NFTの本質的な話ができるタイミングが到来しました。
「NFTは終わった」と言う人がまわりに増えてきました。きっと平均価格の推移だけを見て、ただの投機ブームだったと結論づけているのでしょう。
そういう人は、「次は◯◯◯が儲かるらしい」と投機となる対象を乗り換えていくだけです。「ミームコイン(Memecoin)」と呼ばれる”流行りだけ”で価格が乱高下する仮想通貨がありますが、これが1つのわかりやすい例です。
転売ヤーは、トレーディングカード・スニーカー・ウィスキー・高級ブランド品など「安く仕入れて」「高く売る」ことで、利ざやが得られればモノは何でもいい。最近ではSNSの普及により「ミーム株(Meme stock)」という現象が株式市場で起こるぐらい、投機の対象は広がっています。
2021年に「NFT」はその投機の対象となり、一時的なピークを迎えたに過ぎません。投機が好きなデイトレーダーや転売ヤーは去りました。
ようやく、NFTの本質的な話ができるタイミングが到来しました。
私は、2022年1月から始めた「CNP(シーエヌピー:CryptoNinja Partners)」というNFTプロジェクトのファウンダー(創業者)です。
この3年弱でNFTプロジェクトを運営してきた経験から、「NFTこそ未来である」という話をしたいと思います。
①Token:「プラットフォーム」から「オーナーシップ」へ
インターネットは、あらゆるものを便利にしました。
ネットで注文すれば、何でも手に入れることができます。友だちと時間を気にせず話せますし、動画を好きなだけ見たり、ゲームを好きなだけプレイできます。
音楽はストリーミングサービスのサブスクでいつでも聴けて、本は電子書籍でいつでもどこでもスマートフォンがあれば読むことができるようになりました。
一方で、人間にとって大事なものが失われました。たとえば、CDや本を買わなくなったことで失われたものはないでしょうか?
自分の部屋に、大好きなアーティストのCDや、お気に入りのマンガが並んでいることで得られる満足感。友だちが部屋に遊びに来たときに、「これ私も好き」と言われたときの高揚感。
満足感や高揚感は、物理的に存在するCDや本を「所有する(Ownership:オーナーシップ)」ことで得られる効用です。
私たちは、音楽や本を聴いたり読んだりするサービスをインターネットの「プラットフォーム(Platform)」を通じて、デジタル上で便利に利用するに過ぎません。たしかに、お気に入りの楽曲リストやライセンスを購入した電子書籍の表紙はスクリーンに並びますが、それらはコンテンツへアクセスしやすくするための便利なショートカットに過ぎません。
こうした時代の変化に、いちばん敏感なのは若い世代です。わざわざアナログのレコードや紙の雑誌を買う人が増えています。きっと物理的なものを所有することで得られる満足感や高揚感に気づいたからでしょう。私たちは、コンテンツを消費する便利さ、シェアリングエコノミーの利便性だけにお金を払っているわけではありません。
こうした昔に回帰するような消費行動は、デジタルのプラットフォームの便利さと引き換えに失ったオーナーシップへの揺り戻しの動きです。
この大局的な流れのなかにWeb3はあります。X as a serviceで利用するプラットフォームは、Web2.0と呼ばれた2000年代中頃のトレンドの中にありました。2010年代中頃から広がったWeb3は、プラットフォーム化するビック・テックに対抗するものとして生まれた流れです。
ブロックチェーン技術を活用した「トークン(Token)」はデジタル上でオーナーシップを実感できる。トークンはそれぞれのユーザーのウォレットに保管され、単独のプラットフォームに依存しません。トークンが広くユーザーに求められるようになるのは、時間の問題でしょう。
分散型ストレージが普及し、トークンを保管するウォレットが扱いやすくなる技術が登場し、本人認証がスムーズにできる環境が整備され、ユーザーがそれらに適応(Adaption)するのに少しだけ時間が必要なだけです。
②IP:「NFTアート」から「NFT IP」へ
世界で愛されるIP(Intellectual Property rights:知的財産権)は、新しいメディアが誕生するごとに登場してきました。
ディズニーのミッキーマウスは、1928年のアニメーション映画『蒸気船ウィリー』の成功により、世界中で愛されるキャラクターになりました。日本のハローキティはマスプロダクト化した子ども向け玩具、ドラゴンボールは世界で最も売れたマンガ雑誌『週刊少年ジャンプ』、マリオは任天堂のゲーム、ポケットモンスターは携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」から生まれました。
YouTubeの動画で人気になったポピー プレイタイムやザ・アメイジング・デジタル・サーカス、メタバースのRobloxで人気のホラーゲーム「レインボーフレンズ」はネクストブレイクの位置にあるのでしょう。
映画、玩具、雑誌、ゲーム、インターネット──新時代のメディアが登場するときに、真っ先に創作にチャレンジするのがクリエイターです。新たなメディアの広がりと共に、クリエイターが生み出したIPやキャラクターが人気を得てきました。
NFT(Non-Fungible Token:代替不可能なトークン)は新たなメディアです。デジタル上にもかかわらず、唯一無二であることを証明できるブロックチェーン技術は、メディアの革新そのものです。それにもかかわらず、いまだIPと呼べるものが生まれていないのはなぜでしょうか?
