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はじめてのGTD ストレスフリーの整理術 第1部 GTDの基本

本書を読む目的と概要

目的

 前職ではテレワークがメインで、次は出社がメインとなる。仕事の仕方がガラッと変わるため、今までの取り組み方では上手くいかないかもしれない。
 そこで、生産性を高くするための方法の例として、GTDに対する知識を身につけ、実践してみて肌に合うかを確かめるために、本書を読むこととする。

概要

 第1章ではGTDの基本として、生産性の低下やストレスが溜まる原因と、それに対してなぜGTDが有効なのかを解説している。
 第2章では、日々発生するタスクを効果的に管理する手法と実践方法を解説している。全体を俯瞰してみる「水平的な視点」がテーマとなっている。
 第3章では、管理されたタスクを創造的に進めるテクニックと手法を解説している。第2章に対して、こちらは「垂直的な視点」がテーマとなっている。


第1章 仕事が変わった。さて、あなたの仕事のやり方は?

 GTD(Getting Things Done)とは、山のように積まれたやるべきことを、頭をスッキリさせ、リラックスしながら高い生産性を発揮してこなしていくためのタスク管理術である。著者が提唱するGTDの3つの柱は以下。

  • ”やるべき事”や”気になること”の全てを把握し、頭の中から一旦吐き出して視覚化する

  • 人生において常に降りかかってくるあらゆる"インプット"にその場で対処できるようにする

  • そのようにして導かれたさまざまな決断の全てを、人生における異なる視点レベルから評価しつつ、いついかなる時でも正しい判断を下せるようにする

仕事は増える一方だが…

 現在の先進国では、あらゆる物事がIT化され、ビッグデータの活用とAIアシストによってより快適な生活を送れるようになった。一方で、多くのビジネスパーソンが、「時間が足りない」という感覚に悩まされるという矛盾を抱えている。
 選択肢の多さが豊かさのパラメータとされつつも、日々決断を下すことが心理的負担となっている。書店で時間術や生産性向上術の本を見ない日はなく、誰もが効率的な解決策を求めている。

仕事と何が変わったか?

  • 第一次産業革命→第四次産業革命で、仕事の内容がどんどん複雑化していった

  • 「終わり」が見えなくなった

  • スマートフォンとテレワークの普及により、仕事とプライベートの境界が、時間的にも空間的にも曖昧になった

  • 情報過多により、判断を下すのが難しくなった

 複雑化と多様化が進む現代において、脳死状態で利用するカレンダーやTo Doリストでは、タスクの管理も消費も追いつかなくなっている。

「やるべきこと」とうまく付き合うために

 「やるべきこと」をうまく処理できていないことにストレスを感じているビジネスパーソンが多くいる、と著者は長年のキャリアから感じている。ここでいう「やるべきこと」は、「世界をより良くするイノベーションを生み出す」という壮大なものから、「メールを返信する」「調味料を買い足す」「溜まっているゴミを出す」と言った瑣末なものまでの全てを含む。

 これらとうまく付き合っていくには、まず我々が意識している、していないに関わらず、全ての「やるべきこと」を把握し、一箇所に取り込んでいく必要がある。

この手法の効果を体感してみよう
 
次のステップを踏んで、やるべきことに実際に取り組むことで得られる効果を体感してみよう。

  1. もっとも気になっている「やるべきこと」を思い出し、ピックアップする

  2. ピックアップした問題ないし状況が、どんな結果になったらベストかを定義する

  3. 定義した結果へ一歩近づくための、次にとるべき具体的な行動を書き出す

 この「システマチックな思考」により、自分が世界とどのように関わるべきかが分かる。今の世の中、誰もが十分すぎるほどに物事について考えていると感じているが、その思考は問題や状況にばかり向けられて、行動にまで考えが及んでいない。「望んでいる結果」と「具体的な行動」に対する思考は、意識的に行わないとできないことである。

