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カメラの話を徒然に(25)

マミヤのカメラ(4・終) Mamiya 7 II

6x7判というフォーマット

6x7判や6x8判はクラシックカメラにはないフォーマットだ。60mm幅の120フィルムを使い、カメラの裏蓋に開いている赤窓からフィルムの裏紙に印字されているコマ数をたよりに巻いて行く、というのが当初のやり方で、これはフィルムが赤い光の波長に感度がなかった時代に考案されたものである。もちろん、現代のフィルムでもこのやり方で写真は撮れるが、直射日光下で赤窓の遮光板を開けると感光して赤い丸がうっすら写ったり、フィルム圧板の裏から周囲に光が回ってうっすらと赤いゴーストになってしまうことがある。だからカメラが現役だった頃に比べたらかなり高感度である今のフィルムを使う時は注意が必要だ。裏紙に印字されている数字の列は6x45判、6x6判、6x9判の3種類で、この印字された文字の位置に、そのカメラのフォーマットに沿った赤窓が開いている、という仕組みである。つまり、6x7、6x8判(加えて、6x12や6x17などのパノラマカメラも)は赤窓の数字を頼りにするのではなく、カメラの巻き止め機構によってフィルムの送り量を決める、比較的最近のカメラのための規格なのである。

そして、6x7判はその6と7という数字ゆえに、なんとなく半端なアスペクト比だと認識されがちである。実際私もそうで、真四角でもなければ縦位置が横に広い感じで使いにくいのでは、という感覚だった。しかし実のところ、この6x7判の実画面は56x69mmでほとんど4:5に近い比率であり、つまり印画紙のサイズにトリミング無しで焼き付けるのにちょうど良いフォーマットなのだ。私は中判は6x9判から入っているが、昔のダイレクトプリントではこのフォーマットから焼くと4:5の印画紙に余白(ポジの場合は余黒)を大きく取った形でプリントされてきた。2:3に合わせたワイド4ツ切りなどは35mm判のためのものだったのだ(ラボによっては中判からワイド印画紙にプリントしてくれたかも知れないが)。

6x9判を印画紙にプリントしてもらった例。余黒がもったいないならトリミングして左右をカットするしかなかった。そういう前提の写真も撮ったことはあるが、やっぱりもったいないと思う。

そんなわけで、6x7判が印画紙サイズに丁度よい、ということを知ったら急にそれを使いたくなってしまったのだった。

Mamiya 7 II

645や6MFでマミヤの自動露出カメラになじんでいた私は、より鮮鋭だと評判の良い「7」のシリーズに手を出そうと考えた。RB67やRZ67という一眼レフもあるが、相当嵩張るしレンズも大きいから自分には無理と思っていた。7シリーズで当時出ていたモデルはマイナーチェンジ後の7 II型で、露出補正ダイアルの操作性向上、ブライトフレームと距離計二重像が見やすくなった、等の改良がなされていて、このような種類のカメラとして完成度が高かった。一方で、6シリーズでは沈胴できたマウント部は盛り上がった固定式になり大柄な感じはある一方で、その盛り上がったマウント内部の空間を埋めるような対称型構成の超広角レンズが用意され、それが大きな特徴になっていた。レンズラインナップは以下の6本で、カメラのファインダー内でフレーミングできるのは65~150mmで、他は外付けファインダーを使用する。今はシステム一式を手放しているが、最終的に50mmと210mm以外を揃えていた。
 N43mmF4.5L
 N50mmF4.5L
 N65mmF4L
 N80mmF4L
 N150mmF4.5L
 N210mmF8L
各レンズの35mm判への換算焦点距離は概ね半分にすればよく、縦横比が異なるものの、感覚的には理解しやすい。カメラとレンズを合わせると、6x7判としては軽量で、というのも比較対象がRB/RZであったりペンタックス67という大きな一眼レフシステムだからまあ、そうだねという感じはあったけど、その軽量さとレンズのコンパクトさに助けられて長い旅行にも持って行っていて、一番遠くではインドネシア旅行に持参している。
カメラの操作方法は、6シリーズを使っていたからすんなり使えた。露出計は空の影響を受けにくくなってより正確な露光が得られた。レンズ交換は遮光幕を出してからマウントの解除ボタンが押せるといったフールプルーフもあり、間違いが起きにくいカメラであった。外装はマミヤらしく、使っているとテカテカになってしまうのと、カメラマウント基部が6x7判に合わせて横方向に広がったため、右手のグリップが若干窮屈になった、くらいのデメリットがあったが、全体にまとまりの良いカメラで、重たいボディに軽いリーフシャッターにより、ブレが少なくシャープな像を得ることができた。

