『コドク・エクスペリメント』星野之宣 著 幻冬舎コミックス

星野之宣のオリジナルSFコミック。

あらすじ
“最終生物兵器を作るため惑星デロンガで行われたコドク実験。だが惑星の崩壊が近づき、実験は中止。母船で指揮を執るバグレスは兵を置き去りにし、引き上げてしまう。
20年後、デロンガ崩壊の調査船が未確認生命体を収容。その生命体は、デロンガで生き残った唯一の最強生物であった。宇宙軍の将軍となったバグレスはその報を聞き、宇宙軍兵ガイたちに捕獲を命じるが…?”

細長い筒状生物と見せかけて敵に掴まれたところから裏返り全体を包み込んで押しつぶす、Tレックスのような見た目だが体内に無数の幼生を持ち本体が死ぬと無数の妖精が敵に群がり喰らい尽くす、超高熱のガスを噴射する蜂に似た生物、針金のような剛毛で弾丸も弾く触手状生物…惑星開拓の尖兵とすべく強力な生物兵器を探す任務を持った宇宙船内で起こるSFサスペンス・サバイバル。
その中でコドク実験という強力な生物兵器を一つの惑星で最後の一匹になるまで戦わせる生物の光信号によって相手の遺伝子を書き換え、相手を乗っ取るとともに能力を奪う最強の生物デロンガの物語。

そのへんだけだとエイリアンはじめ典型的なSFホラーなんだけど、この漫画はデロンガがただ惑星の最後の一匹になるまで生き延びたのではなく、惑星が滅びる時を前にしたすべての生物が、遺伝子情報を次代に残すために選ばれたものだったということ、その中にはイニシャル兵という戦死した優秀な兵士の遺伝子を生かして人工的に生み出された兵士の親となる人間がいたことから、単に親と子を超えて「受け継がれるもの」がテーマにあることで骨太な物語が傑作たらしめてる。

最後、物語の黒幕だった女性科学者バグレスは事故で失った下半身の代わりに強力なサイボーグとなっておりボスとして襲いかかって来たのが最終的にはデロンガと共倒れになるも、デロンガはバグレスの遺伝子も体に取り込み、宇宙空間で最後の一匹が滅びる前に全方位に向かって遺伝子を転写する光を放ち、どこかの惑星の生物がそれを受け取る。エイリアン的な文法で言えば「まだ恐怖は滅びていないのであった…」的なバッドエンドなのだが、この物語においては生き延びたい、そして意思が受け継がれていくというポジティブなメッセージになってるのがとにかく良い。映画化待ってます。

最終巻より

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