知識労働社会で大切なこと
 「システマチックな思考」は、普段使わないようなエネルギーを消費するため、ほとんどの人が後回しにしてしまう。ドリー・クラーク著「The Long Game」の中でも、多くのビジネスパーソンがタスクを次々に設定して自らを忙しくしているのは、本当に重要なことを考えないで済むようにするためである、と書かれている。人間は深く考えることを、無意識のうちに避けているようだ。

 今までは、結果とそのための行動がハッキリしている仕事が多くあった。しかし現代のより複雑になっていく知識労働では、自らが率先して意識的な思考をしなくてはならず、そうしないとストレスは溜まっていく一方だ。ストレスを解消するための一番の方法は、「望んでいる結果」と「次にとるべき行動」を意識的かつシステマチックに思考することなのだ。

なぜそれが気になるのか?
 
頭の中にあることが気になってしまうのは、現状を変えたいと思いつつも次のような状態になっている為である。

  • 望んでいる結果がはっきりしていない

  • 次にとるべき物理的な行動が定義されていない

  • 望んでいる結果や次にとるべき行動を適切なタイミングで知らせてくれるリマインダーが設定されていない

 このような状態によりストレスが発生する原因は、心理学でいうところの「ツァイガルニク効果」によるものかもしれない。ツァイガルニク効果は未達成のタスクに対してモチベーションを生むというプラスな効果があるものの、完了しないと脳が忘れてくれないため、タスクが溜まると脳のパフォーマンスがさがり、ストレスが発生してしまう。

第2章 生活をコントロールするGTD実践のための5つのステップ

 本章で解説されているステップを進める上で重要なのは、個別ではなく統合的に実践する必要がある、という点である。ここで意味することは、全てのステップを一連の流れで一気に行わなくてはならないということではなく、全てのステップを踏み、どれか一つでも飛ばしてはならない、ということだ。GTDの5つのステップは以下である。

  1. 気になるすべてのことを「把握する」

  2. それぞれが何を意味するか、どのような対応をするべきかを「見極める」

  3. 見極めることで明らかになった内容を「整理する」

  4. 行動の選択肢を「更新する」

  5. 何をするべきを「選択する」

 原理は明確で、誰もが仕事でも行っているようなステップであるが、著者視点だと、かなりいい加減に行われているらしい。我々に必要なのは、全てのレベルを統合的に高いレベルで意識的に行うことである。

「把握する」

「気になること」のすべてを集める
漏れなく全ての「気になること」を把握するには、我々がやるべきだと思っている大小様々なものを集める必要がある。「何かをしなくてはいけない」と思った瞬間にそれは「気になること」になり、長期的に取り組む必要があることも、デイリーで発生することも関係ない。

 「気になること」をうまく管理していくためには、それらを一時的に保管するための受け皿が必要になる。GTDではこの受け皿を「インボックス」と呼び、デジタルやアナログのツールを使う。インボックスは定期的に空にする必要がある。ツールには以下のようなものがある。

  • 書類受け

  • 手帳やノート

  • 電子機器のメモ帳やボイスメモ

  • メールやテキストメッセージ

「把握する」ステップを上手くやるコツ
 上記の通り、インボックスは特別なものではなく、誰もが持っている身近なものである。にもかかわらずうまく使えていない、ほとんど活用できていないというようなケースが大半だ。「把握する」ステップは、インボックスは用意しただけでは上手くこなせないため、以下の3つのポイントが重要となる。

  • すべてを頭の外に追い出す
    頭の中だけで把握できる事には、数的にも精度的にも限界がある。「把握する」ためのツールを生活の一部に取り入れ、自分にとって意味がありそうなことをすぐにアウトプットできるように肌身離さず持っておく。「気になること」を思い出させてくれる「トリガーリスト」も役に立つだろう。

  • インボックスの数は最小限に留める
    インボックスの数が増えると、それを把握、管理するために脳のリソースが割かれてしまい、本末転倒になってしまう。

  • インボックスは定期的に空にする
    インボックスに残しておいたり、戻したりすることは厳禁。

「見極める」

 たいていの人が整理術に失敗するのは、会議等のメモや思いついたアイデアのそれぞれについて、「考えなければならないことはなんだろう?」という質問が出来ていないから。結果と達成するための行動も一緒に定義する必要がある。この手順の全体像である「見極める」と「整理する」のうち、前者のステップは以下。

