ときのそら『My Loving』感想 ~そらともの好きを詰め込んだ何か~
はじめに
ときのそらミニアルバム『My Loving』を聴いた感想+一部解釈です。1曲ずつ書いていたら長くなってしまったので、noteへ初投稿。メモの延長に過ぎない冗長な乱文ですがご容赦ください。
1.Equation of Love
題名の通り、数学になぞらえて揺れ動く恋心を描いたキャッチーな曲。
前のめりなほどの「好き」が曲全体に込められていて、「私の『好き』がいっぱい詰まった宝物」という本アルバムのキャッチフレーズを体現するようだ。理知的なようでいて感情に振り回される、眼鏡をかけたそらちゃんの姿が想像される。
「あなたのせいだからね」では歌い方の可愛さにやられ、「逃せない 逃さない」ではその力強さに否応なく盛り上げられる。最後の最後で証明を相手に押し付けてしまいたくなっているところにも、また愛らしい乙女心を感じてしまう。
2.Wonderland
アルバムのリード曲として公開された、そらちゃんもお気に入りの一曲。
楽しさに跳ねるような歌声に、鐘の音や流れ星の音など色んな音が賑やかで、歌うようなベースラインも合わさって、本当に聴いていて楽しくなる。
ふとした時に聴くことで元気をインストールできる、言わば聴くタイプのくもはれ。「駆け抜けて」や3拍子の部分などリズムに合わせて盛り上がれるところも多く、次にライブで披露されるときには是非とも名古屋で叶わなかった「ジャーンプ!」と合わせて楽しみたい。
・「驚いて 笑って 泣いて 聴いて」
初めて聴いた時から不思議としっくりきたのが印象的だった「聴いて」。この一言には、そらちゃんがたくさんの声――配信中のコメントやTwitterで寄せられた声、くもはれ、お手紙など――を聴き続けてきたこと、そしてそれに答えて、応えてきたこれまでの道のりが込められているのだと解釈している。
・「明日はもっと世界は輝くよ、キミ次第さ」
「姿勢や行動次第で見える世界が変わる」ということを伝えるのは得てして難しいが、そらちゃんが歩んできた道のりとその心持ちに触れれば触れるほど、この部分に前向きな説得力を感じるのではないかと思う。MVのワンシーンにもある、煌めきを空に放ってできたイルミネーション、夢色の景色を見せながら、「ほらキミも!」と手を伸ばしてくれている。そんなイメージは、まさしくアイドルという在り方そのものだと思えてならない。
3.サヨナラブロッサム
春、桜、別れと卒業ソングにぴったりな、本格的なバラード曲。しっとりとしたピアノにそらちゃんの切なげで優しい声が映える。「ときのそら」という文脈を含まない(と思われる)曲であり、だからこそその表現力に注目して聴きたい。特に「大丈夫」と言い聞かせた直後、抑えきれない感情が一気に溢れるところで、悲痛な声にこちらまで胸を締め付けられる。桜並木、舞い散る花びらとシチュエーションを想像しながら聴いていると泣きそうになってしまう。
余談だが、良く見知った2人の別れを描いた歌詞から、勝手にえーちゃんとの別れを想像してしまったのは自分だけではないはず。
4.刹那ティックコード
SorAZのユニット名でAZKiちと歌われる初の公式オリジナルコラボ曲。それだけでも鳥肌ものだが、聴いてみてそのかっこよさに一目惚れ(一聴惚れ)した。突き抜けるように強く真っ直ぐなそらちゃんの声と、溢れんばかりの感情を纏って放たれるAZKiちの声。声質の異なる2人が重なる部分は、お互いがお互いを高め合うようで耳心地良く、いつまでも聴いていられる。ラスサビでは届け!!と言わんばかりに一段と熱を増し、その盛り上がりのまま締める余韻が最高だ。MVもこだわりに満ちていて、込められたものを確かめるように何度でも見たくなる。
そして「刹那ティックコード」を含めた意味深な歌詞もまた引き込まれる理由だろう。その意味を考えないのはもったいなく思われ、自分なりに解釈などしてみたので、以下要所だけ紹介させて欲しい。苦手でない方、余裕のある方はお付き合いいただければ幸いに思う。
・サビ前半
まず「世界軸」という言葉。自分はこの曲で初めて知ったのだが、「古代宇宙論における、大地と天の領域間の移動手段・通信手段」を意味する言葉らしい。これを踏まえると、「空に飛ば」した想いや「キミに届くように」と歌った歌が、輝きとして「世界軸を超えてく」わけだから、「大地の領域」=「彼女らの世界(以下「Vの世界」とする)」から「天の領域」=「キミ(=リスナー)のいる現実世界」へ歌・想いを届けるという構図が見えてくる。
・サビ後半
