信号機の庇 (ひさし) はなぜあるの?
信号機の灯器には、光るレンズのすぐ上に屋根のような庇 (ひさし・フード)がついているのを知っているだろう。この庇、短かったり長かったりといろいろな形があったり、最近は庇がない信号機も登場している。この記事では、信号機の庇の役割と最近の事情を見てみよう。
庇とは?
信号機の庇とは、写真のように、光るレンズのすぐ上にあるパーツのことである。
信号機にはさまざまな庇が装備されている。これらには意味がある。
庇の役割・機能
庇には以下の機能がある。
誤認防止: 一定方向以外、もしくは一定の距離以上遠くから光が見られないようにする。
擬似点灯・白色化現象防止: 西日など太陽光が直接レンズ内に入ったときの視認性確保。
積雪防止: 積雪・着雪・落葉等付着の防止。
誤認防止は、鋭角に交差している交差点の信号機、側道からの合流場所の信号機、信号機のついている交差点からあまり距離が離れていない場所に交差点がある場合の信号機、など、同じ視界の中に異なる信号機が同時に入ってくることを防ぐ。これにより正しくない信号機を見てしまうリスクを減らす。
「疑似点灯」とは、初期の電球型信号機の場合、色のついたレンズに強い太陽光があたると、内部の反射鏡で光が反射され、消灯している灯器も光っているように見え、青、黄、赤、すべての灯器が点灯している状態になることである。
LED型信号機では灯器内の反射鏡がなくなりレンズも無色になったため疑似点灯は起こらないと思われていたが、レンズ表面に強い太陽光があたると、点灯している灯器が見えにくい状態になる (白色化現象)。
1990年代以降に設置された現在普及している比較的新しい信号機では、レンズに西日対策 (遮光膜、ファントムボードなど)を施した灯器が多く展開されるようになっている。
庇を装備しておくとレンズに直接太陽光があたる時間を短くできる。
標準的な庇の長さの変遷
従来の電球型信号機の場合は、主に太陽光がレンズに当たるのを防ぐために標準的な場合であっても庇の長さは長めに取られていた。しかし、電球からLEDに置き換わると視認性が向上したために庇の長さは短くなっていった。低コスト型のフラットな信号機では、庇をほぼ無くす代わりに信号機本体を下に傾け、かつレンズを高機能化することで庇の機能を代替できるようになっている。
長い庇
筒状の長い庇は、主に「誤認防止」のために取り付けられる。先の例のように鋭角に交わる交差点では、本来見えるべきでない信号機の光が見えてしまうため、特に夜間などは誤認が発生するリスクがある。長い庇を装備しておくと、交差する道路の信号機の光が見えなくなる。
長い庇は、全部の灯器に装着されている場合もあれば、青色など一部の灯器だけに装着されているものもある。
別のパターンとして、信号機がそれぞれ設置されている2つの隣接する交差点の点灯サイクルが異なる場合、遠くの信号機のレンズが見えないようにする場合にも長い庇が使われる。この場合、信号機本体を下に傾け、遠くからレンズが見えないようにする。真ん中に高架橋などがある幹線道路でよく見ることができる。
一方、長い庇は台風などの強風や積雪等で壊れやすい、パーツ代がかさむというデメリットもある。
スリットの付いた長い庇
しかし、上記の例で2つの交差点の距離が近すぎる場合、信号機を下に傾けたり長い庇をつける長さにも限界があり、かつこの方法では車が交差点に近づくに連れレンズの面積が少しずつしか見えてこない。そのため、この場合はより深い角度で下に傾けた複数の水平方向のスリッドをレンズの前に装備する。
青色など一部の灯器だけにスリットがついているものもある。
傾いた庇
庇の長さは長くても筒状ではなく半分だけが長くなっている場合がある。そして場合によっては太陽光が来る方向など特定の方向に傾いている場合もある。
偏光フィルター
高速道路出口で側道から本線に合流する場所にある信号機の場合、側道も本線も信号機が同じ方向を向いているため、長い庇では誤認防止がうまく行かない場合がある。その場合、レンズに偏光フィルターを入れることで、正面から見ないと光が見えないようにすることができる。電球型の場合は四角い庇の中に丸いレンズが入っている灯器が使われていた。LED型の場合、外見から見分けがつかない形で偏光フィルターを装着することも可能になっている。
庇がない信号
2014年以降に警察庁の施策により全国に普及が進んでいるフラット型信号機には、庇が1cmくらいしかないもの、もしくはまったくないものが存在する。信号機本体を10-20度下に傾けることで着雪も防止することができる。庇がなくても偏光フィルターを装着できるため、長い庇が不要になるケースもある。
透明カプセル型カバー
雪国では庇の代わりにスライムのような透明カプセル型カバーの付いた着雪対策信号機も見かける。
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