  1. これは何か?
    インボックスに集まった「気になること」の、それぞれの意味するところを見極め、それについて何をしなければならないかを判断する。

  2. 行動を起こす必要があるか?
    答えはイエス/ノーのいずれかである。
    イエスについては次の二つについて判断しなくてはならない。
    ① 求めている結果は何か?
      GTDでは「求めている結果」をプロジェクトと呼ぶ
    ② 次にとるべき具体的な行動は何か?
      目に見える具体的な行動で定義する

    ノーには次の三種類がある。
    ① 現時点では無価値で、すでに役割を果たしたもの(ゴミ)
    ② 今やる必要ないが、将来的に行動する必要があるかもしれないもの(いつかやる/多分やる)
     ⇒リスト化しておくとよい
    ③ 後で必要になるかもしれない情報(資料)

  3. 今すぐやる/誰かに任せる/後でやる
    今すぐやる:2分以内で出来る事なら今すぐに取り掛かる
    誰かに任せる:2分以上かかり、自分がやる必要のプロジェクトなら他の人に任せる
    後でやる:2分以上かかり、自分がやるべきことなら、「次にとるべき行動」リストに加え、適切なタイミングで見直す

「整理する」

 「見極める」で行動を起こす必要があるものについては、以下のカテゴリーに分類し、何らかのリストやファイルで管理する。

  • プロジェクトリスト
    1年以内に達成可能で、「望んでいる結果」に達するまでにいくつかの行動ステップが必要なものをプロジェクトと呼ぶ。重要度や優先度は関係がない。
    プロジェクトそのものを実行することはできない。実行できるのは次にとるべき具体的な行動の一つ一つである。
    プロジェクトリストは望んでいる結果を掲げたものの集合体で、その目的は、次にとるべき行動を見渡せるようにすることである。

  • プロジェクトの参考情報
    プロジェクトの、テーマやトピックごとに整理しておきたい関連情報

  • カレンダー
    ToDoリストとしては使わず、次の三種類を記入するようにする。
    特定の時間にする行動:いわゆる「アポ」のこと
    特定の日にする行動:特定の日の中で行えばよく、時間が決まっていない行動
    特定の日に使える情報:ランチするお店の情報、家族の予定、気になるイベントなど

  • 次にとるべき行動リスト
    2分以上かかり、誰かに任せることができないと判断した行動に使う

  • 連絡待ちリスト

「更新する」

 「ミルクが切れた」等のメモは、買い物に行くときに見忘れてしまったら意味をなさない。リストを定期的に確認・更新し、起こすべきタイミングで行動できるような習慣をつけることが成功のカギを握っている。著者は週次でシステム全体の確認と、リストの更新を勧めている。

「選択する」

 これまでのステップはすべて「選択する」ためにある。正しくステップを歩めていれば、今まで何となくでしていた行動に対して、自身や根拠を持てるようになる。実際に行動を選択するにあたって役立つモデルが紹介されており、以下の3つがある。

  1. 4つの基準で現在の行動を選択する
    ・その時の状況
     場所などの外部条件に依るものかどうか
    ・使える時間
     すぐに完了するか、時間がかかるか
    ・使えるエネルギー
     頭の冴えが必要か、体力や気力は必要か
    ・優先度
     上記の条件から絞り込まれた条件から最も有益なものは何か

  2. 3つのカテゴリーから日々の仕事を評価する
    ・あらかじめ決まっている仕事
    ・予定外の仕事
    ・仕事を見極めるための仕事
     ⇒行動リストなどの整理などが該当

