広島の「(314の2)追越し禁止」の対象車種「自動車・原付」の考察
広島県にある追越し禁止区間では、対象車種を「自動車・原付」に限定している。これは意味があるのか?この記事ではそのことについて考察する。
広島県の「追越し禁止」
広島県には、かつて4区間ほど「追越し禁止」規制区間があった。しかし、3区間は廃止され、2023年12月現在では県道38号線久地通りの1区間のみが残っている。この区間の特徴は、対象車両が補助標識で「自動車・原付」とされていることだ。Googleストリートビューで調べてみると、廃止になった他の多くの区間でも「自動車・原付」限定の規制になっていたようである。この車種限定は他の都県では見られず、広島県の特徴である。
「追越し禁止」ルールのおさらい
「(314の2)追越し禁止」の規制根拠となっている道路交通法第30条の内容をおさらいしておこう。この条文では、追越しを禁止する条件として特定小型原動機付自転車等が除かれている。
※ 「特定小型原動機付自転車等」は道路交通法の中で「特定小型原動機付自転車及び軽車両(以下「特定小型原動機付自転車等」という。)」という定義がある。
追越し禁止の場所であっても軽車両や電動キックボード等の速度が遅い車両 (最高時速は20km/h程度)の追越しを禁止してしまうと、自動車の前にこれらの車両が走っている場合、自動車も20km/h以下の速度で延々と走行しなければならず交通に支障をきたすためと考えられる。
追越し禁止の区間規制をプロットした追越し禁止マップも公開しているので参照してほしい。
対象車両を「自動車・原付」に限定する意味
以上のことをもとに、広島県で行われている「自動車・原付」の補助標識について考えてみる。
追越しの場合は、車両は2種類登場する。「追越す車両」と「追越される車両」だ。道路交通法で、特定小型原動機付自転車及び軽車両が「追越される車両」の規制対象から除外されているため、道路交通法を単純に表現すると以下の表のようになる。ただし、軽車両はリアカー (自転車以外の軽車両)と自転車に分け、特定小型原動機付自転車は道路交通法上自転車と同等に扱われるため、「自転車等」でまとめた。
「自動車・原付」の補助標識を付けた場合、規制をかける場合は「行為を行う車両」を補助標識に指定するのが通常なので、上記の表は以下の通りに変更となる。(黄色を付けた部分)
変更された部分について考えてみると、リアカーや自転車等が、自動車や原付を追越しても良くなることが変更点であることが分かる。しかし、原動機を持たないリアカーや自転車が自動車や原付を追越すシーンは通常は思いつかないため、この変更だと事実上意味がないことになる。
それでは、別の解釈として、「追越される車両」の規制対象外を補助標識で表現しているものと考えると、道路交通法と規制内容は同じだが、以下の黄色部分が条文内で除外されていることを強調していることになる。
通常のドライバーで道路交通法第30条の中で追越される対象車両に除外規定があることをしらないドライバーも多数いると思われるので、その補助をしていると思えば筋も通る。
ただし、補助標識に記載されている車両が「追越す車両」「追越される車両」のいずれの場合であっても、この記載がない場合と事実上大差がない。そのため、これらの記載は結局のところなくてもよい。実際の広島県の規制区間に設置されている標識でも、場所によっては「自動車・原付」が付いていないものもあるのはそのためだろう。
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