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カメラの話を徒然に(22)
マミヤのカメラ(1) Mamiya 645Pro
マミヤの中判カメラ
私の場合、中判カメラの世界へはフォクトレンダーの蛇腹折り畳み式のものから入っている。ライカなどのレンジファインダー機になじみ、ある程度古いカメラの作法に慣れたところで、大面積のフィルムに興味が向いたわけだ。そのうち、国産の蛇腹式に、と思っていたところ、ふと中判でも自動露出カメラがあると便利かなあ、ということでマミヤのカメラに手を出したのだ。
今回のシリーズ記事では、このマミヤの中判カメラについて書こうと思う。持っている(持っていた)機種は、フォーマットの小さい順に並べると以下の通りである。フォーマットの違いに加えて、カメラの形式もバリエーションがある。
Mamiya 645Pro (6x4.5判・一眼レフ)
Mamiya 6MF (6x6判・レンジファインダー)
Mamiya C220f (6x6判・二眼レフ)
Mamiya7 II (6x7判・レンジファインダー)
このうち、C220fを除いて、既に手元にはない。また、レンズは各機種それぞれ全てを所有していたわけではないので、記事内容としては完全なものではないのでその点はご了承いただけると幸いである。
Mamiya 645Pro
第1回はこのカメラの話だ。
元々、中判のSLRには興味がなかった。大きく、ゴロッとしていて持ちにくそうだし、大きなミラーが動くから作動音がうるさく、作動ショックも大きいからだ。しかし、距離計連動機はどうしても接写には向かないから、一眼レフが有っても良いのではないかと思い始めた。645判で一眼レフと言えばペンタックスとマミヤで(後年コンタックスも出たが、当時は選択肢にない)、しかもオートフォーカス機が世に出ていた頃で、それでもマミヤ645Proというマニュアルフォーカス機を選んだ理由は、パーツ脱着式で、撮るやり方に自由度があり、小さくもなることであった。ペンタックス645は一体型だから常に電動巻き上げで、フィルムは撮り切るまでは替えられない。その点、マミヤは手巻きと電動巻き上げが選べて、フィルム部が分離するから、例えば暗い場面で高感度フィルムに切り替えるということもできる。ファインダーもプリズムとウェストレベルが選べるので、小型軽量なセットもできる(但し、自動露出のためにはプリズムファインダーが必要)。
ボディは645Proで、MF系の最終モデルのProTLの一つ前だ。このモデル間の大きな差はフラッシュのTTL調光の有無だから、基本的に風景用として考えている私にはTLなしモデルで問題ない。
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カメラの使用感だが、6×6判の一眼レフに比べれば多少小さいものの、35mm判に比べれば当然、大きく重い。操作性は分かりやすく、カメラの構成パーツ間には連動によるフールプルーフが効いており、例えばフィルムバックの遮光蓋を抜かないとシャッターは切れないし、蓋を入れないとフィルムバックは外せないようになっている。ファインダーは標準的かと思う。視野率が94%というのは少々小さめ。35mm判に比べると同じ画角でも焦点距離が長いから、フォーカスの山がはっきりしてピントは合わせ易い。シャッター自体はそれほどうるさくはないが、ミラーの作動音はやはり大きくクワッシャン、という感じの音がする。ワインダーを付けると横方向に肥大化し、カメラ全体の作動音がさらに大きくなるが、カメラの保持は安定する。
外観はプラスチックを使った曲面の多いデザインで、クラシックカメラという雰囲気はない。表面の仕上げがつるつるになりやすく、触ると手の脂が目立つのはマイナス点といえよう。ここらへんは実用一辺倒のプロカメラで、実際そういう市場をターゲットにしているだろうし、磨いて飾ったりするカメラではあるまい。
なお、このカメラのシャッターは電子式なので、電池がないと動かないのは注意が必要である。
645シリーズのレンズ
最初にセコールCシリーズで24mm対角魚眼から500mm望遠レンズまで多数のレンズがラインナップされ、その後外観がリニューアルされてセコールC●●mmF■N、のように末尾にNがついた。私が持っていたレンズはこのNつきモデルがほとんどで、以下のレンズのうち*印をつけたものは所有しなかった。
Mamiya-Sekor C35mmF3.5N
Mamiya-Sekor C45mmF2.8N *
Mamiya-Sekor C55mmF2.8N
Mamiya-Sekor C80mmF1.9N
Mamiya-Sekor C80mmF2.8N
Mamiya-Sekor Macro C80mmF4N *
Mamiya-Sekor C110mmF2.8N
