![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/142551668/rectangle_large_type_2_f536d2e25a9daa9c026cb962bf569f05.jpeg?width=1200)
苦境に陥った雑貨店の新事業から学ぶガソリンスタンドの可能性
1.はじめに
今回ご紹介する婦人服を主力商品とする雑貨店は、厳しい外部環境の中で、地域のニーズに合わせた新事業で大きな反響を呼びました。今回の記事では、同店がどのようにして新事業を見出し、展開していったのかご紹介するとともに、ガソリンスタンドがその取組みから学べる点を見ていきます。
2.経営革新計画とは
競合の台頭やオンライン販売の拡大という脅威に直面し、業績の悪化が止まらなかった同店は、状況を打開するべく地元の商工会へ相談に訪れました。
その相談で商工会の職員から「都道府県に完成度を審査していただく新規事業の計画」である「経営革新計画」を教えていただきました。経営革新計画を作成し、都道府県の審査に通ると、有利な条件で資金調達ができたり、補助金の審査が有利になったりするという特典があります。
そして、商工会経由で専門家を派遣してもらえれば、金銭的な負担はゼロで、専門家の支援を受けながら、計画を策定することが出来ることも知り、当制度を活用することとしました。
![](https://assets.st-note.com/img/1717203353345-cyZYxT63ku.jpg?width=1200)
同店は、商工会から派遣された専門家の支援を受けながら、経営革新計画のテーマとなる新規事業のアイデア出しから始めました。そのために、現状分析の手法の一つであるSWOT分析を実施しました。
3.SWOT分析とは
SWOT分析は、内部環境を強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)として洗い出し、外部環境を機会(Opportunities)、脅威(Threats)として洗い出します。そして、それらに基づく取組みを検討しますが、それぞれの頭文字をとってこのように呼ばれています。
![](https://assets.st-note.com/img/1717202458926-9d0aFwBwI4.jpg?width=1200)
同店のSWOTは以下となりました。
強み(Strengths):同店は業歴が長く地域での知名度が高く、高齢の固定客が多数存在しています。競合店へ顧客が流出してしまったものの、この高齢の固定客は変わらずご来店していました。
弱み(Weaknesses):過去に安売りで成功した体験から、待ちの商売という組織文化がありました。
機会(Opportunities):同店が立地する自治体の人口は増加傾向でした。
脅威(Threats):高齢の固定客は、年ごとにお歳を召しますから、いずれ、同社の店頭へ足を運べなくなります。同社の顧客層のうち、高齢者予備軍の多くは競合へ流出してしまっていますから、このままの状況が継続した場合、客数はますます減少してしまいます。
![](https://assets.st-note.com/img/1717203565848-itWLNXMbMx.jpg?width=1200)
これらを踏まえて、新規事業を模索していきました。
4.同店の経営革新事業とは
新規事業を立案する際にポイントとなったのは、既にお歳を召して同店に来店できなくなった、過去の固定客は買い物をしたくないのか、という問題意識でした。
そこで同店が、経営革新事業として考案したのが、介護施設に入居する買い物に来ることができないご高齢の方々のもとへ出向いて販売をすることでした。介護施設と日時を決めて施設内に模擬店を開店させ、施設の入居者は職員の付き添いのもと買い物をするという仕組みです。
![](https://assets.st-note.com/img/1717204197487-JtBLC9ttnB.jpg?width=1200)
このテーマで経営革新計画を策定し、審査を経て承認を得た同店は、経営革新計画の承認をマーケティングに活用します。
5.経営革新計画の承認をマーケティングに活用
都道府県知事から承認を得た同店は、経営革新計画の内容をA4用紙1枚にまとめるとともに、承認書のコピーとともに新聞社11社へ送信しました。
これを受け取ったある新聞社が同社へ取材に訪れ、その取組みを記事にした結果、宣伝効果が発揮され、多くの介護施設から出張販売のご要望がありました。
![](https://assets.st-note.com/img/1717204056140-X3OpFOFslc.jpg?width=1200)
そして、この出張販売を利用した介護施設の入居者からは「若い時にしょっちゅう買い物に行っていたこの店でまた買い物できるなんて嬉しい」といった声が上がりました。
また、合計金額を計算しながら買い物をすることから、認知症の進行が緩やかになったり、そもそも認知症の予防になったりすることも分かりました。
このような効果もあり、出張販売の要望が増え続け、結果として同店は12年ぶりに前年の売上高を超えました。
6.まとめ
この事例は、高齢の固定客が多く、競合店に押されて業績が低迷していた雑貨店が、新事業で経営を刷新した事例です。この計画は、都道府県に承認され、新聞社に取り上げられたことで、多くの介護施設からの依頼を獲得しました。また、出張販売を通じて、顧客の満足度向上や認知症の予防にも貢献しました。
同様に、ガソリンスタンド業界でも顧客ニーズへの柔軟な対応と新しいサービス展開が求められています。例えば、洗車やタイヤ交換などの作業をする際に、顧客宅へ車両を引き取りに出向き、店舗で作業後に納車まで行うサービスなど、顧客の利便性を追求する取り組みが考えられます。
新型コロナウイルス感染症の影響で、来店のみに頼った事業展開からの脱却が必要とされています。地域の雑貨店が経営課題に対処する際に示した柔軟性と創造力は、他の業界においても参考になるでしょう。今後も地域のニーズに即したアイデアを探求し、持続可能な成長を目指すことが重要です。