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筑波大学,アルファベットの略称多すぎにつき,「バクロニム」を作って広めちゃおう!

※ これは klis Advent Calendar 2022(https://adventar.org/calendars/8181) の9日目の記事です。前日の記事はこちら → 「自分たちで自分たちの卒アル写真を撮った話」。


 こんにちは。klis 21生の道の上です。現在様々なタスクに追われながら,現実逃避をするようにこの記事を書いています。誰か助けてください。SOS,SOS ……。

 まあ,こんなことを言っていても仕方がないので前置きに入ります。ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが,先ほどから用いている ”klis” という用語は,私が在籍する筑波大学の 知識情報・図書館学類 の略称です。私の周囲の人々は当たり前のように klis という表記を用い,口でもケーリス,ケーリスと言っているのですが(klis の読みは「ケーリス」です。クリスではありません),残念ながらこの用語は,筑波大生の間においてすらさほど知名度は高くありません。他学類の人と話す際には,「知識」と言った方が通りが良いです。

 これが「klis は何という英語の略か」という話になってくると,正確に答えられる人はさらに少なくなります。所属学生であっても,案外知らない人が多いのではないでしょうか。せっかくなのでこの機会に覚えていただけると嬉しいのですが,klis は,"Knowledge and Library Sciences"  の頭文字をとった略称です。そのため,正確な表記は "KLiS" になるのですね。たま~にこう書いている人も見かけます。

 ここでいくつかの用語を紹介します。ここまで説明してきた klis のように,「複数の単語から構成される合成語や短文において,各単語の頭文字を抜き出して繋げることで作成される略語」のことを,頭字語 と呼びます。頭字語は2種類に分類され,OECD(オー・イー・シー・ディー)や PDCA(ピー・ディー・シー・エー) のように,アルファベット名をそのまま発音するものを イニシャリズム ,OPEC(オペック) や STEM(ステム)のように,アルファベットの連なりを通常の単語と同じように発音して読むものをアクロニム と呼びます。頭字語に関しては,言葉遊び界の巨人,にぅまさんによるこちらの記事に詳しいので,ぜひご参照ください。


 さて,ここから本題に入っていくのですが,筑波大学には klis 以外にも,アルファベットによる学類の略称が数多く存在します。

 (略称にはアクロニムとイニシャリズムの双方が見られます。また,教育学類の edu ,生物学類の biol のように,学問領域の英語表記の単純な省略形も多くありますね)

 とはいえ,これらの略称をすべて覚えている人は学内でも一握りでしょう。ましてやその略称がどのような英語の略か,という点まで含めて知っている人となると,それこそほんのひとつまみだと思われます。これだけ数が多いとそれも仕方ないですが,せっかくなら自分たちが使っている略称を,より多くの人に知ってもらいたいものですよね(そうですよね?)。

 そこで私が考えたのが,言葉遊びの一種,バクロニムを用いるという方法です。

 バクロニムとは,ある単語の各文字を使って,新たに頭字語としての意味を持たせたもののことです(バクロニムは "back" と先述の "acronym" のかばん語です。「後付けの頭字語」といった意味ですね)。
 
 具体例を挙げましょう。この文章の冒頭で,タスクに追われる私が発していた救難信号, "SOS" ですが,この言葉は本来なんの略語でもありません。モールス信号において S・O・S という並び(・・・---・・・)が覚えやすいために,緊急時でも間違えにくい救難信号として採用されていたというだけで,この文字列自体には何の意味も無いのです。ところが,SOS はしばしば,"Save Our Ship"(私たちの船を救って)や "Save Our Souls"(私たちの魂を救って)という短文の頭字語として紹介されます。ある言葉が頭字語になるように,後付けで文章を作成してしまう,この言葉遊びこそがバクロニムです(よく,アルファベット版のあいうえお作文とも紹介されます)。

 他に有名なバクロニムの例としては,Denial(否認)を "Don't Even Notice I Am Lying"(自分が嘘をついていることに気付かない)の頭字語にしてしまったり,スポーツメーカーの adidas が "All Day I Dream About Sports"(日がな一日スポーツの夢を見る)の頭字語であるとでっちあげたりしているものが挙げられます。非常に秀逸ですね。

 では,このような秀逸なバクロニムを,筑波大学の学類の略称で作れたらどうなるでしょうか。アルファベットの略称がバクロニムと共に広まり,その過程で本来の英語表記も浸透していくことでしょう。学類の略称を周囲に知ってもらうのに,これほど良い方法はないと思われます(そうですよね?)。

 そうと決まれば早速,筑波大学のバクロニム,略して ツクバクロニム を作っていきましょう!

 (余談ですが,既存のツクバクロニムとして,ITF.[筑波大学のスローガン," IMAGINE  THE  FUTURE. " の頭字語で,大学そのものを表す略語として用いられる]を " Instagram, Twitter, and Facebook. " と言い換えているものが見つかりました。筑波大生の SNS 使用率が高いことからでしょうか。なかなか面白いです)


 はい。

 意気揚々と始めたのはよかったものの,芯を食ったバクロニムを作るのは想像以上に大変な作業でした。当初はこの記事の中ですべての学類のバクロニムを作るつもりでいたのですが,実際には情報学群の3学類の分を作成したところで心が折れました。この文章を読んでくださっている皆様には,是非とも私の遺志を継いでツクバクロニムを完成させていただきたいと思います。ぜひともよろしく!

