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月の夢(違うパターン)


1. 深夜のカフェ

東京の夜は少し湿っていた。窓ガラスに映るネオンがぼんやりと滲み、佳代はカフェの隅でコーヒーの湯気を眺めていた。

「月、きれいだね。」

突然、隣の席から聞き慣れない声がした。佳代が顔を上げると、そこには同い年くらいの青年が座っていた。黒いパーカーを着て、髪は少し寝癖がついている。表情はどこか明るく、少し面白そうにこちらを見ている。

青年:「すごいんだよ、今日の月。見た?」

佳代:「……見てない。」

青年:「惜しいな。あんなにいい月、そうそう見られないよ。」

彼は、佳代の向かいに座っているのに気づき、勝手に席を移動したのだろうか。しかし、佳代は不思議とそのことに腹が立たなかった。

佳代:「……誰?」

青年:「僕? 月の案内人。」

佳代:「は?」

彼は笑って、コーヒーを一口飲むふりをした。

青年:「冗談だよ。まあ、気まぐれで話しかけただけ。でもさ、月って本当にすごいんだ。ほら。」

彼が指さした窓の向こうには、ビル群の隙間から少し欠けた月が顔を覗かせていた。

「今夜は、この月の下で何かが起こるんだよ。そういう夜だ。」

2. 突然のセブンティーンアイス

カフェの扉が開き、深夜にもかかわらず自動販売機の光が外に煌々と灯っているのが見えた。青年は突然立ち上がり、佳代に向かって手招きをした。

青年:「ちょっと来て!」

佳代:「どこに?」

青年:「アイス! セブンティーンアイス食べたことある?」

半ば強引に連れ出され、佳代は自販機の前に立たされた。青年はお金を入れ、「何味がいい?」と無邪気に聞く。

佳代:「え……チョコミント。」

青年は勢いよくボタンを押し、チョコミントのアイスが落ちてくる音がした。そして自分の分も選び、「はい!」と佳代にアイスを渡した。

佳代:「……なんなの?」

青年:「特別なアイス。これを食べながら月を見ると、何かが起こるんだよ。」

彼はベンチに腰掛け、空を見上げながらアイスの包みを開ける。佳代もなんとなく隣に座り、アイスをかじった。

佳代:「普通に美味しいけど。」

青年:「そう? ほら、見てよ。」

彼が指差す先には、先ほどよりも輝きを増した月があった。まるで夜空が少しだけ澄んだかのように。

青年:「この月は、夢と現実をつなげる橋なんだ。」

佳代:「夢?」

青年:「そう。夢の中で僕らは自由だろ?でも、たまに現実と間違えちゃうことがある。」

佳代はアイスをかじりながら、彼の横顔をちらりと見た。

佳代:「それ、あなたの経験?」

青年:「まあね。でも今は――君が主人公。」

彼は明るく笑い、包み紙を丸めた。

3. 純情商店街と夢の狭間

二人は純情商店街を歩いた。深夜の商店街は静まり返り、シャッターが降りた店がずらりと並んでいる。

青年:「東京って、たまにこういう時間があるから面白い。」

佳代:「誰もいないのに?」

青年:「そう。誰もいないから、世界を自分だけのものみたいに感じられる。」

彼の言葉に合わせるように、遠くから京王線の電車が小さな音を立てて走り抜ける。

佳代:「あなた、本当は誰?」

青年:「君の想像の中の住人……かな。」

佳代:「何それ。」

佳代は笑い、彼も笑う。そのまま二人は商店街のベンチに腰掛け、残り少ないアイスを食べ終えた。

青年:「夢の中でも逢おうね。」

彼は急に真顔になり、そう告げた。佳代は一瞬、彼の表情に不思議なものを感じる。

佳代:「……夢?」

4. 目が覚めたら

佳代は目を覚ました。自分の部屋の天井が見える。時計は午前3時を指していた。

「……夢?」

寝ぼけた頭を抱えながら、ふとベッドの横を見ると、セブンティーンアイスの空き箱が置かれていた。チョコミントの包み紙だ。

佳代はそれを手に取り、窓の外を見た。月が静かに浮かんでいる。

佳代(心の声):「彼は誰だったんだろう。」

月は何も答えず、ただ静かに夜を照らしている。

佳代(心の声):「……夢の中でも逢えるかな。」

窓の外の月を見ながら、佳代は小さく笑った。


これがもうひとつのパターン。

どっちも好きだなぁ〜。
これを映像化したい〜〜〜

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