中途半端な外観写真しか手元になかった。43mmを装着して、ファインダーはソ連製のルサール20mm用をつけている。このファインダーは35mm判用なのに、2:3には見えない視野なのだ。

撮影例

●N43mmF4.5L
対角92度、35mm判では21mm相当の超広角レンズである。このレンズを使うためにカメラを買ったようなものだ。それだけ、写りが良いのである。周辺光量は落ちるが、解像は隅々まですばらしく、濃厚な色が出る。また、このレンズは歪曲収差が極めて小さいことでも有名である。
付属のファインダーは逆光ではゴーストが出てコントラストが低い。こういうところは少し古さを感じる。
対称型広角レンズであり、レンズマウントから後部が大きく突き出た形になっている。カメラに装着するとマウント面からの長さは短く、カメラバッグへの収まりが良いが、マウントから外すと途端に巨大化する。深いレンズキャップが付属していて、これを持って行かないと、カメラから外したときにしまうところがなくなるので要注意だ。

高千穂にて/ 7 II ,N43mmF4.5L/ F11,±0 ,Kodak E100VS,三脚
佐久バルーンフェスティバル/ 7 II ,N43mmF4.5L/ F11,±0 ,Fuji RVP,三脚
横浜開港キャンドルカフェ/ 7 II ,N43mmF4.5L/ F11,8s ,Kodak EPR,三脚

●N65mmF4L
対角69度、35mm判では32mmに相当する広角レンズだ。最初は43mmと80mmで撮っていたが、やはり中間が欲しいのと、外付けファインダーなしで撮れる広角があると便利かと思い追加購入したものだ。何かウェットな感じの描写で、精細ながらカリカリなシャープさではない良さがある。

総持寺にて/ 7 II ,N65mmF4L/ F8,±0 ,Kodak 400UC
謎の店/ 7 II ,N65mmF4L/ F8,±0 ,Kodak 400UC
万座毛にて/ 7 II ,N65mmF4L/ F8,±0 ,Kodak EPR

●N80mmF4L
対角58度、標準レンズとしては少し広角な、35mm判では39mm相当のレンズである。私はこの画角が好きで、40mmレンズをたくさん持っているくらいなので、このカメラの標準レンズがこの画角なのは嬉しかった。シリーズ中で最も小型・軽量なレンズで、描写も優れている。

八重洲の地下にて/ 7 II ,N80mmF4L/ F5.6,±0 ,Fuji RXP (ISO320設定)
自宅にて/ 7 II ,N80mmF4L/ F8,±0 ,Fuji RXP (ISO320設定),三脚
祖谷のかずら橋/ 7 II ,N80mmF4L/ F11,1/125 ,Kodak E100VS

●N150mmF4.5L
対角34度、35mm判では73mmに相当するレンズである。この画角では当然ながら広角なビューファインダー内では小さな範囲でフレーミングしなければならず、カメラ内よりは倍率が高い外付けファインダーもオプションとして存在した。私はそれを買ってまでこのレンズを持ち出す頻度は多くないと思って導入はしていない。
描写は良いが、やはり構図が難しい。最短撮影距離は1.8mで、この画角としては遠いが、焦点距離が長く被写界深度は浅いから、精度的にはこれが限界かとは思う。

疾走/ 7 II ,N150mmF4.5L/ F8,±0 ,Kodak EPR
造花/ 7 II ,N150mmF4.5L/ F8,±0 ,Kodak EPR 最短撮影距離にて
桜/ 7 II ,N150mmF4.5L/ F11,±0 ,Kodak E100VS

おわりに

このカメラ一式は既に手元を離れている。デジタルのミラーレス一式の導入資金になってしまったのだ。いま、マミヤ7シリーズの中古市場価格はものすごいことになっていて、気軽に勧められるカメラシステムではなくなってしまった。電子制御のカメラであり壊れたら部品交換を伴う修理は難しいし、レンズ内に電気駆動のシャッターがある構造だから他への転用もほとんどできないだろう。なので、積極的にこのカメラを使って見ては、とは書きにくい。自分自身、まず金額的にシステム一式を再度そろえるのは到底無理だと諦めている。
しかし、このカメラは本当によく写る。手放したことを後悔していないとはとても言えないほどだ。なので、いま持っている方はぜひ今後も活用してほしいと思う。マミヤのカメラは実用向きで、磨いて眺めるには向かない。なにより、磨いたらつや消しの仕上げがなくなってテカテカになるから..

これにてマミヤの中判カメラについての一連の投稿を終わる。

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