 それでは,完成したツクバクロニムを発表いたします。


① klis(知識情報・図書館学類。"Knowledge and Library Sciences" )

・"Keep  Literature  Safe" (文献を安全に保管せよ)

・文献を保管するという,図書館や文書館の役割を意識しました。知識情報・図書館学類という名称から得られるイメージにもそれとなく合致していて,悪くないツクバクロニムだと思います。

・ちなみに klis では,図書館情報学だけでなく,実に様々な学問分野について学ぶことができます。イメージに反して,ずっと図書館のことだけ学んでいるわけではないのです(私はそれでも構いませんが)。総合生の皆さん,受験生の皆さん,「迷ったら klis」,有りだと思いますよ。


② mast (情報メディア創生学類。"Media Arts, Science and Technology")

・"Many  Apt  Students  Travail" (多くの優秀な学生が苦労している)

 ・klis のお隣の mast です。情報学群の3学類の違いを説明する際,よく「情報 × 理系が coins ,情報 × 文系が klis ,そして情報 × 芸術系 が mast」と言われます。いささか単純化をしすぎているきらいはありますが(klis は文理融合を謳っています),おおむねこの通りで間違いはないでしょう。

・情報機器をバリバリ駆使し,様々なシステムの開発やコンテンツの創造を行う mast ですが,そんなすごい学類に対して私が抱いているイメージは以下の2つです。

① 学生がみんな優秀。
② 学生がみんな頑張っている。 

 これらの雑すぎるイメージをアルファベットにいい感じに当て嵌めたのが,上のツクバクロニムです。学類の実態に合致しているかはともかくとして,なかなかうまくできていると思うのですが,いかがでしょうか。


③ coins(情報科学類。"College of Information Sciences")

・"Coins  INot  Slis" (coins は slis[図書館情報メディア系]じゃないよ)

・早くもラストです。情報学群3学類の最後を飾るのは coins なのですが,このツクバクロニムに関しては補足が必要でしょう。多少長くなりますので,興味のない方は以下の3段落は読み飛ばしてください。

・筑波大学は2002年,つくば市に本部を置いていた国立大学である,図書館情報大学(ulis - "University of Library and Information Sciences")と統合しました。現在の筑波大学において klis と mast が拠点を置いている「春日エリア」は,かつての ulis の敷地にあたります。

・統合後の ulis は,図書館情報専門学群(slis - "School of Library and Information Sciences")という名称で運営されていくことになりますが,当時の筑波大学には既に,第三学群に属する「情報科学類」という学類が存在していました(情報科学類の発足が1977年であるのに対し,ulis の設置は1979年です。最も,klisの歴史は1921年に創設された,文部省図書館員教習所まで遡ることができるそうですが)。

・その後,2007年に行われた学群再編により,情報学群,及びそれに属する3学類が誕生することになりますが,それらの学類のうち,klis と mast のルーツが ulis にあるのに対し,coins のルーツは情報科学類にあります。このことは2011年に設置された筑波大独自の教員組織,「系」を見ても明らかです。klis の先生方が「図書館情報メディア系」(slis。先述した図書館情報専門学群の略称をそのまま用いていると思われる)に属するのに対し,coins の先生方は「システム情報系」(eis - "Engineering, Information and Systems")に属しているのです。ちなみに mast の先生方の中には,slis に属している方と eis に所属している方の両方がいらっしゃいます。

・そんなわけで,情報学群というくくりで扱われることの多い coins と klis・mast ですが,実はその沿革や組織は大きく異なるのです。よく coins の拠点が春日エリアにあると勘違いしている人を見かけますが,coins の本拠地は3学です。だって図書館情報メディア系じゃないからね …… といった感じで,ここで上記のツクバクロニムにつながるわけです。

・ちなみに,「頭字語をでっちあげているはずなのに,元となる文に省略形であるはずの "coins" が含まれているのは反則ではないのか」というご意見があるかと思いますが,このような「正式名称の中に自分自身が含まれている頭字語」には, 再帰的頭字語 という立派な名称が存在します。そして再帰的頭字語は,ほかならぬ情報科学分野においてよく用いられているのです(オペレーティングシステムの GNU - "GNU's  Not  Unix" や,データ形式の1種である YAML - "YAML  Ain't a  Markup  Language" など)。情報科学の要素をここで回収しているわけですね。今回作成した中では,最も気に入っているツクバクロニムです。


 いかがだったでしょうか。学類の略称を広めたい,という考えを出発点として始めたツクバクロニムですが,実際にやってみると想像以上に夢中になってしまいました。めちゃくちゃ面白いうえに,対象の学類について深く知るきっかけにもなるので,ツクバクロニムという手法はかなり「有り」だと思います。

 ここまで読んでくださった皆様,是非ともご自分が所属していたり,興味があったりする学類のバクロニムを作ってみてください。いつの日か,学類の略称のリストをツクバクロニムで埋め尽くしましょう!

 それでは,またいつか。

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