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マイ・リトル・ブラザー~南エチオピアのヤギ飼いの少年~

美しく晴れ渡った日曜の朝。
透明でやさしい静かな風がもやのかかった谷を流れています。南エチオピアのアルバ・ググ山のソドール温泉近くのアウォッシュ川からたちのぼるもやです。

数人のグループがやってきます。
ぼろをまとい、草の上をはだしで歩き、子供らしく笑ったり取っ組み合ったりしながら、ヤギを水浴びさせに来ました。彼らは村の小さな「男衆」なので、家畜の中でも小さなヤギの世話をしてるのです。

子供たちが成長するにつれて、世話をするヤギの大きさと数も増えていきます。小さなヤギ飼いたちは、ヤギが迷わないようにするには、先頭のヤギのか細い前足の片方にロープを結び付け、それを引いてやるのが一番だということを知っています。そうすれば仲間のヤギたちも迷わずについてこれるのです。

ヤギは一頭ずつきらきらと光る冷たい山の水につかり、ごしごしと洗ってもらうたびに(喜びの?)鳴き声をあげています。流れは浅く、少年たちが水あそびをしようと飛び込むと、一頭の太った茶色のぶちのあるヤギが水から岸に這い上がり、青々とした草の「フレッシュサラダ」に鼻をうずめたまま、わたしの足元まで突進してきました。

すると、それに気づいた漆黒の肌をした背の高いやせた少年が私のほうへやってきました。

「アッサラーム・アライクム」

わたしはイスラム教徒の人々をまねて、あいさつをしてみました。
彼の一家がイスラム教を信仰しているなら、このあいさつとわたしのかぶっている帽子でわたしが「ブラザー」であることが通じるでしょう。

「ワレイクムッ・サラーム」

彼はそう答えて、うれしそうな笑顔を見せてくれました。
予想が当たりました。

わたしが数少ないアラビア語のボキャブラリーを駆使しようと必死になっていると、少年は丁寧にわたしを止めて、なんと英語で自己紹介をしてくれたのです!

“My name is Abdullah”

それ以外にも、彼が10歳であること、この近くに住んでいること、3キロほど離れた学校に通っていること、そこで英語を学んでいることなどを話してくれました。わたしはノートを取り出して、アブダラを座らせ、アルファベットから始めて、数の数え方、算数まで「テスト」してみました。彼は英語で読み、書き、話すことができ、テストは110点でした!
アブダラは利口な笑顔の似合う少年で、勉強もよくできそうです。

そうこうするうちに、太陽は森の真上に昇りきってしまい、大きな木陰を濃く落とす時間となりました。茶色のぶちのヤギはまだ空腹が満たされないらしく、さらに草を求めてうろうろしています。わたしの足元の草地はすっかりなくなってしまいました。それだけ時間も過ぎていってしまったようです。

他のヤギと少年たちも濡れた体を身震いさせながら水から上がってきました。アブダラは友達の一人一人がわたしの前を過ぎる度に紹介していきました。それから歩き始めたわたしたちは、ふたつに道が分かれた地点にさしかかりました。

一方は町へ続く道、もう一方は村へ続く道。
アブダラは別れを惜しんでいるようで、さも私と一緒に町へ行きたそうです。ほんの一瞬、わたしの心に村へ続く道に進もうかな、という思いがよぎりましたが、やはりわたしたちは、そこで大人の兄弟のように握手をして別れました。

わたしは今、後ろを振り返ったりせずに町へ続く道を歩いています。わたしには小さな弟ができたのです。彼の名前はアブダラ。10歳の少年でソドール近くに住んでいます。彼の学校は3キロほど離れた場所にあります。彼の両親は息子に礼儀正しくあることを教えました。学校の先生はABCを教えました。どろんこの足をしていますが、彼のヤギたちはとってもとってもキレイです・・・。


南エチオピアのアルバ・ググ山

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