私は「NFTアート」として、NFTがアートとして捉えられたことに問題があると考えています。
一般的にアートの作品は、アーティストが創った一点ものとして「希少性(Scarcity)」があるから価値が生じます。フィンセント・ファン・ゴッホの絵画「ひまわり」の価格が高騰したのも、彼の死後のことです。
NFTもジェネラティブアートを原型としてそれぞれに特徴(Traits)を組み合わせ、1万点など多数にもかかわらず、それぞれが1点ものとして発行されるNFTアートとして世界に流通しました。
NFTがアートとして流通したことが間違いだったのではないか?
実は、「希少性があるから、価値がある」という価値観は、西洋美術のマーケットに由来するものです。
東洋美術、日本のアートの歴史では異なる考え方がされていたものがあります。江戸時代の「浮世絵」です。浮世絵は版画として大量生産され、庶民に人気のアートとなりました。日本には、複製されるから価値を持つアートの歴史的なスタイルがあるのです。
CNPはNFTアートの前例にならって2万2222体を発行してスタートしました。しかし、今やその価値は発行点数に希少性があるからではない。
「NFTの本質は、IPにある」と、CNPのファウンダーである私は考えています。だからこそ、NFTを起点として、取り組みの幅を広げてきました。
IPは、たとえるなら金箔です。かつて「黄金の国ジパング」と呼ばれた日本には、漆器から仏壇まで、さまざまなモノを彩ってきた石川県金沢の伝統技術があります。
IPも同じです。誕生したメディアは違いますし、金(ゴールド)のように誰にでも共通の価値の尺度があるわけではありませんが、それぞれのIPにファンがいて、さまざまな色に輝く箔があります。今やグローバル化する流通網の中で、日用品として世界のすみずみまで行き渡るようになりました。
アートとIPの価値観は異なります。アートをIPにしようと短絡的に考えた結果、あとづけでゲームをつくってみたり、アニメをつくってみたり、一発逆転ホームランを狙うような試みになってしまっているのではないでしょうか。IPにとって重要なのは取り組みの幅であり、ファンとの接点の拡大です。
CNPは、「NFT IP」を「推す」だけではなく「担ぐ」ことで成り立つコミュニティです。
ただキャラクターが好きなので「推す」という人もいれば、二次創作で絵を描いたり関連動画をつくって配信したりすることで、CNPをお祭りの神輿のように「担ぐ」こともできます。その活動に義務はなく、それぞれのホルダーに委ねられているというグラデーションがあります。
また、ホルダーは個人に限らず、法人もホルダーとして参加しています。推したい、担ぎたい、という主体が個人だろうが法人だろうが、みんなでお祭りのように騒げるのがCNPの魅力です。
さらにいえば、CNPそれ自体も、「CryptoNinja(クリプトニンジャ)」を応援する、担ぐために生まれたIP、キャラクター群であり、CNPの存在自体もCryptoNinjaの二次創作であるという、非常にユニークな立ち位置を持っています。
CNPのホルダーはファンであり、パートナー(Partners)=仲間である。私はこの「二次創作から生まれたIP」という、一見すると矛盾するポジショニングに、CNPのアイデンティティが詰まっていると考えています。
もし、NFTが高値になったから売り抜けたい、という人がいれば、どんどん抜ければいい。CNPの3年弱の短い歴史のなかでも、利益だけが目的の転売ヤーは次々と売り抜けました。これは仲間になることに承認を必要としない(パーミッションレス)ブロックチェーンの良さだと、私は思っています。
儲けることだけに執着する価値観の人たちが去ることで、IPの可能性を信じる残ったコミュニティの人たちの結束はより強固になります。残ったホルダーは、CNPを「推す」「担ぐ」ことを現在進行形で楽しみながら、IPとして世界的に有名になる可能性に賭けてくれている人たちです。ただのファンではなく、パートナーです。
これまでのNFTが投機の対象となるアートとして流通したことがそもそもの間違いであり、これからIPとしてNFTが流通することで、世界にファンが広がるはず。CNPが「NFT IP」として日本で生まれたことに意味がある、と私は信じています。
③Community:「インディビジュアル(個)」から「コミュニティ(集)」へ
もし、CNPのNFTの価値が希少性にあるのならば、新たに始めたトレーディングカードやトークンプラットフォーム「FiNANCiE」で発行したトークンに、どうして価値が生まれるでしょうか。
