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カメラの話を徒然に

はじめに

私は、横浜市の端っこに住んでいる会社員である。父から譲ってもらったオリンパスOM-1を使ってたまに写真を撮るくらいで写真は趣味でもなかったのだが、ある日、友人と飲んだ時にライカM3を見せてもらい、何かのスイッチが入ってしまったようで、その後の長い独身時代に暇を見つけてはカメラ店を回るようになってしまったのだった。そして、カメラのメーカー、種類、数が増えてきたのに合わせ、自分のwebを作って日々の写真や旅行の記録などをアップするようになった。

文章を書くのは好きなので、自webにコラム的な独り言も書いていたが、ページが長くなるばかりで読みにくく、1回ごとに完結させてアップできるようにしたいと今更ながらこのnoteに書くことにした次第だ。
カメラや写真について、勉強したわけでも修行して技術を磨いたわけでもないただのアマチュアの戯言であり、資料的な意味も価値もないのは自覚している。気になった方がいらっしゃいましたら、何卒よろしくお付き合い下さい。

アグファ(AGFA)のカメラ

なぜアグファなのか

最初に書いてみようと思ったのがアグファである。ライカだったり、国産の一眼レフなら、書いている人も多くいらっしゃるだろうと思うし、ちょうど最近アグファを使っていたところだったというのが大きいが、自分にとって初めてのカメラがアグファだったのである。
その機種は、アグファマチック2000ポケット。110フィルムを使うもので、カメラを左右に伸縮させてフィルム巻き上げやシャッターチャージをするものだ。カメラの操作部はこの伸縮動作と、露出の「晴れ」「曇り」の選択のみで、つまり固定焦点、シャッター2速という仕様なのである。フラッシュは外付けのフラッシュバルブで、4個の小さなバルブが1個にまとまったものが、カメラの上で90度ずつ回転して発光するというものだった。いま思えばなかなかかわいい姿、動きだった。これは中学~高校の間に使っていた。当時のフィルムが逸失しているのでプリントをスキャンしたものがこれだ。

82年8月、サロマ湖付近/ アグファマチック2000、フィルム不明

当時はこれで満足していたわけである。とにかく、出かけた先の景色が定着されて家で見られることに意義があった。

そんなわけで、中学生の自分はアグファが何のことかは全く知らないがとにかく近所のカメラ店で買ってもらったその銀色の棒状のものを片手に、出かけた先でポチポチ撮っていた。そして3年後にはキヤノンのオートボーイ、大学に進んでからは親のOM-1とカメラは代替わりし、アグファのカメラという存在は徐々に記憶の底に沈んで行くのであった。
社会人になってさらに10年近く経ち、外国のカメラにも興味が出ていろいろ本などを読んでいたところ、アグファの存在が思い出された。件のM3を見せてくれた友人の他にもう一人同じ趣味の人がいて、彼は先にアグファのカメラを手にしてそのプリントを見せてくれたりもした。シャープで、よく写っていた。そして、私もカメラを探し始めた。

さて。
今後、どういうペースで書いていくかは自分でも予測できないが、1機種ごとにするつもりだ。
ということで今日はこれにしようと思う。
(アグファの中判には手を出していないので、これから投稿する一連の記述は35mm判のみのことである)

スーパージレッテ(Super Silette)

Agfa Super Silette/ Solinar 45mmF3.5付き

二重像合致式の連動距離計を内蔵したレンズ固定・レンズ(リーフ)シャッター式のコンパクトカメラ、という分類になろうか。1950年代から80年代くらいまで、オートフォーカスやズームレンズが出現する前には一般的だった形式だろう。
このカメラは1955年発売で、写真のものは後期のモデルでシャッター速度が1/500秒まで拡大されたものである(それまでは1/300秒)。「スーパー」なのは何かというと距離計内蔵ということで、写真に見えているファインダー窓が1個だけになった距離計がない機種はスーパーの文字がないジレッテという名称になっている。これは、この前のモデル(蛇腹のレンズ格納式)のゾリネッテでも同様だ。そのファインダーは、倍率が低く覗いた感じは像が小さいけれど、視野全体が薄いアンバー、二重像部分がグリーンに着色されて測距はやりやすい。

