました。気分はハンジソン
Diorは作れるが、本物にはブランドパワーがつまってる
ノリにノッて作ったので2日で編めたこの帽子、かなり高い再現度だと思っています。2本取りだったので3色を2玉ずつ使用しましたが、糸をきれいに巻き直す余力があれば赤と橙は1玉ずつでも間に合うと思います。私の場合糸は直営店より安いところで買ったのですが、茶色を少し多めに購入しても6千円程度でした。しかも糸の残量的に帽子がもうひとつ作れると思います。これとほぼ同等の帽子がDiorでは15万5千円で販売されているのです。100%手編みとはいえハイブランドってすげぇや…と、ブランドが持つ歴史とパワーを再認識いたしました。
かぎ針編みの商品について心に留めてほしいこと
最後に私が声を大にして言いたいことがあるんですけど、ブランドの大小に関わらずかぎ針編みは機械化できていないんです。機械に仕事をとられていない貴重な分野です。
※棒針編みは機械化されて横編み機としてニット工場で利用されています。
最近ではかぎ針編み風に見せるテキスタイルで作られたキャミソールやトップスを着ている方もじわじわ増えていますが、リアルクロッシェは確実に人の手によって編まれています。あなたが持っているその帽子・バッグ・トップスは地球上のどこかにいる人が編んだものです。是非その作り手に思いを馳せてみてほしいです。
誰目線ですか?って感じですけど…編む者だからこそそう思います。かぎ針編み、みんな大事にしてこ?
おわりに
はじめてブランドのコレクションから分析してニットアイテムを再現しました。きっかけはドルオタ故の創作意欲ですが、構造を考えるのはすごく勉強になりましたし、とても楽しかったです!ハイブランドニット再現は気に入ったものが今後現れたときまたやってみたいと思います。
満足満足、この帽子かぶりまくろ(/・ω・)/
ではでは