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#2-2 適切な内省を促すには?【対談リフレクション】

前回記事の続き記事です。前回の記事は下記からご確認ください。


記事のテーマ

テーマ1:組織の一員として、適切な内省とは何か?(前回)
テーマ2:適切な内省を促すには、どのような条件や要素が必要か?どうやったら自身で適切さを評価できるのか?(今回)

対談から見えてきた知見(今回分)

・内省を深めるためには、自分の内面を守る「バリア」を解除することが重要。例えば、答えることで不利になったり馬鹿にされることはないという安心を持たせてあげることが必要。

・組織やグループで最初にバリアを解除する人(「ファーストペンギン」)が重要。この人が道を開くことで、他の人も続きやすくなる

・学校では感情を表現しやすくする活動(例:プロジェクトアドベンチャー)を通じて、感情を表出させやすくする。感情を出せるようになることで内省が深まる。

適切な内省には「信念」と「自戒」のバランスが重要。自分の考えを信じることも大切な一方で、考えを見直し、他人からのフィードバックを受け入れる姿勢の両方を持つことが大切。

周囲からのポジティブなフィードバックが自己肯定感を高め、内省を促す。学校や職場でポジティブな言葉を飛び交いやすくする。先生やリーダーがそれを率先することで「仕方ないな」という「行動のための言い訳」をつくってあげることも大切

それでは対談本編です。

対談本編

中島)
では、次の話に移していきましょう。適切な内省を促すには、どのような条件や要素が必要か?というテーマですが、この辺りについてはどうでしょうか。

徳里)
やっぱファイアウォールを解除することがいかに重要かを改めて感じました。外部からの問いが入ってこないと、自己内のバリアで跳ね返っちゃうんですよね。そうならないために、外部からの刺激や問いを受け入れるための準備が大切です。

内省とは、自分の内面を見つめることですが、良質な問いが外部から入ってくるときに「これは大丈夫だよ」と自分に許可を与えることが重要です。たとえば、リフレクションカードのようなツールは、問いがカードに書かれているわけなので、誰かに責められているのではないわけです。問いが自分を傷つけるものではない、大丈夫なんだと感じさせることで、その効果を発揮します。誰かに直接言われるわけではなく、カードがその役割を果たしているんですよね。このように、ファイアウォールを解除することが内省や成長において重要だと感じています。

組織においても、最初の一人がバリアを解除して、解除しても大丈夫だよ!と道を開くことが大切です。誰が最初にその一歩を踏み出すかが非常に重要だと思います。その役割を果たす人を「ファーストペンギン」と呼びますが、どの組織においても最初の一歩を踏み出す勇気ある人が重要な役割を果たします。「ファーストペンギン」が存在することで、他の人々も続いて行動を起こしやすくなり、組織全体の成長と発展に繋がりますよね。

山下)
学校の事例ですが、その「外部からの刺激を受け入れる準備」というのは心当たりがあります。例えば、学校では個人の成長やグループ内の人間関係を育むために、「プロジェクトアドベンチャー」という活動を行うんですよね。この活動は、人間関係をフラットにしやすくする点が非常に優れているのですが、それは身体的な活動を通じて、感情が浮き彫りになりやすくなるからです。

プロジェクトアドベンチャーでは、参加者全員に協力が求められる課題が与えられます。これらのアクティビティには身体の接触など、さまざまな身体的要素が含まれており、その過程で自然と感情が表れます。子どもたちは笑顔や緊張、葛藤などの感情を次第に見せるようになります。これが一つ、準備というものですね。その後にリフレクションカードだったり、他の対話を行うことで、新たな気づきが生まれやすくなります。私は感情ってものは、すごく大事だと思います。

中島)
なるほど、これまでは適切な内省を促すには「この問いは安全だよー」だったり、「感情を共有できる関係をつくろう」という話しだったかと思います。

それらの話しに加えて、僕は内省を促すためには一定の「お作法」が必要で、まずはそのお作法を学ぶことも一つの方法だと思います。

例えば僕が持っているお作法は「右手に信念を、左手に自戒を」です。信念とは、自分の思いや義務感を持つことです。経営者は目標達成のための「会社は自分たちで変えられる!」という信念を持っているかもしれません。一方で、従業員は「会社は私たちが変えられるものではない」といった信念を持っているかもしれません。この自分がどっちの信念を持っているのか?で、内省の促され方は変わってきますよね。

しかし、信念が間違っている可能性もあるのでは?と思うことが「自戒」の部分です。「今、自分はこう思ってるけど、それってホント?」と、そのような問い直しの姿勢を持ち続けることが大切です。