Mamiya-Sekor C150mmF3.5N
Mamiya-Sekor C210mmF4N *
Mamiya-Sekor C zoom55-110mmF4.5N *
また、この後にセコール銘が消えたマミヤAシリーズがラインナップされ、そのうちA200mmF2.8アポも所有していた。これらのレンズはどれもシャープでよく写ったし、カメラとのバランスも良く、使いやすいシステムであった。
以下に、各レンズの撮影例を上げておこう。
●Mamiya-Sekor C35mmF3.5N (35mm判で22mm相当)
魚眼レンズを除き、シリーズでは最も広い画角のレンズである。最短撮影距離は45cm。ボケがなだらかな感じで、フォーカシングスクリーン上でピントの山が見えにくいが、撮影結果としては問題なく、きれいに撮れている。
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![](https://assets.st-note.com/img/1666187568150-hhMvJT4r3a.jpg?width=1200)
●Mamiya-Sekor C55mmF2.8N (35mm判で34mm相当)
コンパクトな広角レンズで、80mmF2.8とこれはシリーズ中で最も使いやすく、持ち出す機会が多かったレンズである。最短撮影距離は45cm。
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●Mamiya-Sekor C80mmF1.9N (35mm判で50mm相当)
ペンタックスのシステムに比べて大きな違いとなるレンズだ。後年、コンタックス645シリーズにプラナー80mmF2が出ているが、中判カメラのこのクラスの明るいレンズは少なく、これだけでマミヤを選ぶ理由になるのではなかろうか。もっとも、大口径レンズが中判カメラに着くのはこれが初めてではなく、エルネマン社が1924年に発売したエルマノックスがエルノスター100mmF2(のちにF1.8)を搭載している。
描写は、開放付近では少し軟調であるが十分なシャープさはある。この口径のわりにはコンパクトに出来ていて持ち歩きにもさほど苦労しないのは良い。最短撮影距離は70cmだ。
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![](https://assets.st-note.com/img/1666187599786-IJxr4rXgRR.jpg?width=1200)
●Mamiya-Sekor C80mmF2.8N (35mm判で50mm相当)
コンパクトでシャープな写りの標準レンズ。F1.9と同様、このレンズの最短撮影距離は70cmで、少し遠い。
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●Mamiya-Sekor C110mmF2.8N (35mm判で68mm相当)
カタログでは標準レンズに分類されている。中望遠なのか長めの標準なのか、なかなか難しいところで悪く言えば中途半端、ということで中古市場ではあまり数は見なかった。新橋にあった大庭商会で、飲み会に行く前にちょっと寄ったらこれがあった、という感じで買ったのを覚えている。最短撮影距離は1.2mで、標準レンズとしては遠すぎだと思う。
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●Mamiya-Sekor C150mmF3.5N (35mm判で93mm相当)
この後出るAシリーズでF2.8レンズが出て、世の中の評価はそちらの方が高いが、このレンズのコンパクトさも捨てがたい。写りは十分にシャープである。最短撮影距離は1.5mだ。
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●Mamiya A200mmF2.8APO (35mm判で125mm相当)
セコール銘がなくなったAシリーズの中の1本。白い鏡胴が特別感を醸し出していて、実際に写りも素晴らしい。大柄だけど中判だしこれくらいは何とか使いこなせないと、と当時思っていたが、やはり持ち出す頻度はあまり多くなかった。最短撮影距離は2.5mである。
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おわりに
マミヤのカメラはどれもよく写るし、操作性も良いと思う。業務用途を主眼としているから、小型化や趣味性の面は優先度が低いが、この頃の競合する他の会社も同様だし、そこは割り切りかと思う。645Proは電子シャッターカメラなので、年々使える個体は減る一方とは思うが、興味がある方は手に取ってみて欲しい。