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カメラの話を徒然に(3)

アグファのカメラ(3)

前回はレンズ交換式で長くなってしまった。残るはアグファフレックス(レンズシャッター式一眼レフ)という超大物(?)と、蛇腹式のレンズ固定式が2種。となると今日は軽めに後者2機種をまとめて、にしよう。

その前に・・・

レンズシャッターは静かだ、と前回書いた。
しかし物事には例外もある。そう、ことこれに関しては、この「コダックシャッター」が一番の物件だと思う。写真のカメラは、ドイツコダックの有名なレチナシリーズの廉価版、レチネッテだ。これについているシャッターがものすごいのである。遮光するリーフはレンズの中をそれぞれ対称に動くからブレにくいわけだが、問題はその動力源である。つまり、シャッター機構を動かすために最初にバネに力を蓄える作業があり、カメラの世界では「シャッターをチャージする」などと言う。古いカメラではこれを撮影者が、レンズシャッターの外側に出っ張った小さなレバーを動かして行う。シャッターをリリースすると、そのバネの力をシャッターメカに伝えるとともに、先ほど「チャージ」したレバーが元の位置に戻るのだが、この戻り方が非常に盛大というか暴力的で、これがブレの元になるくらいに激しく、作動音も大きい。写真撮影という精密な作業に対して、がさつとも言えそうな作動なのである。
レチナの古い系統やレチネッテも全て触っているわけではないので、「単に、自分の機体が例外だった」と言うオチもあり得るのが古いカメラ趣味での恐ろしいところで、コダックシャッターが全部こうだとは思わないし、カメラ好きとしては機械が悪いと勝手にきめつけたくはない。が、これを求めた専門店の説明では「残念ながらこの機種はそういうものである」とされていた。
真実はどうなのだろうか?そのためには他の機種をもっと手にいr(文章はここで終わっている

スーパーゾリネッテ(Super Solinete)

Agfa Super Solinette/ Solinar 50mmF3.5付き

お題の一つ目はこのカメラ、スーパーゾリネッテだ。レンズがあって、それが蛇腹でボディに接続されその中が撮影像が通る場所になっている。使わない時はレンズごとボディー内に格納して蓋ができ、「持ち出す時は小さく、使う時は大きくなる」という特徴を持つ。この「 」内はそんなの見りゃわかる、当たり前じゃないかと自分でも思うのであるが実は重要で、カメラをカバンの中に入れるときはスリムで出っ張り引っかかりがない方が良く、かといって、仮に超小型のカメラが出来てそのまま使うとしても、全く出っ張りがないと絞り、シャッター速度、ピント、シャッターチャージができないわけで、使用時にレンズがぬっと出てくることでその操作部も露わになり、使うことができるのだ。メカニカルな設定や連動が必要だった時代の工夫とも言えるだろう。
しかし、そういう一連の「作業」も、今やスリムどころか板状の物体で全部自動でできるようになってしまい、出っ張ってないと操作性が、どころかその平面の一部を触れば設定も撮影もできるのだ。まして、撮影結果はその場で見えて他人にも即時に共有できる。こう書いていると何やら別世界を見ているようですな。

蛇腹カメラ

蛇腹カメラは、格納して小さくなって運びやすいというのはもちろん目的の一つだが、元はと言うと大判のカメラで、フレキシブルにレンズを使いたい(いろんな仕様のレンズが使える、レンズボードを傾けたりシフトさせて写り方を変える)というところも大きな目的だった。しかし、35mmフィルムでそのようなあおりやシフト機構を入れたりするのは現実的ではなく、小型カメラでは蛇腹はもっぱら収納時の小ささを実現することに使われていると思う。そして蛇腹はその形から、カメラ(暗箱)内の乱反射を抑制する効果があり、画角外の強い光などの悪影響を低減でき、写真のコントラスト向上に役立つ。
しかしその一方、蛇腹はその材料(経年劣化が不可避)と、その形(強く曲げられて畳まれる)が、撮影のために頻繁に動くことから、カメラの中で最も弱い箇所になっている。ここを酷使するとその結果は漏光につながる。明らかに破れているようなものはフィルム装填前に気付くだろうが、コーナー部のピンホールは非常にやっかいで、外見上は穴などないのに、帰宅してフィルムを現像に出したら画面が白っぽくなっていた、ということになる。
そして、アグファのカメラの蛇腹は弱い、という評価があるようだ。私の持っているカメラは今のところその兆候はないが、あるクラシックカメラ店で私のカメラを見た店の人に「アグファは蛇腹が弱いのが多いので、気を付けて下さい」と言われたし、eBayなどでは「蛇腹の状態説明はあくまでもこちらが出荷する時点の確認結果であり、輸送後の状態変化に対して我々は保証することはできない」などと免責を宣言している人も居た。まあこれはアグファや蛇腹に限ったことではないか。

