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番外編 亡き祖母のフィルムカメラ

 実家で眠っていたフィルムカメラは、昔祖母が使っていたものらしい。

 初代のオリンパスペン。なんと、取扱説明書付き。几帳面で物持ちの良かった祖母らしいな、と懐かしくなる。
 祖母は祖父の後妻で、私とは血の繋がりがない。それでも祖母は、正真正銘、私の祖母だった。
 私が高校生のとき、祖母は亡くなった。後日、祖母の部屋を整理していると、私が小学生のときに祖母へ宛てて書いた手紙がいくつも出てきた。ずっと大切に取っておいてくれたのだとそのとき初めて知り、祖母の愛情を噛み締めたのだった。

 カメラは、父が保管していた。今朝、ふと思い付いたのか、母が「どこかに古いフィルムカメラがあったはず」と言うので、父に確認してみると、小さな段ボール箱を渡された。
 カメラがいくつか入っていた。その中から、手のひらサイズのかわいいカメラを取り出す。聞くと、祖母のフィルムカメラとのことだった。
 このカメラを使いたい、と直感する。中古品が好きではない私だったが、このカメラは絶対に私が譲り受けたいと思った。
 カメラをいじってみる。どうやらシャッターに不具合があることに気付いた。シャッターボタンを押しても、シャッターが閉じない。
 しばらく粘ってみるものの、自力ではどうにもならないと観念する。修理してもらうくらいなら新しいものを買った方が安く済むかもしれないが、私は祖母のカメラが良い。修理に出すことにした。

 電車を乗り継ぎやって来たのは、名古屋の新栄。Google先生のお導きにより、新栄町駅の程近くにあるカメラ屋・イエネコカメラさんに辿り着いたのだった。
 とてつもなく昭和レトロなビルに足を踏み入れる。二階にある一室の前に、「イエネコカメラ」の看板が。少し緊張しながらノックをして、入室する。店主さんが出迎えてくださった。

 早速カメラを見てもらう。古くなったオイルの影響でシャッターの羽が動かなくなっているとのことだった。他にもレンズの中央にカビが生えていたり、カバーのパッキンが崩壊していたりと、やはり経年劣化している部分があるそう。
 全部直してもらえないかとお願いして、カメラを預けた。見積もりは一万円ぐらい。週明けには直ると言ってもらえた。

 帰り道は意気揚々としていた。修理を快諾してもらえてうれしかった。なぜなら、カメラのキ〇ムラでは門前払いされたからだ。
 これからは私のカメラに何かあったら、イエネコカメラさんに頼ることを固く誓う。きれいになったカメラとの対面が楽しみで仕方ない。間に合ったら、今度の一人旅に連れて行こう。