もしこういうお作法を持っていたのなら、従業員の方の自己内バリアも解消しやすかったかもしれないですね。

あとは、他の他人からのフィードバックも重要な要素です。他人からのフィードバックがあることで「自戒」が効果を発揮しやすくなります。自分だけではなかなか自戒することは難しいですが、他人の視点を取り入れることで、内省の適切さって保たれますよね。

徳里
そうですね、やっぱり他人から、第三者がいるってすごく重要とか大事だと思いますね。その第三者を信頼できるかどうかですね。

中島)
確かにそうですね。第三者の信頼で思い出すのが、他人の意見をどう取り入れるか?ということですね。例えば、第三者の中には「会社は自分たちで変えられるものではない」といった意見を持つ人もいますが、今回の文脈だと、こうした意見に引きずられると、自分自身の道を見失いがちになることもあります。そのため、誰の意見をどの程度信頼するかを見極めることが重要ですよね。信頼できる人の意見には耳を傾け、そうでない場合は慎重に考える価値があるかどうかを判断する必要があります。

特に、素直な人ほど周囲の意見を全て鵜呑みにしてしまう傾向があります。しかし、全ての意見を同じ重みで受け入れるのではなく、この人の意見は2割程度、この人の意見は8割程度といった具合に、意見の重みを考慮することも重要です。そうすることで、自分の進むべき道を見つけやすくなるでしょう。信頼も相手に応じて適切に調整し、自分自身の考えを持つことが大切です。こうしたバランスを取ることで、自分の目標に向かって前進する力を得られるのではないでしょうか。

===

徳里)
そうですね。ここまで話をしていて適切な内省には、「レディネス(準備が整った状態)」が重要なことがわかりますね。準備のステップがあって、それが整うことが大切だと。さっきの右手と左手のお作法は、適切な内省としての最終ステップなような気もしますが、その前にもいっぱいステップはあると思います。

子育ての経験を通じて、特に感動するのは、子どもがよちよち歩きから立ち上がり歩き始めるまでの過程です。何度も転んで泣きながらも、再び立ち上がろうとする姿勢は、人間が生まれながらにして持っている成長への意欲を象徴していますよね。痛みを感じながらも再び立ち上がるその姿勢は、成長し続ける力が私たちに内在していることを示していると思います。私たちは、精神的な成長は年齢に関係なく続けることができます。大人になっても、成長する力を信じることが重要です。

自分では何も変えられないと思うのではなく、実際には自分で変えられることがたくさんあります。子どもの頃に持っていた一歩前に進もうとする姿勢や思いを、大人になっても取り戻すことが必要ですね。そのためには、アンラーン(学び直し)を行うことが大切です。新たな知識やスキルを学ぶだけでなく、過去の固定観念や誤った信念を見直し、手放すことがポイントになりますよね。

中島
アンラーン(学び直し)を通じて、人はいつでも変わり、成長することができますよね。まあ、言うは易し行うは難しなんですけど。

徳里)
今回、私たちが目の当たりにしている実証例では、本人たちは気づいていないかもしれませんが、「何も言えない」と言いながら、実際には多くのことを言っているんですよね。すごく客観的に見れば、従業員の方たちは外部の力を借りながら、何かを変えようとしているとも言えるわけです。時間がかかるかもしれませんが、最終的には「あのときなんだかんだで、自分たちで解決したよね」と少しでも感じてもらえれば良いなと思います。

リーダーが高圧的だと感じた場合でも、それを口に出せたことは重要です。リーダーがそのフィードバックを受けて行動を変えたなら「自分たちの意見がリーダーを変えた」ということになるわけですよね。こういうことが一ヶ月でも続くと、効果があるかもしれません。

ただし、この変化が一方的にリーダーの責任として押し付けられると、問題が生じます。リーダーの行動が愚痴の結果変わったのなら、「ほらみろ、全部リーダーの行動が悪い」ということを正当化する材料にもなるんですよ。

リーダーが謝ることは簡単なのですが、謝ることで従業員の成長を阻害する可能性もあります。リーダーが謝罪することで、従業員が相手の行動を変えるために謝罪を求めるようになり、自分たちが変わることなく他人に変化を求める姿勢が強化される可能性があるんですよね。

謝ることが必要な場合もありますが、リーダーと従業員が対話を通じてお互いの考えや意図を理解し合うことが重要です。リーダーは自分の意図を説明し、行動を変える努力を示しつつ、従業員も同様に変わる姿勢を持つことが求められます。このようなフラットな対話を通じて、双方が変化し成長する環境を作ることが理想的です。

こういうのって小学校ではどうですか?何か子ども同士でトラブルがあったとき、児童が一面だけ切り取った形で親に伝えて、親は子供が悪くない、自分の子供が悪くなくて、学校とか他の子たちのせいだっていうストーリーって簡単に出来上がらないですか?