ではどうやって蛇腹と付き合うか。正解はないと思うが、どうしても大事な撮影であれば、前日の夜に真っ暗にした部屋の中で、強いLED懐中電灯を使って蛇腹の外から蛇腹の角に向かって斜めに照らし、自分は蛇腹の中をじっと覗き込むしかない。当然、視野は真っ暗なのであるが、もしピンホールがあると、空の星のごとく、小さな輝点が見えてくる。不安がある方はお試しを。ただ、真っ暗な中での作業だから、LED電灯を蛇腹にぶち当ててしまったり、自分が躓いて転んだりしないよう、十分ご注意下さいませ。

カメラの操作とレンズの写り

シンプルである。まず、カメラを構えて左肩にあたるところに、蓋の開放ボタンがある。蓋に手を添え、これを押す。蛇腹の先についたレンズ部分がカメラの中から出てきて、パチッと固定される。二重露光防止機構があり、それはフィルムの巻き上げをスプロケット軸の回転数で検知するやり方なので、フィルムを入れていないと、巻き上げノブをいくら回してもシャッターは切れない。シャッターチャージだけは他の動作と連動していないので、巻き上げるたびに自分で行う必要がある。シャッターチャージのレバーは軽く押し込む程度(後期のコンパーのモデルの場合)で、コダックシャッターのようにこれが盛大な動きで戻ったりはしないので安心である。
絞りとシャッター速度の設定は通常のレンズシャッター機通りだ。ピントはレンズシャッターのすぐ手前にあるヘリコイドリングを回すと、シャッター機構ごと前後するようになっている。これは他の機種と違う点で、こうした蛇腹カメラのピント合わせは前玉回転式が多い。レンズエレメントの一番被写体側の1枚がわずかに動いてピントを調節するが、レンズ全体を動かす方が画質は良いとされる。しかしレンズユニットを全部動かすので機構が大がかりになるし、レンズを前に繰り出したら蛇腹の蓋と干渉して閉まらないということになる。このようなことに対して、バルダのスーパーバルダックスではレンズ部分が∞位置でないとロックがかかって畳めないような連動機構を入れたり、コニカ パール4ではヘリコイドを繰り出したところに赤い帯があって「この位置では蓋は畳めませんよ~」と警告の意味を表示したりしている。各社のこういう工夫を見るのもクラシックカメラ趣味の楽しいところである。
ファインダーはアグファ特有の、倍率は高くないもののアンバー視野にグリーン距離計という見やすいもので、ヘリコイドの動きに連動する。ヘリコイドが手前にあってファインダーを見ながら操作しづらいのは難点である。上から触るとファインダー視野を遮るから、私は左右から人差し指を出してピント調整をしている。

レンズは50mmF3.5で、3群4枚構成のゾリナー。3枚構成のアポターつきもあるそうだが、自分は実物を目にしたことがない。また、前にも書いた通り、「スーパー」がついていないゾリネッテは連動距離計がない素通しファインダーの目測モデルであり、これも装着されたレンズは同じなので、距離が自分でわかる方や、遠景を絞って撮る方はこちらのモデルでも同じ結果が得られるだろう。

Solinar 50mmF3.5/ F8 1/2, 1/250, Acros II
Solinar 50mmF3.5/ F8, 1/250, CN

カラート IV(Karat IV)

