非科学的紅葉解説
紅葉は何故赤くなるのでしょうか。
北西の風が吹く頃には、太陽光が少なくなります。
太陽光が少なくなるから北西の風が吹くのかどうかは知りません。
太陽光が緑の葉を緑たらしめているのです。
葉は夏の想い出を十分に木の幹に帰したのち、自らを地面に落とす準備を始めます。
同時に葉を緑たらしめていた生命力も分散せしめ、葉にとって有害でもある赤を創り出し、自らを美しく死に向かわせます。
こうして、実際は暑かった夏の記憶を、美しく妖しく彩ってみせてはひらりひらりと舞い落ちるのです。
瑞々しい夏の緑の中には、すでにこの仕掛けが隠されており、全ての葉は、例え時間がかかっても一応に美しく落ちるために設計されているのです。
こうして全ての記憶は曖昧に美しくなっていくのです。
落ちた紅葉を手に取って眺めてみるのは良いものです。しかしながらそれすらまた色褪せます。
木の幹に思い出が還るように、紅葉を手にしたものの胸にも何かが還って行きます。
好きなだけ眺めたら、せせらぎに浮かべてご覧なさい。そたくさんの紅葉でせせらぎを埋め尽くしてご覧なさい。
その錦の美しいこと。言葉もありません。目に焼き付けましょう。そのための夏だったのです。
そうして川を彩る紅葉達は
どんどん下ってどこかへ
流れ着きます。
そこはなんでも受け止めてくれる
大きなところ。
それに長大な時間をもった
静かな夜のようなところ。
手に取った紅葉に
ありがとうの言葉を聴かせたり
手に取った紅葉で
そっと涙を拭ってみたり
好きにしてかまいません。
素敵な夏でしたね
紅葉に旅をゆるしてください
紅葉はあなたの手で
流してもらいたくて
美しいのです。
