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大雪の日を思い出したら仕事に誇りを持てた話

「クリスマスは雪が降ってほしいよね、ロマンチックだから♡」などとほざく輩にはドロップキックを食らわせてやりたい。
そう思いたくなるほど、僕は雪を忌み嫌っている。


北海道には、毎年厳しい冬が訪れる。だいたい6月から8月くらいは夏で、後はぜんぶ冬。冬夏冬冬。「試される大地」とはよく言ったものである。

こと僕の住む地域(北海道の真ん中らへん)は、"very"が2個以上つくほどの豪雪地帯だ。前日の夜に除雪を完了させても、翌朝にはまた雪が積もっているなんてことはザラにある。心の中で晴子さんが「あんなに除雪したのに……」と涙するのは、一度や二度ではない。健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、雪はとにかく降り続け、とにかく積もり続ける。そんな存在に愛を誓うなんてできるわけがない。

要するに豪雪地帯の民は、そうでない地域の住民が想像する以上に過酷な生活を強いられているのである。


忘れもしない2013年1月3日、人生で最もひどい大雪に見舞われた。
実家から当時働いていた町へ戻るときだった。

朝8時頃、「じゃ、行くわー」と両親に告げ、家の玄関を出ようとしたら、ドアが開かない。鍵は開錠済み。チェーンもつけていない。でもドアは開かない。

訝しみながらドアを渾身の力で押す。すると「ズッズッ」と擦れるような音がした。ドアはなんとか開いた。

そして僕の目に入ったのは、辺り一面の雪が太ももくらいの高さまで積もっている光景だった。

実際の写真をお見せしよう。心の準備はよろしいか。





おわかりいただけただろうか。
合成画像でもAIでもない。一晩でこれだけの雪が降り積もったのである。

当然、公共交通機関は全面的に運休。僕の予約していた都市間バスも運休となり、バス会社から電話連絡が来た。翌日に予約し直す旨を伝えると、「予約はひとまずお受けしますが、明日運行できるかは未定です」と言われた。そりゃそうだよ。
各お店屋さんも、開店時間が大幅に遅れたらしい。そもそも従業員が物理的に店舗に入れないので、しかたあるまい。

こうなってしまったら、日がな一日除雪である。我が家には融雪槽(雪を入れるための巨大なタンクのことで、この中に水を入れて雪を溶かす)があるものの、こんなの一気にぜんぶ入りきらない。融雪槽がいっぱいになるまで除雪、融雪槽の中の雪が溶けるまで休憩、溶けたらまた除雪、を繰り返した。気づけば夜の8時だった。


このように、北海道民と雪とは切っても切れない関係であり、どれだけ憎かろうと住んでいる限り一緒に生きていくしかない。
それだけに、動物園で除雪の仕事をしている身としては、非常に重要な仕事をしているという意識が高くなる。特段高い給料をもらっているわけではないし、さほど難しい作業というわけでもない。しかし、なにもしなければみんなが困るわけで、誰かがやらなければならない仕事である。

だから僕は一生懸命はたらくし、この仕事に誇りを持っている。

除雪するときは、心の中でブチギレてるけれど。


ちなみに、昨日と今日はまったく雪が降らなかった。そんな日もある。
雪が降らなかったら降らなかったで、簡単に氷点下18℃とか叩き出してくるからしんどい。試される大地、試されすぎだろ。


(おしまい)




本記事は、企画『すまスパ!第1回紅白記事合戦』の参加作品です。

テーマは「白」の方を選びました。「赤」だったら"スーパー戦隊シリーズの歴代レッドを語る記事"とかにしようかと思いましたが、一日で書ききれないので断念しました。

素敵な企画をありがとうございました!


#紅白記事合戦2024
#白のエッセイ


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アルロン
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