自動車と建築で異なる設計習慣
設備設計建築事務所を開設して半年が過ぎた。ありがたいことに新規の建築さんからも依頼をいただいており、改めて設備設計の需要の高さを感じる日々だ。自動車の設計と建築の設計で異なる習慣が3つあるので紹介したい。
1)納期があいまい
平面図をもらってからが本格的な設備設計の本格スタートとなる。「いつ平面図をもらえますか?」と聞いて帰ってきた日付で平面図を展開してもらえた経験はない。通常2~3週間遅れることが殆どだ。先方にも悪意は全然ないのだが、施主からの変更でどうしてもそうなってしまう。
2)受注コストがあいまい
1戸1戸設規模も違えば掛けられるコストも違う建築物にとって正確に設計料を算出することはほぼ不可。山門設備ではA3 15000円~20000円/A1 35000円~40000円で受注させていただいているが、これも正確とはなかなか言いづらい。上記金額も先方に提示する目安で、その後交渉するスタート金額といった感じになっている。
3)契約があいまい
受注後すぐ設計がスタートする。契約を締結してスタートしないのが最初驚いたが、どこの事務所さんもそうなので、そういうものだと納得するようになった。
これをが習慣といえば習慣なのだが、なぜこの違いが発生するかを考えてみた。
1)納期
自動車はベルトコンベアの量産ラインを止めることは多大なコスト損失につながるので、設計納期が絶対厳守になっている。
2)受注コスト
自動車はメーカー、サプライヤ含めて設計者=製造会社勤務なので自動車の設計者は自分の仕事の価値がいくらか把握している人はほとんどいない。そう、製造込みで受注しているため、自動車については設計料という概念がそもそもないのだ。
その代わり、自動車部品は設計した部品が数十万個~数100万個製造されることが殆ど。1円の差が数100万円になるため、設計する側にもコスト感覚が染みついている。
3)契約
設計会社=製造会社の自動車業界では非常に厳しい。PL法という製造者責任法というのもあり、作ったもので不具合を出すとその会社が責任を負う。以前エアバックのTAKATAさんが不具合を出して補償が出来ずに倒産した。このような事態が発生した時のために契約書によって非常に細かく責任分担が決められている。
設計習慣の違いの裏には作り方や販売、設計製造が一体の習慣があるのが面白いと感じる。どちらがいいというわけではないが、1件1件違うものを設計する建築の方が、設計者としては面白さを感じる。ただ、同じ建築でもハウスメーカー勤務の方は自動車と同じような環境なのかもしれない。