お題の二つ目はカラート4型であるが、このカメラは入手してほとんどすぐ故障してしまい、直すかレンズを取り出して他で使うかと考えた末、ライカMマウントへの換装をしてくれるところに依頼してライカで使うことにしたため、手元のボディにはレンズがない状態だ。なお、換装に当たって、元のカメラも取り出したレンズも、元に戻らないような改造を施さないという原則を守って作業されているとのことで、オリジナル状態にいつでも戻すことが可能だという。
ということで、カメラ外観などはこちらを引用させていただこう。

このカラートというシリーズは戦前からあるもので、Karat6.3、Karat4.5、Karat3.5、Karat2.8(またはKarat12)とレンズのF値をつけたいくつかのモデルを経て、1948年のKarat36でコダックのパトローネ方式のフィルムを使うようになった。それ以前は12枚撮りの専用ラピッドカセット方式で、つまりフィルムは空のカセット内に送り込まれて行くから「巻き戻し」動作がない。当然、カメラにも巻き戻しのノブがないものになっている。Karat36から、現在の形式の35mmフィルムが使える。モデル名の36はそれを表しているのだ。
今回のモデルは「36」から「IV」になっていてどういう意味なのかがよくわからないが、上記のモデルを見渡した感じでは、6.3~4.5→3.5→2.8と36→IV型の区切りでボディ形状が大きく変わっているので、第4世代という意味合いなのかも知れない。

レンズボード沈胴式?

35mmや中判の蛇腹カメラと言えば、蛇腹機構を使ってレンズをボディ内に格納し、蓋をする、というカメラがほとんどだ。それに対して、このカラートシリーズは違っている。レンズとレンズシャッター機構を載せたボード部分が、カメラの表面と同一になるまで格納されるというものなのだ。従って、この格納される部分を上から蓋をする機能がなく、レンズ保護のためにはキャップをしなければならない。中途半端な格納であるように見えるが、レンズシャッターユニットが前後に動くだけなので、カメラ側からの連動に配慮しやすいのだろう、初代のKarat6.3アールデコ(36年発売)の時点でシャッターチャージと巻き上げが連動するセルフコッキングを実現している。

カラートIV型

IV型は、従来の格納方式を踏襲しつつ、ファインダーを他カメラと共通化したレンジファインダー(ここでも度々言及しているアンバー視野にグリーン二重像)にして近代化を図ったものである。これの前、2.8と36は上下合致式という、全視野が上下に分割されたファインダー像だったのだ。距離∞の遠景ではピッタリと全画面が一致するだろうが、近距離で人を撮ったら人だけ上下が合って他はズレた像になるわけで、フレーミングがやりにくいのではなかろうか。
フィルムの巻き上げが独特で、構えて右肩に突き出たノブを手前に引くやり方だ。ノブがカメラボディから外側に出ている時点で、衝撃を受けてダメージが入りそうなちょっと危ない感じがするのであるが、自分が持っているカメラもこの機構が故障してしまった。内部の部品連携が外れたらしく、巻き上げが不可能になったのだ。

ゾラゴン Solagon 50mmF2

搭載されるレンズはアグファ自社製のゾラゴン50mmF2と、他社からの供給のシュナイダー クセノン、ローデンシュトック ヘリゴンのレンズ搭載モデルもあった(いずれも50mmF2)。また、ゾリナー 50mmF2.8搭載の廉価版も設定されていた。
私が持っているものはゾラゴンのモデルである。人によっては「ライツのズミクロン50mmに勝るとも劣らない」ほどの描写と評価されており、実際にきれいな色のシャープな像が得られていたので巻き上げ故障でそのままにするのが惜しく、レンズを換装することになったわけである。

Solagon 50mmF2/ F2.8, -0.3, RDP3
Solagon 50mmF2/ F4, 1/250, RDP3

自webでの写真は以下に上げている。

おわりに

蛇腹カメラは各社多数出しているので、アグファを代表に語っても不足するところが多いとは思う。まあ、カメラ界全体を語れるほど知識も経験もないので、興味を持ったカメラを起点に、この頃はどうだったのかと思いを馳せた、くらいのものである。

次回で私の持っているアグファ関係の話は終わりなのだが、いよいよアグファフレックスである。これは難しい。でも何とかまとめたいと思う。

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