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自動車整備工場が遊休スペースを活用した新規事業で経営革新計画を立案した事例

 商工会や商工会議所など商工団体で会員企業のご支援に当たる方は、会員である自動車整備工場から業績回復の相談を受け、有効な打開策を見出せず、悩んだ経験はないでしょうか?

 自動車整備工場は、他業種からの参入や自動車の事故減少によって、業績が厳しいケースが増えています。

 弊社は、商工団体からご依頼を受け、これまで自動車整備工場含め、200を超える事業者に対して「経営革新計画」を策定し、新規事業の立ち上げを支援してきました。

 この記事では、弊社が支援した自動車整備工場の経営革新計画策定事例をご紹介します。これを読むことによって、自動車整備工場の新規事業立案のヒントが得られます。

「今回は、自動車整備工場の事例だのさ」

1.同社の現状


 今回ご紹介する企業は、創業して50年以上が経過しており、先代が個人事業として立ち上げ、現在は2代目が経営しています。板金塗装がメイン事業ですが、車検や一般整備も手掛けており、それらの専門性が高い社員が複数名在籍しています。

 外部環境に目を転じると、自動車の長寿命化によって、1台当たりのメンテナンスの機会が増加しつつあります。また、環境負荷軽減の意識が高まっており、電気自動車やハイブリッドカーの整備対応も求められるようになってきました。

 外部環境の脅威としては、新車販売台数の減少を受けたカーディーラーが車検や整備に注力するようになり、また、カー用品店やガソリンスタンドは収益拡大のために車検の需要を取り込む動きが強化されてきました。また、近年は車両に自動ブレーキが搭載されるようになり、衝突事故が減少したことから、板金の需要が低下しています。

 このような状況の中、経営をより盤石にしたいとの思いを抱いた経営者は、地元の商工会へ相談に行ったところ、行政の中小企業支援策である経営革新計画を紹介されました。当制度の内容については、以下のリンクを参照してください。

2.経営革新計画の立案と新サービスの立ち上げ

 同社は、商工会から派遣された専門家と面談を繰り返す中、敷地内にある遊休スペースを使用して、セルフサービスの洗車場を立ち上げることとし、これをテーマにした経営革新計画を策定することとしました。この洗車場には、門型洗車機1台、スプレー式洗車機4台、掃除機2台を設置します。

 これにより、洗車場を利用する顧客に同社の存在をアピールすることが出来、整備の需要を刈り取りやすくなり、人脈だよりだった新規顧客の開拓をシステマティックに行うことが出来ます。

 特に、顧客が洗車の仕上げ作業をしている際に、空気圧の無料点検サービスを実施することとし、顧客との心理的な距離を縮めやすくしました。

「整備士に相談しやすくしたのさね」

 さらに、それまでの同社は顧客から預かった車両の整備を終え、納車前の洗車作業をする際に、水道水をホースから引っ張って洗車をしていました。ですが、同社自体がこの洗車場を活用することによって、洗車にかける労力を低減することが可能となります。

3.当事業立案のプロセス

 今回の事例は、これまで提供していなかったセルフ洗車というサービスを提供するというものです。この戦略は、下記アンゾフの成長ベクトルにおいて、既存顧客に新規製品・サービスを提供する「新製品開発戦略」、もしくは新規顧客に新規製品・サービスを提供する「多角化戦略」に当てはまります。

 同社が、セルフ洗車という新サービスを発案したプロセスには、自社の経営資源を棚卸して、そのうちどの経営資源を新事業に活用できるかという観点がありました。

 経営資源としては、自社が事業に活用できる」人・物・金・情報」が挙げられますが、同社が有する物的資源として、運営する整備工場の目の前にある数百坪の遊休スペースがありました。

 これを活用して、人脈だよりの顧客開拓をいかにシステマティックにするかという同社の経営課題の解決を図ろうとしました。そのような意味合いから、当経営革新事業は多角化戦略の色が強いと言えるでしょう。

4.まとめ

 今回の事例では、自動車整備工場が遊休スペースを活用してセルフサービスの洗車場を立ち上げることで、経営基盤の強化と新規顧客の獲得を目指しました。長年培ってきた専門性と地域密着の強みを活かしつつ、新たなサービスを提供することで、顧客の利便性を高め、競争力を向上させることが期待されます。

 経営資源を有効活用したこの多角化戦略は、今後の事業展開において重要な一手になると言えるでしょう。

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