山下)
よくありますね。さっきの話は、学校でいうと、課題を持っている児童そのままだなと思います。

クラス作りにおいて、自己肯定感が低い児童に対しては教師がどれだけ言葉をかけても、変化は起こりにくいことがあります。特に荒れているクラスでは、最初はマイナスの言葉ばかりが飛び交います。「これやりましょう」と提案しても、「面倒くさい」といった冷ややかな反応が返ってきます。このような状況では、ポジティブな変化を期待するのは難しいです。従業員の方が文句ばっかり言ってる状況はこれに近いですね。

でもこんなとき、変化を引き起こすのは、周囲の友達からの言葉なのです。このようなクラスでは、まずはマイナスの言葉を減らし、プラスの言葉に変えていきます。例えば、先生や友達同士から「こういうところが良かったよ」といったポジティブなフィードバックを増やすことが重要です。周囲からのフィードバックがプラスに転じることで、児童の自己肯定感も少しずつ向上していきます。

自己肯定感が低い子どもが多いクラスでは、全体的にマイナスの言葉が多くなりがちです。しかし、ポジティブな言葉を積極的に使うことで、少しずつ環境が改善されていきます。このプロセスには時間がかかりますが、継続的な努力が必要です。

まとめると、クラス作りにおいては、教師や親の言葉だけではなく、友達同士のポジティブなフィードバックが自己肯定感を向上させる鍵となるんですよね。ポジティブな環境を作ることで、子どもたちが自分を肯定し、成長していくための土壌が整います。

徳里)
それ、すごく面白いですね。今、本当に話聞いてて、ドンピシャだと思います。私たちの実践でも周囲が「冷ます空気」を作る人に対してフィードバックをしない、あるいはできないという構図があります。冷ます空気への同調圧力があるんですよね。そしてこの同調圧力は、特にリーダーや経営者一人に焦点を当てることが多く、その結果、全体が諦めムードに包まれてしまいます。

この構図では、不満の声が強い人に対して誰も反論しないため、不満が広がりやすくなります。自分が反論すると次の標的になるのではないかという恐れもあるし、少しは自分にも不満があるわけであって、その20%程度だった不満を、次第に50%、60%、そして70%と膨れ上がらせてしまうのですね。そして最終的には安全を確保するために同調することが最善だと感じてしまうような構図があるのかもしれないですね。

これはまるで、学校での子供たちの行動と同じです。自己肯定感が低い子供たちが、クラスの雰囲気を悪化させる子供に同調することで、自分を守ろうとする現象に似ている気もしますね。

山下)
職場や学校でポジティブな変化を促すためには、小さな行動や言葉の積み重ねが重要ですよね。例えば、席替えの際に「今までありがとうね」と、隣の人にお礼を言うようなシンプルな行動も、その一環です。このときに言い訳を言えるように持って行くことも有効です。例えば、「先生がそう言っているから仕方がないね」というように、軽い言い訳を言えるようにしてあげることで、行動のハードルを下げることができます。「仕方がないからやってやるか」という体裁でやってもいいんです。そんなことが嬉しいんですよ。

徳里)
なるほど、それは健全なコントロールの仕方ですね。リフレクションカード®もそうですよね、「カードが言っているから仕方がない」という理由で行動を始めることが、周囲の環境を変えるきっかけとなるんでしょうね。
そうすると褒めない人がカッコ悪くなりますね。会社でそれが広がると辞めていく人もいるかもしれないけど、自分がいやすいところに行けばいいですね。
今の先生の役割をリーダーがするというのなら、うちの会社はこれを組織文化としますよ、人のいいところを見つけ、ポジティブなフィードバックをしますよ、と奨励するような動きが、それに対応するんでしょうね。となるならば、僕らの役割はそれをサポートすることと言えそうです。
…小学校と会社の比較も面白いですね。応用できることがたくさんありそうです。

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以上、MAWARUリフレクションの新企画「対談リフレクション」の第二回でした。

対談リフレクションは、ゲストを学校の先生だけに限らず、企業人事やリーダーの方も対象にして今後を企画しています。

リフレクションが企業の中でどう扱われているのか、どのような課題感や実態があるのかといったことを対談を通して探っていきます。定期的に更新していきますので、楽しんでいただけると幸いです。


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