  3. 6つのレベルで仕事を評価する
    仕事がどのレベルにあるのかではなく、短/中/長期的な視点や行動の本質といった様々なレイヤーから総合的に仕事を評価するためのモデル
    ・レベル0:現在の行動
     ⇒今この瞬間に取り組んでいる行動
    ・レベル1:現在のプロジェクト
     ⇒現在の行動をなぜやろうと思ったのか
    ・レベル2:重点的に取り組む分野
     ⇒どんな役割や責任があるのか、またはどこに興味があるのか
    ・レベル3:1~2年後の目標
     ⇒短期的に何を達成したいのか
    ・レベル4:長期的な構想
     ⇒長期的に何を達成したいのか
    ・レベル5:人生の目的とその在り方
     ⇒自分の存在意義は何なのか、人生において何を達成したいのか

第3章 創造的にプロジェクトを進めるために プロジェクトプランニングの5つのステップ

”垂直的な視点”を取り入れる

  システム全体を定期的に見直し、更新を行うような「水平的な視点」を身に付けることができれば、ほとんどの場合うまくいく。しかし、もう一つ上のレベルでうまくこなしていきたいのであれば、「垂直的な視点」も取り入れる必要がある。この視点では、より高いレベルから段階的に「気になること」をとらえ直し、その結果を自分のシステムに組み込んで行くことになる。

ナチュラルプランニングモデル

 最も効率的かつ創造的に問題解決への計画を立てて何かを達成する、という理想的なプロセスを、我々の脳は自然と行っている。具体的には以下のステップを踏んでいる。

①目的と価値を見極める
②結果をイメージする
③ブレインストーミングをする
④思考を整理する
⑤次にとるべき行動を判断する

 このように一見すると当たり前のように思えるステップを、意識的に仕事で行えている人は少ない。脳にとってはごく”自然”なプランニングであるため、ストレスなく行えるはずである。アイデア出しやブレインストーミングから会議を始めても失敗に終わることが多いのは、不自然なプロセスを辿っているためである(そもそも、シーナ・アイエンガー著『THINK BIGGER』では、ブレインストーミングはまず一人で始めた方が効果が高いと主張されている)。

ナチュラルプランニングモデルのテクニック―5つのステップ

  1. 目的と価値を見極める
    目的の見極めには、「なぜなぜ分析」が役に立つ。「なぜ」を考えることには以下のメリットがある。
    ・成功の基準が定まる
    ・意思決定の基準が定まる
    ・必要なリソースが分かる
    ・モチベーションが上がる
    ・焦点が明らかになる
    ・選択肢の幅が広がる
    価値観の見極めには、「どのような行動が自分の価値観にそぐわないだろうか?どうすればそれを防げるだろうか?」と考えてみるのがよい。
    目的が明らかになると、行動への活力と方針が導かれ、価値観について考えると、行動の範囲と優れた行動に対する基準が定まっていく。

  2. 結果をイメージする
    このステップにより、具体的な最終成果物という「何」の部分が見えてくる。トップアスリートなどが行うイメージトレーニングが正にそれで、パフォーマンスを高める効果があると数々の研究で証明されている。

  3. ブレインストーミングをする
    「上司への返信をどう書こうか」、「if文とswitch文のどちらでも実装しようか」など、脳内では普段からブレインストーミングが行われている。本書では「脳内を整理するための書き出し」を一貫して推奨しているため、あれこれ巡る思考を、マインドマップやクラスタリング、特性要因図などを活用して、脳のリソースが節約するようにする。ブレインストーミングのコツは以下。
    ・決めつけない、異議を唱えない、評価しない、批判しない
    ・質より量
    ・思考の分析や整理は最低限にとどめる

  4. 思考を整理する
    プロジェクトが整理されていくには構成要素、順序、優先事項を認識する必要がある。

  5. 次にとるべき行動を判断する
    ここまで正しいステップを踏めていれば、自ずと次にとるべき行動が見えてくる。「このプロジェクトについて具体的に何をすればいいだろう?」という質問に答えられないのであれば、適宜前のステップに戻ること。

プランニングをどこまでやるか

 どこまで詳細に、どこまで具体的にするか。答えは明快で、「気になることなくなるまで」である。また自信ややる気がない時は、上記ステップのどれかが不完全であるため、戻ってみるとよい。特にやる気に関しては、「目的や価値観を見極める」ステップが不十分であることが多い。

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