そして「触れ合う音が光に」なり「降り注ぐ」。Vの世界からの歌・想いと現実世界からの声との触れ合いにより、(「降り注ぐ」であるからして)Vの世界が照らされ色づいてゆく。「キミと描いた空間」も同様、双方向性により色づいたVの世界を表している。これらは『Without U』にある「キミがいないと私は私でいられない」「キミの声を聞かせて」などに通ずるものだと思っている。
・「キミと描く音が飛び立つ 刹那ティックコードまで」
まず「キミと描く音」は「触れ合った想いによってさらに生じた想い」を表すのだと思う。この歌において「音」は「想い」に変換できるからだ。
そして曲名にもなっている「刹那ティックコード」という言葉。飛躍かもしれないが、この不思議な言葉から連想したものに「タイムシンクロナス方式パスワード」がある。これは簡単に言えば、同期した時刻を基に生成された同じ数字列を利用する方式のパスワードだ。その性質を曲に寄せると「電子の海を介して繋がるために、共有した今という瞬間に生まれる、互いが共通して持ち互いを識別できるもの」と言い換えられる。
「想いが刹那ティックコードまで飛び立つ」という文脈から、それが指すのは互いが抱く「想い」であると想像する。つまり「刹那ティックコード」は「共有した今という瞬間に生まれた互いの想い」であり、それを目掛けてさらなる想いを届ける様が「キミと描く音が飛び立つ 刹那ティックコードまで」の表すところなのではないだろうか。
色々な解釈があると思うし(刹那ティックコードの意味については特に)、細かい部分は詰められていないので、ぜひ誰かと語り合ってみたい。なお自分はまだきちんと開拓者をやれていないのだが、それでもこの曲にはそらちゃんだけでなくAZKiちの想いもふんだんに込められているように感じている。考察を経て、AZKiちの文脈にももっと触れてみたくなった。
5.フレーフレーLOVE
Dream!で初披露された、夢を追って頑張る人へ向けた応援歌。近くに寄り添い頑張りを認める形で応援してくれる、聴くタイプのくもはれその2。こちらは仕事や作業終わりに特に効く(当社比)。
順調なだけではない道のりと内に秘めた想いを思わせる、切なくも力強いイントロがまず好みで、そこから続く弾けるような曲調で一気に盛り上がれる。曲の終わりはイントロと同じフレーズのはずなのに、よしがんばろうと気持ちを新たにできる前向きさを含んでいるように感じられる。
この曲の好きな所のひとつは、「フレーフレーフレフレー!」のコールがお互いを応援し合う形に見えることだ。そらちゃん自身が様々な夢を叶えつつも、大きなひとつの夢に向かって頑張り続けているからこそ、それは成り立っている。お互いに想いを伝え合うこの暖かい双方向性が好きで、これからもライブという直接声が届く舞台でこそ歌って欲しく思う。「他の誰でもない 君らしさが大好き」という言葉もまた、かつて個性がないことに思い悩んでいた彼女にこそ伝えたい。
6.ゆっくり走れば風は吹く
紛うことなき「ときのそら」の曲。『Wonderland』がバーチャルアイドルとしての側面を主とした曲だとすれば、この曲は「ときのそら」個人としての活動の道のりを描いた曲なのだと思う。
全体的に明るい曲調に反して、過去を振り返る部分ではポジティブでない言葉も多い。それらを穏やかに軽やかに歌い上げ、これまでとこの先を見据えて「大丈夫」と締め括る。たくさん悩みながら、迷いながらも確かに進んできたそらちゃんが示す穏やかな希望は、すっと心に馴染んで暖かく前向きな気持ちにさせてくれる。転機となった各場面、真っ直ぐなだけではない道のりを、前向きなだけではない想いを知るそらともほど、刺さるものがあるに違いない。
そして作詞作曲の瀬名航さんにより事前に匂わされていた間奏の仕掛け。これはずるい、本当に。たくさんのオリジナル曲ができた。ワンマンライブもできて、家族のような仲間とのライブもできて。大きな夢に向かって少しずつ確かに近付いていて、今も走り続けている。初めて聴いた時、その全てへの想いが一気に襲ってきて、高密度の感情が涙腺と共に爆発してしまった。これのお陰で気軽にリピートできないのが唯一悩みどころだ。
過去を踏まえ未来へと進んでいる今のそらちゃんの姿勢・想いを描いたすごい曲だし、それらを描くことが他の誰かへの希望に繋がるそらちゃんもすごい。すごい。
おわりに
やってみて分かる言語化の難しさ。語彙力と引き出しのなさが憎い…!
拙い文章ですが、自分の中で感想を反芻することができたので書けただけでも満足ですし、誰かの「わかる」を少しでも引き出せたならもっと嬉しいです。ここまでお読みいただきありがとうございました。
最後にそらちゃんをはじめ、製作に携わってくださった方々に感謝を。
『My Loving』、どの曲も何度でも聴きたくなる大好きな一枚です。
『Dreaming!』に続く宝物をまたひとつ、ありがとうございます!