逆転式一方通行
一方通行の規制には時間帯を限定したものがある。特定の時間帯だけ一方通行規制をしてその他の時間は対面通行という道路は全国にたくさん存在する。しかし、時間帯によって一方通行の向きが逆転する道路は全国でも珍しい。このような規制を「逆転式一方通行」と呼ぶことがある。つまり、「時間で向きが変わる一方通行」のことだ。この記事では、そんな全国でも珍しい逆転式一方通行のスポットを紹介する。
"完全な"、"不完全な" 逆転式一方通行
「逆転式一方通行」は、道路幅の拡張が難しい狭い道路で、時間帯によって交通量の多い方向が異なるような場所に設置される。かつてはより多くの道路で採用されていたようだが、新しい迂回路ができたり道路が拡張されるなどして普通の一方通行や対面通行に変わっているところもある (東京都杉並区阿佐谷北 松山通、熊本県熊本市中央区 龍神橋など)。
「逆転式一方通行」には、すべての時間帯でいずれかの方向への一方通行になっている規制と、時間帯によっては対面通行にもなる規制がある。この記事では前者を「完全な逆転式一方通行」、後者を「不完全な逆転式一方通行」と呼んで区別することにする。
現在までのところ、筆者は東京 (新宿区神楽坂、杉並区荻窪、足立区千住、足立区千住仲町)、岡山 (岡山市北区)、宮城 (仙台市青葉区)、沖縄県 (那覇市) で逆転式一方通行の存在を確認している。
完全な逆転式一方通行
■東京神楽坂早稲田通りの逆転式一方通行
一番有名なのは、東京都新宿区~千代田区にまたがる早稲田通りの逆転式一方通行だろう。この規制は東京都新宿区神楽坂の、早稲田通り/牛込中央通り交差点から、東京都千代田区富士見の「九段中等学校前」交差点まで続く。
一部は神楽坂と呼ばれる坂を通っており、神楽坂通とも呼ばれている。午前は上り方向 (牛込⇒富士見)、午後は下り方向の規制が敷かれている。また、この通りの逆転式一方通行の規制には、さらに特定時間だけ歩行者専用道路となる規制もかかる。
この通りは、時の政治家である田中角栄が目白の自宅から国会までを車で通勤するために鶴の一声でこの規制が始まったという都市伝説がある。神楽坂通はもともと車道がもう少し広かったが、歩道を設置したことで車道が狭くなり、渋滞がひどくなったため1958年 (昭和33) 3月3日より逆転式一方通行の規制が始まったというのが真相のようだ。
場所によっては可変標識で現在の規制内容を分かりやすく表示している。
■東京都足立区千住仲町ミリオン通り商店街の逆転式一方通行
東京では他にも逆転式一方通行を実施している道路がある。たとえば、東京都足立区千住仲町にあるミリオン通り商店街だ。この道路は東京藝術大学千住キャンパス正門前の「東京藝大前」交差点から「千住仲町公園前」交差点付近のアンダーパスと交わるところまで通っている細い生活道路だ。特定時間だけ歩行者専用道路となる規制も実施されている。
■東京都足立区千住一丁目の逆転式一方通行
東京都足立区千住には他にも逆転式一方通行がある。千住一丁目のハローワーク足立の裏から黒川医院付近まで南北に伸びる狭い生活道路である。
■東京都杉並区荻窪3丁目の逆転式一方通行
また、東京都杉並区荻窪、JR荻窪駅から南に善福寺川の近くまで進んだ南北に伸びる生活道路も短い区間であるが逆転式一方通行となっている。
■岡山の逆転式一方通行
岡山県岡山市北区の国体町交差点と南方2丁目交差点を結ぶ東西に延びる道路にも逆転式一方通行の規制が敷かれている。午前は東方向、午後は西方向への一方通行規制である。
■広島の逆転式一方通行
広島県広島市のJR広島駅の東、県道84号線にあけぼの通りが交わる東蟹屋町交差点から約100m、2区画分の短い距離だけ、逆転式一方通行の規制がある。規制区間が途中で45度折れ曲がっているのでわかりにくい。
自転車を含む車両除外がなく、大型等自動車通行止めの時間限定規制が重なっているのが特徴である。規制区間の端にある2つの交差点では、車両が通らない方向の信号機は、時間外は減灯する。
■盛岡の逆転式一方通行
岩手県盛岡市にも中津川沿いに逆転式一方通行の規制がある。
この道路は午前7時から午前9時までは中津川に沿って下る方向、それ以外の時間帯は上る方向への一方通行の規制が敷かれている。
■仙台 (1) 新坂通の逆転式一方通行
仙台市青葉区には逆転式一方通行の規制がいくつも見られる。一か所目は、東北大学病院から北上して北山方面に南北に延びる道路である。
