動物と人間のがっこう
この学校は動物たちと人間がともに協力しながら暮らす学校。
学校の生徒には一人一つの動物の言葉がわかる翻訳機が渡されます。
とある大雨の翌朝。
ウキウキ、ウッキー!!
学校の裏山に住んでいるおさるのピー助が今日もこりずに学校のグランドにやってきた。
僕の名前は雄一。小学三年生だ。
雄一「なんだよー、今日もまた遊びにきたのかい?」
ピー助「ウキウキ、ウッキー!」
雄一「あ、ごめんごめん。翻訳装置をつけるの忘れてたよ。すぐにつけるからちょっと待ってね。ほらよっと。」
そういって、雄一はヘルメット型の自動音声ほんやく機をおさるのピー助にとりつけました。
ピー助「大変なんだよ雄一!今日は遊びに来たんじゃないんだ!弟のキー坊が大変なんだ!なんとかしてくれ!助けてくれよ雄一!」
おさるのピー助はすごく焦った表情で雄一に助けを求めています。
雄一「なんだって?弟のキー坊が?!いったいぜんたいどうしたっていうんだい?」
ピー助「実は最近の大雨で僕たちの住んでいた集落にかかる橋が落ちてしまい、キー坊が取り残されて孤立してしまったんだ。はやく助けにいかないと、きっと一人取り残されて寂しがっていると思うんだ。心配なんだよ。なんとかしてくれよ雄一!」
雄一「わかった!とりあえず急いで現場に向かおう!」
雄一とピー助は急いで孤立しているキー坊のもとへ向かいました。
雄一「おーい、キー坊!!もう少しで助けるから頑張れー!」
キー坊「怖いよー、兄ちゃんはやく助けてくれよー。」
橋が崩壊してしまい、取り残されたキー坊を救うための救出作戦が始まりました。
雄一「よし!とりあえず橋のかわりになるようなものを探すんだ!」
雄一とピー助は学校の裏山で長い枝や、木、石などを探しましたがいいサイズのものがありません。そんなときに偶然1匹のワニが通りかかりました。
ワニはこちらを見て何かを伝えたそうにしていますが、雄一の持っている翻訳機はサル専用なので、ワニには使えません。
ワニの翻訳機は二年生のケンくんが持っています。
雄一「よし!学校に戻ってケンくんを連れてくるから、そこにいてねワニさん!」
そう言って雄一は学校に戻り、ケンくんに事情を説明しました。
雄一「ケンくん!ピー助の弟のキー坊が川が氾濫して橋が崩れて孤立してしまっているんだ。ちょうどワニさんが通りかかって何か伝えたそうにしているんだ。翻訳機を持って一緒に来てくれない?」
ケンくん「なんだって!いいよ、いこう!」
さっそく戻った二人はワニに翻訳機を取り付けました。
するとワニはこんな提案をしてきました。
ワニ「橋が氾濫してしまっているから、僕らみたいに大きな動物の背中をくっつけて橋のかわりにして渡りキー坊を助けに行くんだ!」
雄一「なるほど!それは名案だ!さっそく大きな動物さんと、大きな動物さんの翻訳機を持っている友達を集めよう!」
サイの翻訳機をもっているみほちゃん、カバの翻訳機をもっているたけしくん、ぞうの翻訳機をもっているもえちゃん、きりんの翻訳機をもっているともやくんとワニの翻訳機をもっているケンくんの5人と5匹の動物が集まりました。
雄一「さあ一列になって川に並んで橋を作るんだ!キー坊もうすぐ助けるから頑張るんだ!」
ワニとサイとカバとぞうときりんは一直線に並び背中で橋を作りました。
雄一「よしいい感じだぞー!さあピー助背中を渡って行くんだ!キー坊に届くかい??」
ピー助「ダメだ、あとすこしだけど届かない・・・。もう本当にあと少しなのにどうしたらいいんだ。」
あとわずかの目の前のところまではいくものの、あともう少し距離が足りません。
ピー助「もうこの辺りには大きな動物はいないよ。雄一、どうしたらいいんだい?」
雄一は何かいい案がないか考えます。
雄一「ん〜、動物はいない。動物以外で大きいもの・・・。あっ!!」
急に大きな声を上げて、何かひらめいた雄一は走り出します。
ピー助「雄一!どこいくんだよー!」
ピー助の声も聞こえないぐらいの全力疾走で雄一は走り去ってしまいました。
背中で橋を作っているみんなの体力も限界に近づいてきた頃、雄一が息を切らせて帰ってきました。
雄一「お待たせ!連れてきたよ!」
そう言って雄一が連れてきたのは学校で一番大きな体格の校長先生でした。
校長先生「私に任せなさい」
校長先生はそう言って、背中で橋を作っている動物たちと、キー坊が取り残されている陸を両手いっぱいに広げてつかみました。
校長先生「さあピー助はやく渡るんだ!キー坊を助けるんだ!」
ピー助は急いで動物の背中を走り、校長先生の頭と腕を走り抜けて、一目散に弟のキー坊のところに向かって行きます。
キー坊「うえーん、うえーん。怖いよー、助けてよー。」
ピー助「もう大丈夫だ。兄ちゃんがついてるから安心しな。」
そういって、無事にピー助はキー坊をおんぶして渡ってきたみんなで作った橋を渡りキー坊を救出することに成功しました。
みんな「やったー!救出成功だー!」
キー坊「うえーん、怖かったよー。みんなありがとう。」
ピー助「みんな本当にありがとう。みんなの協力があったからこそ弟を助けることができたよ。僕一人では何もできないが、みんなで協力すればこんなにも大きな力になることを改めて思い知ったよ。本当にありがとう。」
ピー助「そういえば雄一はよく校長先生に助けを求めることを思いついたね。なんでだい??」
雄一「校長先生がいつも言ってるからさ。人間も動物も生きているもの全ては協力しあって、仲良くしなくちゃだめだって。その言葉をふと思い出して、動物だけではなく大きなものってなんだろう?って思ったときにとっさに校長先生が出てきたのさ。」
雄一「校長先生のおかげで僕は常識だけに捉われない考え方ができるようになったんだ。本当にこの学校に来てよかったと思ってるよ。」
校長先生「まさか私が動物たちと一緒に橋になるとは思っていなかったよ。しかし、困難に立ち止まった時に諦めるのではなく、しっかりと自分で解決策を見つけることができたことは素晴らしいことだ。これからの人生もっともっと困難なことが時には待ち受けておる。そんな時でも今日のような体験は役にたつじゃろう。」
校長先生は笑顔でニコッと笑って学校へ戻って行きました。
雄一「ピー助、キー坊、僕らも家に帰ろう。」
ピー助、キー坊「雄一ありがとう!また一緒に遊ぼうね!」
そう言ってこれからもまたこの学校では動物と人間が楽しく仲良く協力し合って暮らしていくのでありました。
それから少し経ち。
雄一「あ、そういえばピー助の翻訳機をはずすの忘れてた!」
校長先生「それでは今日の授業は終わり。みんなの翻訳機を明日のために充電をします。・・・こら、雄一!またピー助に取り付けたまま翻訳機忘れてきおってー!」
みんな「わっはっはっは!」
おしまい。