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内視鏡読影:直腸画像
(Kazuki Okamoto et al;Front Immunol 2018 May 7;9 より引用)
【客観的事実】
①肛門側の粘膜には血管透見像なく、全周性の発赤を伴う隆起あり
②びらんを一部認める
③隆起部位は粘膜発赤が強く、Is型ポリープも認める
④口側の粘膜は血管透見像を認め、正常粘膜である-限局性
【解釈】
腸管に炎症が存在している
炎症の部位は口側の粘膜が正常粘膜であることから、限局性である。
→潰瘍性大腸炎の直腸炎型や直腸に限局性の炎症を来す疾患:クラミジア直腸炎、MPS(直腸粘膜逸脱症候群)、Cap polyposisを考える。
注意深く観察すると、ポリープ・発赤部以外の粘膜は通常の粘膜色調であり、発赤部も領域は明瞭している。
潰瘍性大腸炎は炎症部位全体の粘膜粗ぞう、びらん、血管透見像消失が特徴的であり、この画像所見と矛盾する。
クラミジア直腸炎では、ほぼ均一な半球状小隆起が集簇しているのが特徴的であり、この画像所見とは矛盾する。
上記内容をまとめると、
・直腸に限局している
・粘膜の炎症状態をあらわしているが、その炎症状態は発赤/隆起部に限局して
おり、介在部は正常粘膜である。
上記からはCap polyposisを考える。
【Cap polyposis】
複数の炎症性疾患を特徴とする稀な消化管疾患
原因:ヘリコバクター・ピロリ感染が発症の主要な要因と考えられている
(ヘリコバクター・ピロリは大腸粘膜には生存していないが、ピロリ菌に感染することで起こるサイトカインの変化が影響していると考えられている)
最近の報告で、
・抗生剤投与後に腸内細菌叢の劇的な変化が報告されている
・抗炎症反応は、抗生物質治療によって誘導される可能性がある。
・MPSと共通しているのが、赤みを帯びた上昇した粘液に覆われた病変で、病理組織学的にも炎症性肉芽組織に覆われた表在性びらん、歪んだ細長い腺、およびlamina propriaの線維筋性閉塞が特徴である。
【コメント】
Cap polyposisは稀な疾患であり、ピロリ菌感染に関連していると報告されているが、それはピロリ菌除菌薬(抗生剤)が反応しているだけの可能性もある。