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松屋銀座「世界の中古カメラ市」が楽しすぎた件

 ある人は言う、「東京なんて空気は汚いし、人でゴミゴミして、とても住む所ではないよ。住むなら田舎の方が良いよ。」と。それは一理あるのかも知れない。ただ、東京に住んでいて良い面もあるはずだ。例えば、イベントの多さは東京がダントツだ。これはカメラ関連でも同様で、毎年2月にパシフィコ横浜で開催されるカメラの展示会「CP+」や、同じく2月に松屋銀座で開催される「世界の中古カメラ市」は、東京に住むカメラ好き・写真好きの諸氏なら毎年の楽しみにしているのではないだろうか。

 さて、今回、その一つである第43回「世界の中古カメラ市」(開催期間:2020/10/14(水)-20(火))に友人と参加してきた(毎年2月にやっているのに、なぜ10月にも実施したかは知らないが、この難しいご時世に開催を決断した主催者の方に感謝したい。)。このイベントは、全国のカメラ屋が松屋銀座の展示場に集まり、オールドカメラ・オールドレンズを中心に即売会を実施するのだ(現行品もある)。オールドカメラ・オールドレンズはその名の通り古いものであって一つ一つ状態が異なる為、良い物を買おうとしたら自分の目で見て銅鏡やレンズの中をみる必要がある。そのため、平時であれば購入希望者が東京、神奈川に散らばった様々なカメラ屋を訪問する必要があるのだが、このイベントではカメラ屋が集まっているので、購入希望者は僅か5m歩くだけで隣の店を訪れることができるのである。非常に楽だ。そして、このイベントの最大の魅力は、通常であれば入手できないような珍品・希少品が発売されるということだ。

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このご時世と言うこともあり、至る所に、消毒液が置いてあった。

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すっかりお馴染みとなった言葉「ソーシャルディスタンス」

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 さて筆者は今回、状態の良いThambar-L 90mm F/2.2が有ればいいなと思い参加した。ご存知の諸氏が多いと思うが、このThambar-L 90mm F/2.2はバルナックライカ時代である1930年代に発売された典型的なクセ玉レンズであり、極度なソフトフォーカスが特徴なのだ。また、本レンズは、日本で代表する写真家"木村伊兵衛"が愛用したレンズとしても有名であり、彼の代表作の一つである「那覇の芸者」はこのレンズで撮られたものだ。

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(引用元:タンバールへのオマージュ「花影」S1 60mm f2.2)

 早速探してみたところ、2個ほどThambar-L 90mm F/2.2を見つけた。ただ、いずれも銅鏡のコンディションが思ったとおりでは無かったので、残念だが今回は購入を見送ることにした。ただ、お店のご厚意により写りを確認させてもらうことができたので、筆者と同様に購入を検討しているであろう読者諸氏に共有したいと思う(撮って出しJPEGから露光量を1.3上げている)。写りが気に入った諸氏は、「世界の中古カメラ市」は10/20(火)まで開催されているので、ぜひ購入してはいかがだろうか(約68万円)。

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SL2+Thambar-L 90mm F/2.2(露光量+1.3処理済)

 一通り見終わり20時近くになり、夕食のため会場から帰ろうとすると、ライカ仲間であるA氏、T氏に偶然出会った。示し合わせなくてもライカ仲間に会えるのも、このイベントの魅力の一つだ。あいにくA氏は事情により家に帰るとのことだったので、T氏、筆者と一緒に会場に来たK氏、筆者の三人で銀座で食事に行くことにした。グーグルマップで近くの飲食店を調べたところ、いつかは行きたいと思っていたラーメン屋「蝋燭屋」が道路を挟んで隣にあることが分かった。ただ、店を覗いてみると、カウンター席であったため入店を諦め、隣にあった銀座の有名洋食屋「煉瓦亭」(食べログ★3.8)に入った。

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 日頃から仲が良く、さらにはカメラ・写真が好きでさらには皆ライカオーナーという共通点があれば、会話は弾むもの。各々の個性が出たライカ、乾杯のグラス、ご飯と一通り写真を撮った後は、カメラのことや夫々の近況について閉店になるまで語り合った。

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 楽しい時間はあっと言う間に過ぎ家路に帰ろうと店の外に出ると、店主がお店の外まで来てくれた。何かと思えば、店主もフィルム時代からのライカオーナーであり、その歴は中学の写真部から数えて45年という大先輩というのだ。我々が机に並べたライカを見て、興味をもってもらえたらしい。一見だったにも関わらず、同じライカ仲間としてわざわざ話をしに外まで来てくれたというのだ。

 その大先輩は色々と面白い話をしてくれた。特に、面白かったのはNOCTILUXについての話だ。なんでも、現在では400万円近いNOCTILUX-M 50mm F/1.2(所謂、NOCTILUX 1st)だが、その先輩が購入した当時(2ndが出た直後)は人気がなかったため20万円程度で買ったと言うのだ。まさにその時代を生きた人だからこそ話せる、興味深い話ではないか。他にも有名な軍用レンズも使っていたと言うことも話してくれたが、残念ながら筆者に知識がなかったためその凄さを理解できなかった。ただ、オールドレンズに造詣の深いT氏が驚いていたので、きっと凄いことなのだろう。

 まだまだ話し足りなかったが、時間が遅かったこともあり、区切りのいいところでその先輩とお別れをした。何気なく訪れたお店で、こんな素敵な出会いがあるとは思わなかった。ライカが紡いでくれた素敵な縁である。この縁を大切にして、ぜひまた煉瓦亭に伺おうと思う。

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 それでは、良き写活と良きnoteライフを。



日本にはチップ文化が無いのでサポートするって習慣は馴染まないけど、そんな中サポートしてくれる人は素敵だと思います😭