CNPの価値の源泉は、オーナーシップを持つホルダー(所有者)の「コミュニティ(Community)」にあり、Token(オーナーシップ)・IP(知的財産権)・Community(コミュニティ)の相互作用の中にあります。
いわゆるファンダム(Fandom)がなぜ今になって注目を集めるようになったのか。
エンターテインメント産業やビジネスパーソンの間では、ファンが全国を飛び回ってイベントにお金を費やし、大量のファングッズを買うような、「推し」活動の購買力ばかりに注目が集まります。
しかし、私はもっと深いところにファンダムが流行る理由があるのではないかと考えています。
前述の通り、インターネットのプラットフォームが登場したことにより、あらゆる利便性が上がりました。その利便性をビジネスを提供する側から見た経済用語に置き換えると、リスティングやマッチングのアルゴリズムなどの役割により「取引費用(Transaction Cost)」や「機会費用(Opportunity Cost)」が下がったということです。
ところが、世界でビック・テックと呼ばれるプラットフォームに取引が集中することにより、別の問題が起こってきました。
本来は取引費用を下げるために生まれたユーザーレビューの評価システム、いわゆる「群衆の叡智(The Wisdom of Crowds)」がニセのレビュー業者によって毀損されることが頻発するようになりました。さらに生成AIの登場でかんたんに精巧なフェイクがつくれるようになり、ユーザーレビューだけではなくSNSなどインターネット全体にまで広がり、その流れは加速しています。
つまり、ビックテックのプラットフォームの登場でせっかく下がったのに、レビューなどの重要な情報が1箇所に集中することで、逆に「取引費用」が上がってしまったのです。
この再び上昇した「取引費用」を下げる方法を提案しているのがWeb3です。
明示的な契約(コントラクト)で制御(コントロール)しようという発想が、ブロックチェーン技術の「スマート・コントラクト(Smart contract)」と呼ばれる方法です。社会の構成要素を「インディビジュアル(個)」と捉える、欧米の個人主義カルチャーに由来するアプローチだと思います。
一方で、ブロックチェーン技術のトークンがもたらす別の効用を用いて、「取引費用」を下げる方法があるのではないか?
日本には、江戸時代に「株仲間」として集団を形成することで、取引費用を下げていた歴史があります。同じように、NFTを持つことで「コミュニティ(集)」を形成し、アジア的な集団主義カルチャーでアプローチする1つの試みがCNPです。
「インディビジュアル(個)」のアプローチは、どこまでいっても「自己責任(Self-responsibility)」の世界であり、最終的には監査(audit)する別の存在(Entity)に依存せざるを得ません。
「コミュニティ(集)」のアプローチは、ムラ社会化する危険性をはらみながらもブロックチェーンで取引の透明性を保つことで、お互いの存在を認め合いながらトークン価値向上の活動に参加することができる。
いわば「自己実現(Self-actualization)」によるウェルビーイングな世界が広がるはずだ、と私は考えています。
まとめ:「地方創生」から「日本創生」へ
「NFTは終わった」と言われますが、「CNPは始まった」ばかりです。日本から生まれたNFTプロジェクトだからこそ、グローバルのIPとして広がる世界を夢見て、チャレンジする意義が十分にあると考えています。
忍者という日本的なモチーフを題材として、CNPがデジタル城下町プロジェクトに真剣に取り組むのも、ローカルに埋もれた魅力を発掘する「地方創生」が、NFTとして世界市場につながることで「日本創生」につながるはずだ、と考えているからです。
日本政府の「新たなクールジャパン戦略」には、インバウンドにおける体験価値の重要性が謳われており、デジタル城下町プロジェクトでの実践と同じベクトルを目指しているように私には思えます。
日本生まれのIPが世界を席巻し、インターネットとAI・ブロックチェーンが混じり合う中でCommunityの価値が見直されています。2030年には、Tokenのオーナーシップが当たり前の時代になります。
ICT(IP・Community・Token)こそ、CNP経済圏における3つのエンジン。
そして、NFTこそ未来です。日本のNFTプロジェクトのみなさま、いっしょに頑張りましょう!
これからもCNPを応援してください。どうぞよろしくお願いいたします。