レンズは3群4枚のゾリナー Solinar45mmF3.5がついている。カメラのシリーズとしてはこの他に3枚レンズのアポター Apotar45mmF3.5(最後期にはF2.8もあったらしいがこの機種では見たことがない)、そして高級モデル、6枚レンズのゾラゴン Solagon50mmF2搭載モデルもあった。ゾラゴンといえば、別の機種であるがカラートという蛇腹沈胴型のカメラに搭載されているものの方が市場ではよく見かけるように思う。
ゾリナーというレンズは、50mmF3.5(スーパーゾリネッテ搭載)、50mmF2.8(アンビジレッテ用、アグファフレックス用の各交換レンズ)でも体験しているが、いずれもピントがシャープで色もきれいなレンズであり、この45mmも同様の優秀なレンズである。自分の持っているスーパージレッテのレンズは前玉に拭き傷があって白っぽくなるのが残念だ。もう少し状態の良いものがあれば交替させたいものだが。

絞り開放、フィルムはフジのISO100ネガ。レンズ前玉に拭き傷があって少し白っぽくなっている。
これも絞り開放。ピント面はたいへんシャープである。

カメラの操作としては、蛇腹のモデルのゾリネッテ系がシャッターのチャージが巻き上げに連動できなかったことに対して、このモデルでは連動して完了できるようになった。レバー巻き上げであるが、巻き上げはかなり重い。アグファのカメラはどれも重めで少しごりごりした感じがあるが、巻き戻しも大変重く、無理をして操作するとフィルムを切ってしまうのではないかと不安になる。いや実際、過去にアンビジレッテでパーフォレーション(フィルム給送用の穴)を切ってしまったこともあるのだ。巻き上げ機構をフリーにした状態で行う巻き戻しも重いとなると、メカの問題ではなくフィルムゲートへのフィルム圧板の圧が強いとしか思えないが、アンビジレッテで調整に出したクラシックカメラ専門店でも結局原因がわからなかった。以来20年以上、いろんな機種を使って「重いが仕方ない、慎重に巻くしかない」と念じながら撮っている。
自webでのこのカメラの撮影例は以下に載せている。

レンズ固定式カメラについて

ここからはスーパージレッテだけではなく一般的な話だが、このようなカメラは、レンズ交換式カメラに対して安価ながらレンズは手抜きがなく写りの良いカメラとして一定の地位を保っていたかと思う。比較的安価と言っても50~60年代だと会社員の月給より高かったはずだ。しかしカメラが大衆化し供給側も大量生産してレンズ交換式カメラのシリーズの値段も下がると、レンズ固定式のカメラの地位は危うくなってくる。すると当然コストダウンが必要になり、レンズは3枚玉が主流に、ボディは見た目が派手なぴかぴかの枠をつけたファインダーなど、機能の進化より目立つことが目的のようなモデルが目立つようになる。アグファもジレッテのシリーズではSilette LKのような大きなファインダーにぴかぴかパーツをまとい、距離を合わせるためのシンボルマークを大きく書いてレンズ周りが太くなり、と変な方向に行っているように(今の視点では)思う。この後80年代にAFが実用化され、巻き上げも自動、小型のズームレンズが搭載されフラッシュも自動で、となるともはや機械連動だけでのカメラではなくなり、旧世代の作り方のカメラは終焉を迎えることになる。
しかしその旧世代を駆逐した全自動のカメラたちも今やデジカメ、いや携帯端末にすっかり置き換わってしまった。ここ10年の移り変わりは本当に急激だと思う。

それでもこの種のカメラを使う人はそれなりに居るのかとは思うのだが、現実の世界では評価が厳しいというか、市場そのものが小さいのだろう、クラシックカメラの世界は高級機、レアもの、美品が高騰する一方で、機械式のコンパクトカメラは以前に比べてものすごく安くなっている。ヨーロッパのeBayなどを見ると、10~50ユーロくらいのものもあり、日本人が買うと送料の方が高いことになってしまうものもある。
とはいえ、市場の価格が下がっても、いま手元にあるカメラの写りが悪くなるわけではないので、そんなことは気にせず積極的に使って楽しみたいと思っている。

おわりに

というようなことを、次からは1機種ごとに書いて行こうと思う。

ご高覧いただきありがとうございました。

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