カメラの話を徒然に(23)
マミヤのカメラ(2) Mamiya 6MF
マミヤシックス
マミヤに限らず、カメラメーカーの多くは6x6判のカメラとして二眼レフや蛇腹折り畳み式のカメラをラインナップしてきた。マミヤでは二眼レフのCシリーズ、蛇腹のシックスシリーズの系統があった。マミヤシックスは戦前から59年まで長く作られたもので、多くのモデルが発売されたが、いずれもレンズは固定式のカメラである。それが、30年ほどの中断を経て89年にニューマミヤ6として新たにレンズ交換式カメラとして発売されたのだった。レンズ交換を実現するために、機構は全く新しいものになっていて、蛇腹折り畳みの従来モデルの面影は全くないが、レンズマウント部分がボディに収納できる沈胴機構を備え、持ち運び時に小型化するのは、従来の蛇腹モデルの延長線上と言えなくもない。
Mamiya 6MF
このモデルは、ニューマミヤ6と銘打ってレンズ交換式6x6カメラを出した4年後に出たもので、ニューが消えてMFの文字がついた。このMFとはマルチフォーマットのことで、35mmフィルムを装填して24x56mmのパノラマ写真を撮ったり、645マスクを使って645判のアスペクト比の写真を得ることができた。私はそのようなマスクセットは持っていなかったので、6x6判の写真しか撮っていない。
マウント部が沈胴し、レンズ交換ができてファインダーのブライトフレームはレンズ毎に自動で切り替わるようになっている。ブライトフレームには645や35mmフィルムのパノラマ相当の位置も表示されるので、少しごちゃっとした感じの表示になっている。
レンズのシャッターは電子式で、非常に静かである。カメラの重量がそこそこあることとこの静かなレンズシャッターにより、ブレの少ない写真を得ることが出来る。
カメラ全体はこの頃のマミヤのカメラに共通しているが、プラスチック製で使い込むとテカテカになる。自動露出ができるが、露出計が空の明るさの影響を受けやすいので、露出時はカメラを少し下に向けてAEロックすると良い(この露出計の特性はのちのマミヤ7では改善している)。レンズ交換時は、ボディ底部にあるノブを回しフィルム直前にある遮光幕を引き出してレンズを外す。遮光幕が出ていないとレンズを外すボタンがロックされて押せないし、遮光幕が出たままだとシャッターが切れないというフールプルーフ機構が備わっている。
交換レンズ
専用の交換レンズは3本がラインナップされた。
Mamiya G50mmF4L
Mamiya G75mmF3.5L
Mamiya G150mmF4.5L
どのレンズも小柄で取り回しはしやすい。広角レンズの50mmは、マウント機構内に後玉を収めるため、ビオゴン型とされる構成だが少しレトロフォーカスっぽくなっていて前玉が大きく後玉が小さい設計になっている。これにより、この50mmレンズを付けていても沈胴できるようになっている。
レンズが3本であり、独自マウントゆえ社外品も存在しないためコレクションは比較的容易であるが、電子シャッターを備えたレンズであり、壊れると修理や他のマウントへの換装が困難なので、その点は覚悟が要ると思う。
以下に各レンズの撮影例を挙げるが、カメラを手放して久しいので、古い写真かつスキャン後のリサイズも小さいものが多い。スキャンし直すのも手間なので小さいままで掲載する。
●Mamiya G50mmF4L
対角画角76度の広角レンズで、35mm判では28mm相当である。二眼レフのCシリーズの最広角が55mmであり、それより広角になったので両方を持っているとこの5mmの差は大きいと感じる。精細な描写で良いレンズである。
●Mamiya G75mmF3.5L
対角画角56度の標準レンズで、35mm判では40mm相当である。35mm判の標準レンズより少し広い画角は使いやすい。
●Mamiya G150mmF4.5L
対角画角30度の中望遠レンズで35mm判では80mm相当である。レンジファインダー機で中望遠レンズを使う時、ほとんどのカメラでは視野枠が小さくなるだけで、画面全体から小さな被写体を切り取る作業になるし、被写界深度も浅くピント合わせが難しくなるから、このくらいのレンズが限界なのだろう。描写はシャープで良いが、あまり使わなかった。
おわりに
Mamiya 6MFは従来の蛇腹折り畳み式のカメラよりは大柄だし、外観も実用一辺倒でいかにも仕事カメラという感じがあり、クラシックカメラ趣味の延長としては少し方向性が違うのかも知れないが、よく写る3本のレンズと共に、使い勝手がよいカメラだ。近年、このような中判カメラはすごく高騰していて、電子式のカメラゆえに壊れたら修理が困難で、なかなか手が出にくいと思うが、良い出会いがあって価格に納得できるなら使ってみて損はないと思う。