ランクル300より250の方がカッコイイ理由
名古屋市の栄付近の幹線沿いにあるディーラーにランクル250が置いてあった。生産が追い付かないランクル250は展示しているディーラーも少ない。せっかくなので寄って、見てみることにした。
近くで見るとほんとに大きいが、中に入ってみると意外と車内は小さく感じる。フレーム車の宿命で、モノコックフレームのアルファードなどと比べて床下が250mm以上上がってしまうため、中は普通のセダンくらいの居住スペースしかない。建築で2.3mの天井の部屋と2.6mの部屋で全然広さの感じ方が違うのと同じように、空間の高さで広さの感じ方が違うのだ。
ランクル300と250は同じプラットフォーム。ホイールベースが同じでも全く違う車に見えるのは、ホイールアーチの形状にある。ランクル300がホイールアーチの上が平らなのに対して、ランクル250は一段絞られているのが分かる。
この違いが何によって生まれているかというと、シートの間隔を示すカップルディスタンスという距離だ。タイヤの横幅の間隔であるトレッドを保ったまま左右のシートの間隔を短くすることによってフェンダーを”デザインする余地”が生まれて上記デザインが可能となっている。その結果、人間で言うと骨が角ばった筋肉質な感じが出ていて、マッチョな感じを演出できてかっこよく見える。
プラットフォームを300と流用してトレッドが共通になって、カップルディスタンスが短くなったためにできた、デザインする余白。これを与えられたデザイナーは、さぞやりがいがあったと思う。
建築も同じように、カッコいい建築とそうでない建築は余白によって分かれると思う。たとえば庇(ひさし)の長さ。庇が長くとれると、昔の日本家屋の様な軒下や縁側の様な空間が作れて、見た目もよい。ただしその分部屋の空間は狭くなる。
自動車も建築も消費者はわかりやすい室内空間でその価値を図ろうとするが、実はそのカッコよさは余白だと思われているフェンダーや庇によって作られている。消費者がフィアット500の様に室内は小さいが余白がある商品を選ぶ事で建築家や設計者のマインドも変わっていくのかもしれない。