オススメ本「考えなしの行動?」
今回もオススメ本を。
ずいぶんと古い本(初版 2009年)なので、ご存知の方も多いと思いますが「考えなしの行動?」です。
この本は、人がさまざまな生活の場面で、無意識におこなっている行動の写真をまとめたものになります。
例えば、
・柵の上に並んだ空き缶の写真
・Tシャツの胸の部分にメガネを引っ掛けた写真
・自転車のサドルの後ろに挿した傘の写真
こんな写真ばかりで一冊が構成されています。
よくある日常を撮った写真で、何の意味があるの?と思われる方もいるかも知れませんが、この本は、日常生活から、何に気づきを得て、どのように観察すれば良いか教えてくれる本なのです。
人間中心設計プロセスの最初に「利用の状況の把握と明示」という段階があります。ここでやる一つの方法として、ユーザーを観察し、そこから気づきを得る方法があります。
この観察を実際の現場以外でもトレーニングできる本なのです。日常的によくある場面から、何に気づくか。それに対してどんな思考を働かせるか。とても頭を使いながら読む本だと思います。
例えば柵の上に並んだ空き缶。どんな人が、どんな状況で缶を置いたのでしょう?その環境に求められているものやサービスって何なんでしょう?と言ったようなことを考えさせられます。
ただ一点注意が。まえがきに、訳者森博嗣さんが、
デザインの専門家であれば、本書を原書で読むべきである。
と書かれています。日本語版では、写真の上や、すぐ近くにその状況のヒントとなるような言葉が印刷されています。一方、原書("Thoughtless Acts")では、それらが別ページで書かれているようです。日本語版では気づきを得る前に文書を読んでしまう可能性があり、勉強の機会が減るわけですね。
ただ、原書は既に絶版のようで、プレミア価格でしか手に入らないようです。一方、日本語版は、最初の方のリンクをたどってもらえば分かるように、まだamazonで手に入ります。
個人的には、写真に集中して、できるだけ言葉を見ないようにすれば(しおりで隠したりすれば)、日本語版でも十分役立たせることができるだと思い、オススメさせていただきました。
みなさんの観察力アップのお役に立てれば。