バルセロナvsレアルマドリード〜勝つための戦い方〜[スーペルコパ準決勝]
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
ということで2022年1発目です!
試合概要
スタメン
交代
バルセロナ
46' F.トーレス→アブデ
46' F.デ・ヨング→ペドロ
66' L.デ・ヨング→ファティ
78' ガビ→メンフィス
78' D.アウヴェス→ニコ
110' アブデ→ジュグラ
レアルマドリード
68' アセンシオ→ロドリゴ
83' モドリッチ→バルベルデ
90' カルバハル→L.バスケス
110' ヴィニシウス→カマヴィンガ
得点
バルセロナ
41' (1-1) L.デ・ヨング
83' (2-2) ファティ
レアルマドリード
25' (0-1) ヴィニシウス
72' (1-2) ベンゼマ
98' (2-3) バルベルデ
(1)点を取るための守備
マドリ―の守備は4-5-1で自陣に構える形。ピケ、アラウホ、ブスケツにはボールを持たせ、パスが出たところを奪ってカウンターがマドリーの狙いでした。そのため受け手となるIHは徹底的に抑えに行きます。ライン間を取るFデヨングとガビに対してまずはクロースとモドリッチが背中で消す、クロースモドリッチがブスケツまで牽制に出た時にはカゼミロかWGがスライドして消します。この守備によってピケ、アラウホ、ブスケツはボールは運べるものの、ここからライン間のIHへ縦パスが通る場面は作れませんでした。
ライン間を閉じられたバルセロナの攻撃の中心は必然的に左WGのデンベレになります。フリーでボールを持てる後方の選手から左のデンベレへ展開、あとはデンベレが好きなようにドリブルしてクロス・シュートに繋げる。前半のバルセロナのチャンスはほとんどこの形からでした。しかし枠に飛んだシュートは5本中1本のみであり、ここの精度がもっと高ければよりクルトワを脅かすことができた攻撃でした。それでも41分にはデンベレのクロスからミリトンのミスと不運が重なり同点に追いつきました。
話をマドリーに戻します。ボールを奪ったマドリーの狙いとなる素早いカウンター。マドリーのカウンターがこれほど破壊的な理由は3トップが逆の矢印を描くことにあります。自陣でボールを奪ったらCFのベンゼマは下がる、またはその場に止まる動きをしてバルセロナのCBを食いつかせます。これによってできた背後のスペースにWGが走りこみます。カウンターを見ているとベンゼマがボールを奪ってすぐに裏を狙う場面はほとんどありません。このような3トップの動きがカウンターの破壊力を生み出しています。
(2)割り切るバルサと世界一のトリオ
バルセロナの守備はガビをLデヨングの横まで押し上げて4-4-2のブロックを作り前線からプレスをかけます。4バックは前に出てくることはなく、マドリーの3トップに対して+1の枚数で守ります。後ろが+1ということはもちろん前は-1になり、誰かが1人で2人を見なければならなくなります。その役割を担ったのがデンベレで1人でモドリッチとカルバハルのマークを担当しました。
当然マドリーがここを見逃すわけがなく右サイドからプレス回避を図ります。右IHのモドリッチが左サイドまでポジションを変えることで、デンベレに
①モドリッチについて行くか ②自分のサイドに留まるか
の2択を迫ります。デンベレはモドリッチについて行こうとしますが「どこまでついて行っていいの?」といった感じで中途半端な守備に。結果的にモドリッチはノープレッシャー同然でボールを受け、デンベレがいなくなったサイドからカルバハルが一気に前進できました。
バルセロナとしてもデンベレの守備能力でモドリッチとカルバハルの動きについて行けるなんて甘い考えは持っていなかったはず。それでもこの守備を採用した理由としてヴィニシウスの存在があると思います。マドリーの右サイドをある程度捨てることになっても左サイドはしっかり守りを固めたい。またはヴィニシウスとベンゼマの左サイドではなく右サイドから攻めさせたいという狙いがあったと考えられます。