この道路は午前6時から午前9時までは南方向、それ以外の時間帯は北方向への一方通行の規制が敷かれている。
■仙台 (2) 堤通の逆転式一方通行
次は、宮城県庁から北上して葉山町方面、県道22号仙台泉線のひとつ東の南北に延びる堤通である。
この道路も先ほどと同様、午前6時から午前9時までは南方向、それ以外の時間帯は北方向への一方通行の規制が敷かれている。
■仙台 (3) 小松島小学校脇の逆転式一方通行
また、仙台市立小松島小学校の西側を南北に走る道路にも逆転式一方通行の規制がかかっている。
こちらの規制は、南向き一方通行の時間帯が午前7時30分から午前8時30分までと、何やら学校の登校時間を意識した規制になっているのと、対象車両が「軽車両を除く」となっているのが特徴である。
■仙台 (4) 高松1丁目/小松島1丁目境界道路の逆転式一方通行
松島町立松島児童館の南側交差点から南に南北に走る道路にも逆転式一方通行の規制がかかっている。こちらの規制は、南向き一方通行の時間帯が午前6時から午前9時まで、午前9時から翌朝午前6時までは北向き一方通行の時間帯となっている。
■松島町松島中学校脇の逆転式一方通行
松島町立松島中学校の西側を南北に走る道路にも逆転式一方通行の規制がかかっている。
こちらの規制は、南向き一方通行の時間帯が午前0時から午前9時まで、午前9時から24時までは北向き一方通行の時間帯となっている。
一部時間帯が対面通行になる不完全な逆転式一方通行
■仙台の不完全逆転式一方通行2本 (青葉区台原7丁目付近)
今度は、時間帯によっては対面通行にもなるパターンである。これは、青葉区台原7丁目付近の住宅地の狭い道路でみられる。このルートについては、規制ルートの途中の十字路で、2本の不完全逆転式一方通行道路がT字型に交わっているのが特徴である。地図上でみると、カタカナの「ト」のような形の規制ルートになっている。
規制時間帯については上りと下りの時間帯の長さが非対称になっている。
■三重県津市の不完全逆転式一方通行 (旧伊勢街道)
三重県津市垂水付近の旧伊勢街道に約1kmに渡ってかかる規制。午前7時から正午までは北行き、正午から午後9時までは南行きの一方通行の規制、その他の時間は対面通行となる。規制時間帯については上りと下りの時間帯の長さが非対称になっている。
ちなみに、北側は信号機による交互通行になっている。
■北九州の不完全逆転式一方通行 (赤坂上冨野1号線)
福岡県北九州市小倉北区赤坂4丁目付近の赤坂上冨野1号線にかかる規制。この道路はセンターラインは引かれているが、朝7時から9時は南行き、夕方17時から19時は北行き、その他の時間は対面通行となる。
規制時間帯については北方向と南方向の時間帯はいずれも2時間ずつである。
■ 沖縄 那覇市国際通りのバスレーン規制
一方通行や車両進入禁止の規制標識こそ出てこないが、事実上不完全な逆転式一方通行と同様の規制を行っているのが、沖縄県那覇市の国際通りである。
この道路は那覇市の中心街であるが対面の2車線道路で狭く、バスも往来するために平日朝夕の混雑時間帯はバスとタクシーを除く一般の四輪自動車は片方の車線が通行禁止となる。バス、タクシー、二輪という特殊な車両の組み合わせが規制から除外されるため、「(303) 車両進入禁止」の代わりに「(304) 二輪の自動車以外の自動車通行止め」の規制標識が使われている。また、日曜日のトランジットモール実施日には「(325の4) 歩行者専用」になる。
通行する車線については、規制時間帯についてもバスとタクシーは対面通行になる。
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以上、逆転式一方通行規制が敷かれているスポットを紹介した。全国的にレアではあるが、何か所も存在するので、記事によっては全国で一か所とか三か所のみしかないと書かれているものがあるが、そうではない。
また、読者の皆様の間でほかにも逆転式一方通行の場所を知っているという方がいれば、コメント欄に書き込んでほしい。
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逆転式一方通行の場所を記したGoogleマイマップも利用できる。
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