【‘’日本ワイン講座” 日本ワインの可能性を探るセミナー】
2015/4/12
4月9日
″『日本ワイン』とその可能性を探る″
参加した軽いレポートですが、鬼のように長くなります。
開催の情報を得た瞬間飛び付きました。
主催を見て、え、と声を漏らしたから。
その主催″農林水産省関東農政局″です。
日本ワインの注目度、
最近のワイン売り場や飲食店でのリスト、造り手の方と飲み手の交流の機会、TVやSNSでの様々な情報発信……
そんな動きで露出が増え、高まっているのでは?と、一過性のブームなんかではない。日本だからという単なる愛着の精神だけではない。素人の私でも実感します。
行政が今回のシンポジウムを作り上げた、と考えると、日本ワインへの注目は、単なる″嗜好品″としてでない期待の大きさを、意味を感じるものがあります。
農政局の方はどんなお話をするのか?そこが一番気になりました。
基調講演にヴィラデストの玉村豊男さん。
日本ワイン農業研究所を設立し、5月12日開講予定で千曲川ワインアカデミー、始まります。
″ワイナリーは一ヶ所に集まるほどいい″
というのは集客の経済効果だけでなく、ボトリングや機械の共同化によるコスト削減、または、倉庫会社など水平分業させることによる効果も期待できるとのこと。
日本ワインの価格の問題はインフラが整えば安くできるのでは?ということでした。
″農業としてのワインづくり″
″ワインづくりはその土地を借りて自分の力を表現できる″
″工業と違い、そこだからこそできる、表現できる味わいがある。だからこそ農業には持続性があると考える″
そんな言葉も響きました。
フード&ワインジャーナリスト鹿取みゆきさん。
ワイナリー設立が活発な都道府県、新興産地の生まれる兆しのある町、村。栽培したブドウの流れていく先……
色んなお話の中で興味深かったことは
″ワイン用ブドウ栽培面積の推移″
2010年から比較し、2015年見込みで約3倍に増加しているのが長野県東御市。同、高山村は2倍ということでした。
生産量が足りない、と懸念されるブドウのこと。
ワインvalley構想で盛り上がる長野県ですが、期待できるのは、玉村さんがおっしゃる″農業としてのワイン造り″を言葉でなくきちんと対策、計画に考えていることであると感じます。
農業なのだから、持続させていくべきなのだから、どう生産量を上げるか?
本当に重要だと思います。
山梨大学 柳田藤寿教授
面白いなと思ったのは、ブドウの生長に無効な低温域を除いた″有効積算温度″を用いて、ブドウの成熟期におけるリンゴ酸やフラネオールという香気成分の含有量の変化から、収穫時期を予測するシステムを研究されているということ。
勿論、赤池幻酵母も。7~8年に一度しか現れない幻の池から採取する酵母。ロマンを感じますね。
SUNTORYの渡辺直樹さん
感動したのは、いいワインができなかった時期のこと、ワインはブドウから。ということで自分も畑に出ようと、ブドウ栽培を支える″土″を掘り続けた数年間があったこと。そして、テクノロジーではなく、その品種、風土ノ個性をどれだけ引き出してあげられるか?それを考えているということです。
勝沼ワイナリーマーケット 新田正明さん
ものを売るだけではいけない。″そこでしか造れないものを造っている人たちのマーケットを作らなければその人たちは食べていけない″ と、覚悟を持った流通を、ということで、様々な活動をされていることに感動しました。
大学生や年配の方へワイン会をしたり、次世代の飲み手、子供へ、山梨の農業、畑の価値を伝えようとする活動。
″儲け″でなく、ワインを扱う立場としての責任感とその思いに打たれました。
楠ワイナリー 楠茂幸さん
夢を抱きワイナリー設立をめざす人が急増する中、こんなリアルな数字を教えてくださる貴重な機会でした。ワイン造りのために必要なブドウ栽培。設備。ブドウの果汁を得るためにどれだけ大変な作業や資金のやりくりがあるか、たんたんと。
でもほっこりしたのは、数年間は赤字覚悟で不安でも大変でも、儲けをむさぼらず、家族とワイン造りの環境を楽しむ生活が幸せと感じられるならそれでいい。そういったことをおっしゃられたことです。
ペイザナ農事組合法人 小山田幸紀さん
講演後にお話させていただいたときも、″他のお酒とは違うのは、ワインは農業″それに強い思いが感じられました。
驚いたのは、自分は飽きやすいからと、畑が驚くほど点々と色んな場所にあることでした。
山梨県甲州市産業振興課 石原久誠さん
本当に一生懸命な方で、いつもすごいなと思ってしまいます。原産地呼称制度確立、今後必要になると考えられる品種、補酸の規定など、考えている事があるけど、一番は就農者を受け入れる体制作り、山梨のブドウの生産量をどうするかも、課題だということでした。
長野県高山村村長 久保田勝士さん
景観条例を制定した高山村。ブドウ栽培面積が増加していることもすごいですが、環境保全型農業、村をあげての資源循環農業、ブドウ産地としてだけでなくワイナリー設立をめざす動き、その1歩1歩着実な姿勢に感じられるところに感動の気持ちがあります。
扇状地の砂利はお金になる。ということですが、特有の地質は後世に引き継ぐべき財産として、採取規制の制度作りもされたそうです。
やはり、村をあげて。合意をはかりながらの活動に尊敬します。
そして、農政局の新田直人さん
お話から、日本ワインへ期待する理由、それは日本ワインを盛り上げる事が農業を盛り上げることに繋がるという意識があると伝わりました。
でも、少し気になったことは、
″10年間で1.8倍の消費を考える″
″日本ワインを飲むほど放棄地が減る″
というニュアンスに聞こえてしまったこと。今までの流れから、ワイン造り、ブド栽培、放棄地の問題の難しさ……
現実的な数字からも、普段農家さんにお話聞いてることからも、そんな簡単な話では……と、少し疑問が生じてしまいました。
1人15分ではあまりに短く、理解できることより、感じたことの方が多い、そして行政が大きく日本ワインに注目しているということにすごく大きな意味を感じたシンポジウムでした。
今後の消費、マーケットを考えるべき世代の私。
本当に、深く受け止めています。
″ブーム″、″愛好家″、″イベント″
それだけで終わってはいけないと思っています。
私も、『ワインは農業、農産物』
と思っていますから。そして、日本の農業を考えなければと思っていますから。
この会の開催に関わった方、講演してくださった方に感謝の気持ちです。