しかしマドリーの中盤は百戦錬磨のトニルカカゼ。3人の巧みな連携でバルセロナの選手を動かし得意の左サイドからの攻撃を見せます。その一例が下の図の形です。カゼミロかクロースが一列下がりバルセロナの2トップに対して3対2にします。この場合、バルセロナの中盤Fデヨングとブスケツは右WGのFトーレスにマークを受け渡して3対3とします。Fトーレスが前に出たことでフリーになったメンディに中盤を経由してボールを渡して左サイドから前進します。この時、右SBのDアウヴェスはヴィニシウスにピン止めされて出ていけないためブスケツが対応に行きます。そしてブスケツがサイドに引き出されたことで中盤にスペースができ、そこでクロースやモドリッチがボールを引き出しました。これと同じような形で2分、8分、11分と立て続けに前進した結果、Fトーレスは前に出て来なくなりました。
マドリーのボール保持時での問題点となっていたのはWGがベンゼマと逆の矢印を描けない点です。カウンター時にはできているのにボール保持時になるとなぜかこの動きが大幅に減ります。ヴィニシウスはサイドに張ったところからのドリブルという形が確立されているため個人的にはアセンシオにもっとこの動きを期待したいところです。スプリントを繰り返す走力は持ち合わせているので。
(3)リズムを作り出すペドリ
後半からバルセロナはFトーレスとFデヨングを下げてアブデとペドリを投入。帰ってきたペドリがバルセロナに流れを引き寄せます。ペドリはライン間で駆け引きを繰り返しながらボールを引き出し、時には少し下がった位置でパスをさばきました。前半はほとんど消えていたIHが攻撃に絡めるようになったことで、デンベレだよりだったバルセロナの攻撃にリズムが出てきました。
これに対してマドリーは中盤の守備を少し修正します。前半はブスケツへの牽制はモドリッチとクロースが行っていましたが、モドリッチはペドリのマークに専念し、カゼミロがブスケツへ出ていくようなりました。前半よりもマンツーマン気味に人基準で守ることで対応できるように修正されました。
(4)とっておきの3-4-3
78分にバルセロナはDアウヴェスとガビを下げてメンフィスとニコを投入し3-4-3にシステムを変えます。4-3-3ではカゼミロがブスケツに出て抑えていましたが、3-4-3になったことでブスケツとペドリの2つに増えた蛇口を止めることができなくなりました。これよってマドリーは押し込まれるようになり、ショートコーナーから一瞬の隙をつかれて失点し同点となります。バルセロナ相手にバルセロナみたいなCKからの失点の仕方。Sラモスがいればこんな気の抜き方はしないだろうにと偉大なカピタンの存在を思い浮かべたマドリディスタもいたことでしょう。
また、この3-4-3は守備においても効果を発揮しました。右SBのDアウヴェスは素早く間合いを詰めながらヴィニシウスにいい形でドリブル勝負に持ち込ませず上手く抑えていました。しかし一瞬のスピード勝負になるとヴィニシウスとメンディに分があり、2失点目の場面でもメンディに縦突破を許しました。この交代の時のバルセロナの状況は残り10分で1点ビハインド。リスクをかけてでも攻撃に出ていかなければならない状況であり、その分スペースがある場面でヴィニシウスがボールを受けることが増えます。そこで守備者をDアウヴェスから対人に強いアラウホに代えることでヴィニシウスのドリブルを抑えにかかりました。
また、スタートからマドリーの3トップに対して+1の4バックで守っていたバルセロナですが、3-4-3にしてからは最終ラインを3枚にして前線からプレスをかけに行きました。強く圧力をかけられるようになったマドリーはモドリッチがいない影響もありプレスを回避できなくなりアバウトなロングボールを蹴る場面が増え、よりバルセロナに押し込まれていきました。
バルセロナのシステム変更により押し込まれたマドリーですが、しっかりブロックを形成して守備を固め、カウンターから勝ち越し点をゲット。その後も耐えきって3-2で勝ち切り決勝進出を決めました。試合後チャビは「試合を支配していた」と発言しました。確かに3-4-3に変更後はバルセロナが主導権を握りましたが、この試合を言葉で表すと「試合を支配していたつもりのバルセロナと裏で試合を操っていたレアルマドリード」という印象を受けました。マドリーの勝つための最適な戦い方を選択できる強さが現れたエル・クラシコだったと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?