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最近の「常時左折可」標示板の事情
読者の皆様は「(常時)左折可」という標示を知っているだろうか。左折可は全国で25都府県の約280の交差点に設置されている。都道府県により採用状況に差があり、22道県では設置数がゼロのために見慣れない人もいるだろう。左折可は市街地中心部では近年その数を減らす傾向にある。この記事では左折可規制の現状と最近の事情について考察する。
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左折可とは
「左折可」は、標識一覧には載っていない、道路交通法施行規則第三条で定められた標示である。信号機のある交差点の手前に設置されている場合があり、その場合は信号の色にかかわらず常時左折が可能であることを示している。
左折しようとする車両がその前方から見やすいように、信号機の背面板の下部(信号機に背面板が設けられていない場合にあつては、信号機の灯器の下方)又は道路の左側の路端に近接した当該道路上の位置(歩道と車道の区別のある道路にあつては、車道の左側部分に接する歩道の車道寄りの路端に近接した当該歩道上の位置)に設けて行なうものとする。
標示の標準サイズは横の一辺が40cmであり、これは標準サイズの補助標識と同じ長さである。つまり、一方通行の標識サイズ (60cm) よりも一回り小さい。
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出典: 別記様式第一(第三条関係)
左折可の標示の設置方法は図示すると以下の通りとなる。「信号機の背面板の下部」または「道路の左側の路端に近接した当該道路上の位置」(この場合は規定サイズの1.5倍、つまり60cmで一方通行と同じサイズにする)が設置場所である。場合によっては左折用の道路が「交通島」によって分離されていることがある。
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出典: 交通規制基準 (警察庁)
左折可の規制実施基準
左折可の標示版を設置できる交差点の基準は交通規制基準で、信号機により交通整理が行われている交差点で、
左折開始場所 (流入部)、左折終了場所 (流出部) とも片側2車線以上あり、
流出部が交通規制又は道路構造により、交差道路の直進車と交差しない、
流入部に横断歩道が設置されていない (やむを得ず設置は可能)、
の3条件を満たす道路とされている。また、原則として当該流入部の車線には停止線を設置しない、とされている。
ただし、実際の適用例を見ると、必ずしもこれらは守られていないケースも多い。
似たような形状の交差点でも左折可の標示がある場合とない場合がある
左折可は都道府県により採用状況に大きな差があり、採用している都府県であっても、同じような形状、状況の交差点で規制方法が異なるため、多くのドライバーが戸惑う原因にもなっている。"事実上" 信号機の状況にかかわらず左折可となっている交差点でのパターンを挙げる。なんと主なものだけでも18パターンもある。多くのパターンがあることに驚くだろう。交通島があるケースの左折方向の道路は「左折導流路」と呼ばれる。交通島の形状や大きさも実に様々である。
左折可がある主なパターン
交通島がある場合は、一方通行標識が併設されている場合もある。
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❶交通島なし、左折可、
❷交通島あり、左折可、
❸交通島あり、左折可、流出部で止まれ
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❹交通島あり、左折可、流入部で止まれ・横断歩道、
❺交通島あり、左折可、流入部で横断歩道、流出部で止まれ、
❻交通島あり、左折可、流入部で横断歩道
一方通行のみがある主なパターン
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❶交通島あり、一方通行、
❷交通島あり、一方通行、流出部で止まれ、
❸交通島あり、一方通行、流入部で横断歩道
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❹交通島あり、一方通行、流入部で止まれ・横断歩道、
❺交通島あり、一方通行、流入部で横断歩道、流出部で止まれ
左折専用信号があるパターン
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❶交通島あり、流出入部で左折車専用信号 (矢印信号、もしくは青信号)、
