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難読標識: 逆転式一方通行が絡む3種類の指定方向外進行禁止のある交差点 (岩手)
交差点に「指定方向外進行禁止」の標識が3つある交差点が岩手県盛岡市にある。3つもあると、運転手はどれを見ればいいのか戸惑うだろう。運転をしながら短い時間で意味を正しく解釈するのは初見では難しいかもしれない。この記事では、正しい解釈の方法とシンプルな改善案を考えてみよう。
指定方向外進行禁止の3連ダンゴ
岩手県盛岡市の国道4号線盛岡バイパスと中津川が交わる付近の脇にある交差点で見られる、指定方向外進行禁止の標識は以下の通りである。
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交差点の状況
このような複雑な指定方向外進行禁止の標識が設置されている背景を、交差点を中心とした標識の設置から読み解いてみよう。
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規制が複雑になる3つの理由
1つめの理由は、交差点の横方向の道路が「逆転式一方通行」と呼ばれる、全国でも珍しい規制になっていることに由来する。午前7時から9時は右から左 (北東⇒南西) 方向、それ以外の時間帯は左から右 (南西⇒北東) 方向への一方通行となっている。
「逆転式一方通行」については、詳しくは以下の記事を参照されたい。
「逆転式一方通行」だと通常は、「左折のみ可」「右折のみ可」もしくは「右折禁止」「左折禁止」の矢印標識がセットで登場するが、今回の場合は、片方は直進もできる。つまり、交差点をまっすぐ進む方向にも午前7時から9時までの間は通行規制がかけられている。これが2つ目の理由である。
3つ目、最後の理由は、交差点の横方向の道路が「通学・通園バスを除く大型・特定中型通行止め」になっているためだ。「車両通行止め」と「大型・特定中型」の補助標識を組み合わせるのは、「大特」を規制から外す岩手県でよく見られる規制パターンである。
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左はよく見られる「大型自動車等通行止め」
この交差点では縦方向の道路に上下線設置された指定方向外進行禁止と横方向の左行きに設置された車両通行止めの規制が重複している。何故か右行きには車両通行止め標識の設置がない。
また、裏を返すと、大型。特定中型の通学・通園バスが横方向の逆転式一方通行の狭い通りを通行する場合があるということだろうか。逆転式一方通行の通りは交通量も多く様々な車両が生活道路として使っているが、通学・通園バスの通行は結構大変だろう。
交差点を直進すると4トンの重量制限が…
また、大型・特定中型自動車が縦方向の道路でこの交差点を通過することにはもうひとつ罠がある。交差点を直進すると中津川にかかる文化橋という古く幅の狭い橋があるが、ここには4トンの重量制限がかけられている。
ここで道路交通法における大型自動車、特定中型自動車の定義を復習しておこう。
● 大型自動車: 車両総重量 11トン以上、最大積載量6.5トン以上、乗員定員30人以上のいずれかに該当する自動車。
● 特定中型自動車: 車両総重量 8トン以上11トン未満、最大積載量5トン以上6.5トン未満、乗員定員11人以上29人以下の自動車。
つまり、これからわかるのは、大型・特定中型自動車はいずれも重量制限4トンの橋を渡ることはできないため、交差点通過後すぐに通行止めとなる。通行止めの手前まででバスの乗客乗降、引っ越し等の荷物の集配等があれば別なのだが、どうも考えにくい。つまり、この交差点で大型・特定中型自動車の通行を想定することに、そもそもあまり意味がなさそうである。
規制標識のシンプルな代替案
規制標識はもう少しわかりやすくならないものか。ここでは現実的な解も含め、2案検討してみた。
代替案1
大型・特定中型自動車通行止めの規制区間を拡大することになるが、実質、対象車種が通りすがりで来てしまうと、文化橋のところで行き止まりになり詰むため、手前から規制区間にしたほうが親切である。また、橋の反対側にも念のため同じ通行止め標識を設置しておくとよいだろう。(重量制限があるため、実質対象車種は通行できない。)
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逆転式一方通行の通りにある指定方向外進行禁止の補助標識は「車両」が余計だったので取ってみたのはご愛嬌。
代替案2
代替案1の「大型・特定中型自動車通行止めの規制区間を拡大」はそのままに、矢印標識の数を減らすことに専念してみる。矢印標識のかわりに通行止め、車両進入禁止等の規制標識をうまく使う、いわゆる「東京都方式」である。
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交差点の正面は、午前7時から9時は対面方向からの車両のみが通れることに成るため、実質的な一方通行と考えられる。そのため、交差点に時間帯限定の「車両進入禁止」をおいてしまうのも手だろう。
また、逆転式一方通行はどうしても矢印標識が複数出てきてしまうのだが、逆転式一方通行がたくさんある宮城県仙台市で使われている、「逆方向の一方通行標識を対で設置する」方法を取って矢印標識を減らしてみると、よりわかりやすくなるだろう。
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