見出し画像

売上を 2.2 倍にしたスポーツ用品店の新規事業とは?経営革新計画が成功を後押しした事例

1.はじめに

 同店は、従業員5名のスポーツ用品店で、主に野球用品を取り扱っています。数年前、同店の商圏内に大手用品店が出店するとともに、低価格競争が激化したことにより、業績が厳しい状況になってしまいました。

 打開策を検討する中、新規事業としてイベントの定期的な開催、既存顧客に対するダイレクトメールでのアプローチの他、店頭で手作りの新聞を配布することとし、このような取組みを経営革新計画にまとめました

「同店はピンチをどう打開したのか」

 同店は、この計画に基づいて事業展開をしたことによって、売上高が2.2倍にまで増大しましたが、この記事は同店のそのような取組みにおけるポイントをご紹介するものです。まず、経営革新計画の制度概要について述べていきます。

2.経営革新計画とは

 経営革新計画とは、新規事業を立ち上げ、収益性の向上や市場での競争力強化を目指すための計画です。所定の要件を満たした計画を都道府県に提出し、承認を受けることで、都道府県知事の名前が入った承認書を得ることができます。

 経営革新計画における「新規事業」は、以下の類型があり、いずれかに該当することが必要です。

  1. 新商品の開発又は生産

  2. 新役務の開発又は提供
    ここで言う「役務」とはサービスを指します。つまり新サービスを開発することや新サービスを提供することは、経営革新計画における新事業と言えます。

  3. 商品の新たな生産又は販売の方式の導入

  4. 役務の新たな提供の方式の導入その他新たな事業活動
    提供する商品や役務は既存のままであるのに対して、その提供方法が新しいものである場合も、経営革新計画における新事業と言えます。

  5. 技術に関する研究開発及びその成果の利用

  6. その他の新たな事業活動

 同店は、前述の取組みを「4.商品の新たな生産又は販売の方式の導入」として経営革新計画を申請し、承認を取得しました。

 当計画の承認を受けると、金融や補助金、税制の優遇といったメリットを享受できますが、「〇〇知事が認めた計画に基づく●●を提供しています」といった内容の告知をするなどマーケティングに活用することも可能です。

 以下では、同店の業績拡大に寄与した取組みのうち「手作り新聞」についてご紹介していきます。

3.具体的な取組内容

 同店が月に1回発行することとした手作りの新聞は、同店従業員がパソコンで作成したものです。その内容は、店長からのご挨拶、スポーツ用品専門店としてのコラム、お客様の記念写真、イベント案内、切り取り線のついたクーポン券などが印刷されています。

 この中でも特に注目すべきは、「お客様の記念写真」コーナーです。ここでは、前月にご来店された顧客の購買記念写真を掲載しています。例えば、母親と子どもがグローブを買いに来たとします。

 グローブを購入し会計を終えた時に、スタッフが「記念にお母さんのスマホで写真を撮りましょうか」とお声掛けし、新品のグローブをはめた子どもとお母さんの写真を撮ることをご提案します。

 多くの顧客がその撮影に応じますが、撮影後、スタッフは「月に1度発行している当店の手作り新聞にこの写真を掲載したいので、当店のデジカメでも撮影してよろしいでしょうか」と、今月号をお渡ししながらお声掛けします。

 多くの顧客は、子どもが笑顔で写っている写真がニュースレターに掲載されることを喜ぶため、快く許可してくれます。

 スタッフは、自店のカメラで撮影した後に「来月1日に発行する手作り新聞の『お客様の記念写真』コーナーにお写真を掲載させていただきます。店頭でしか配布しておりませんので、ぜひ、ご来店ください」と申し添えます。

 これにより、この顧客は翌月に新聞を受け取るために店舗に訪れます。そして、写真を撮ってもらった子どもは、自分の写真が掲載された手作り新聞をチームメイトに見せたいと思い、練習時にこの新聞を持っていきます

 これにより、チームメイトに同店を宣伝することになり、同店で買い物をする人が増えるという効果を引き起こしました。

4.まとめ

 今回ご紹介したスポーツ用品店は、経営革新計画の承認を受け、効果的なマーケティング手法を実践することで、売上高を2.2倍に増加させました。手作り新聞の配布と顧客との写真撮影を通じて、既存顧客との関係を強化し、新規顧客の獲得にも成功しています。

 この事例は、中小企業が競争激化の中で創意工夫を凝らし、地域密着型のサービスを提供することで、大手と差別化を図り、持続的な成長を遂げることが可能であることを示しています。顧客満足度を高める取組みを継続し、地域に愛される店舗を目指していきましょう。


いいなと思ったら応援しよう!