❷交通島あり、流入部で横断歩道用信号
何も標識・標示がない主なパターン
法定外標示の看板、異形警戒標識、路面標示で「常時左折可」と表示されている場合もある。
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❶交通島あり、標識無し、
❷交通島あり、標識無し、流出部で止まれ、
❸交通島あり、標識無し、流入部で横断歩道
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❹交通島あり、標識無し、流入部で止まれ・横断歩道、
❺交通島あり、標識無し、流入部で横断歩道、流出部で止まれ
左折可設置状況の最近の傾向
左折可の標示は、ドライバーによっては見慣れないために、特に交通島がない交差点では、左折可の意味が分からず停止線付近で赤信号で停止してしまい、後ろの車両から警音器を鳴らされることもあるようだ。
また、特に市街地中心部の交差点で左折可が設置されている場合は、左折可の軌道上に横断歩道がある場合も多く、左折可ということで車両に優先権があると勘違いして横断歩道で徐行せずに走り去るケースもあり、交通事故が多発した。
そのため、奈良県、大阪府などを中心に、この10年で市街地中心部の交差点での左折可を廃止する動きが加速した。実際に20か所程度の交差点で左折可が廃止された。
奈良県では1963年の「なら・シルクロード博覧会」をきっかけに左折可の標示が増え始め、1998年に64交差点に合計78枚と設置数がピークになったがその後は減少傾向となった。
一方、茨城県、長野県、石川県では高速道路のインター入口交差点、バイパス道路、新規整備された都市を中心に左折可が設置されており、北関東自動車道やのと里山海道など高速道路の新設に伴い数か所で新規設置されているケースも見受けられる。大阪府でも高速道路のインター入口交差点や港湾地区の道路など、安全上問題がない場所では新設されている。
日本全体で近年その数が減少しているとウワサされている左折可であるが、一部の府県の市街地で減っているのは確かだが、一方、インターチェンジ出入口等で新設されている場所もあるため、全体として数が減っているわけでは必ずしもない。(データをきちんと調べてみることは大事である!) 「交通島がない市街地型が減って、交通島がある郊外型は増えている」というのが総括である。
ちなみに、左折可標示板の設置がゼロの道県でも、左折導流路のある他のパターンでの左折可交差点は存在する。
左折可の標示の代替案
左折可がややこしいのであれば、この標示の替わりに、信号機に常時点灯する左折矢印を設置すれば、この標示は全廃できる。(電気代などのコストは多少上がってしまうかもしれないが) 交通島がない交差点ではこの方法が特に有効である。
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また、左折導流路では、一方通行標識と置き換えるか、単純に撤去してしまっても問題なさそうだ。実際に、一方通行標識や、標識が何もない左折導流路が日本全国に多く存在する。
左折可が設置されている交差点
左折可の場所は都府県によっては交通規制情報オープンデータで一般に公開されている。約280交差点の日本全国における分布は以下のとおりである。(数字は交差点数)
岡山県 42
沖縄県 33★
茨城県 31
東京都 30★
岐阜県 21
奈良県 18
長野県 16★
鳥取県 12★
石川県 11★
兵庫県 11★
京都府 10★
山口県 7
徳島県 7★
富山県 5★
静岡県 5
三重県 5
福島県 4
埼玉県 4
大阪府 4★
新潟県 3
栃木県 2★
愛知県 2
鹿児島県 2
愛媛県 1★
佐賀県 1
最多は岡山県、次に沖縄県、茨城県と続く。左折可は山形県・宮城県以北には存在せず、四国と九州にはほとんど存在しない。沖縄県で左折可が多いのは1972年の米国からの返還前は米国に似た交通規則だったことに由来するようだ。(米国から返還後に、車両が左側通行に切り替わったのは1978年 (昭和53) 7月30日)
地図にプロットすると以下の通りになる。
参考: 米国等、海外では赤信号でも右折可能な国がある
海外に目を向けると、米国やカナダでは一部地域を除いて、赤信号でも基本右折 (右側通行のため) 可能である。「Do Not Turn on Red」の標識があったり、赤信号が右矢印になっている場合のみ赤信号で右折ができない。
メキシコ、ドミニカ、コスタリカ、コロンビア、中国、韓国、フィリピン、サウジアラビア、タイ、レバノン、サモアなどでも同様のルールになっている。
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