ロックフェスと自由からの逃走
先日、ロックフェスに行ってきた。ロックフェスといっても、ライジングサンやジョインアライブのように世の音楽好きが一堂に会する大規模なそれではない。どちらかというと、地域のお祭りに近いものだ。
大して音楽が好きなわけでもなく、ましてや人が集まるところを好まないおうち大好きコミュ障インドア王子こと僕が、なぜロックフェスに。
それは、先の同窓会(中学)で再会した同級生が主催者であり、その人から直々に招待されたからだ。招待と言いながら、しっかり自腹だが。
招待したのは、“騒がしい女”ことサワコ(仮名)。「口が本体」と思うほど中学の頃から賑やかな3児の母で、主催者でありながら自身もバンドを組み、ボーカルとドラムを披露するという。
ドラムに関しては始めて3か月だそうで、仕事に育児にイベント運営にとクソ忙しい中、よくチャレンジしたなぁと感心した。ちなみに同窓会の幹事でもあった。どこにそんな時間があったのだ。精神と時の部屋に住んでいるのだろうか。
そんな一生懸命なサワコに頼まれたら、おうち大好きコミュ障インドア王子も行くしかなかろう。なにより、かつて地方自治体職員だった身としては、地域活性化に貢献する若者を応援しないわけにはいかないじゃろう。ふぉっふぉっふぉっ、どれ、たまには下界へ降りてみようぞな。
◇
当日がやってきた。
10時スタートのところ、10時30分には到着した。とりあえず、隅っこの方に移動し、斜に構えながらライブを鑑賞した。ママさんバンドが『GLAMOROUS SKY』を披露している。なつかしい。
サワコは、案の定あちらへこちらへと忙しなく歩き回っていた。目の前を2回ほど横切ったが、こちらには気づかず。僕はそこで「よっ! 来たよー!」と声をかけるような気さくで陽気でフレンドリーな人間ではないので、しっかりと黙っていた。
次のバンドの番になった。スリーピースガールズバンドで、高校生2人とハタチ1人だった。若い。
ボーカル兼カホンのハタチが「この中で私が一番ババアです」と自己紹介していて、会場中のオーバー30代の地雷が次々と爆発していくのを感じ取った。
こんな感じで、ゆるりと時間は過ぎていった。
さて、すでにお気づきの人もいると思うが、おうち大好きコミュ障インドア王子にとって、この状況はものすごくしんどい。
たとえるなら、クアッカワラビーの群れの中にいるチベットスナギツネくらい場違いなのである。
うっわー、どうしようどうしよう。ライブは嫌いじゃないが、知らない曲を披露されると気持ちが乗らず、手持ち無沙汰感がハンパない。キッチンカーや露店もたくさんあるが、なんか、そういうところに一人で行くの、なんかね、うん。
どうしたらいいのかわからなくなり、体は石像のように固まった。あまりにも動かないもんだから、トンボが30分くらいずっと左腕に停まってた。
一人コミュ障を発揮していると、目の前に人が現れた。顔を上げると、別の同級生たちだった。彼ら彼女らも同窓会参加メンバーだったので、僕と同じくサワコに招かれたのだろう。
めちゃくちゃホッとした。
その後、水を得た魚、翼を得た鳥、牙を得たチベットスナギツネのように、僕はイキイキと同級生のグループに入れてもらった。調子に乗って、たこ焼きとクレープを買った。めちゃくちゃ満喫してるじゃないか。
思うに、アルロンという人間は、なにか役割を与えられたいタイプなんだと思う。
これがたとえばKinKi Kidsのライブ、もしくはポケモンのイベントであれば、自分が主体的になれるので、一人でもしっかり楽しめる。
ただ、人に頼まれてやってきた場合、楽しみ方がわからないので、あわあわしてしまう。
だから、食べ物を買ってくるとか、場所をキープしておくとか、そういう役割を引き受けたがったり、いっそボランティアスタッフとして働かせてくれと思ったりする。ある意味で「自由からの逃走」と言えるのではないだろうか。
同級生たちと合流したあたりで、サワコの出番となった。
その様子は、別途。
(続く)
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