日本海西部を南下した組織化した対流雲域とECMWFのGRIB2 (2/3)
500hPa気温と700hPa湿数の天気図
気象庁FAX図「FXFE5782」(上図)と同等な天気図、500hPa面の気温と700hPa面の湿数を示す天気図を作成しました(図7)。
この図から注目している対流雲との対応について、500hPaの小規模な気温の極小域(以下、寒気コアと称する)が23日3時に朝鮮半島北部にあって、南東へ進んでいます。日本海西部を通って、23日21時には福井県付近に達しました(図8参照)。
この気温極小値と対流雲の経路は、近畿北部の沿岸部で交差しています。寒気コアは15時から21時で加速しています。これは寒気コア付近で対流活動が強まったことにより、500hPa面でもやや暖化して、この周辺で暖化しなかったところが新たな気温極小値として解析されたと推測しました。対流雲は、近畿北部の沿岸部に接近した頃に、西から近づく500hPaの小規模な気温極小域の影響を受け始め、さらに発達した可能性があります。700hPaの湿数は、対流雲のスケールが小さいことから、対流雲域の対応関係ははっきりしていません。
このMetPyを利用したコードの概要については、以前noteの記事を参考にしてください。次にjupyter notebookのコードを掲載します。
700hPa発散,850hPa風と気温の天気図
気象庁FAX図「AXFE578」(下図)と同等な天気図を作成したかったのですが、700hPa面の上昇流はGRIB2に格納されていないため、代わりに発散を利用して、図9を作成しました。
この図から注目している対流雲との対応について、850hPa面は北寄りの風で寒気移流の場ですが、等温度線の間隔も比較的広いため、移流の絶対値は大きくなさそうです。700hPa面では、23日09時に日本海で南西から北東にのびるライン状の収束域が解析されていますが一時的で、対流雲の発生・発達との関連は、この図からは判断できないと思います。
このMetPyを利用したコードの概要については、以前noteの記事を参考にしてください。次にjupyter notebookのコードを掲載します。
850hPa面の相当温位と風の天気図
気象庁FAX図「FXJP854」と同等な天気図、850hPa面の相等温位と風の天気図を作成しました。(図10)
この図から注目している対流雲との対応について、対流雲が発生・発達した場所は、この周囲と比較すると相当温位は高く、北ないし北西から低相当温位が流れ込む状況となっています。対流雲の進んだ付近では、東西にのびる水平シアが解析できそうです。
下に図9のjupyter notebookのコードを掲載します。
等圧面以外の要素のレベルタイプ
pygribを利用してGRIB2を読み込み、データを参照する際には、データの高度等を指定するために、レベルタイプとレベル値を設定する必要があります。等圧面データのレベルタイプは"isobaricInhPa"です。等圧面データ以外については、別のレベルタイプを設定します。要素別(short name)に、設定するレベルタイプを示します。
レベルタイプ: 要素(short name、
括弧内はコード内で指定するレベル値)
heightAboveGround: 10u(10), 10v(10), 2t(2)
surface: sp(0), skt(0), tp(0), ro(0), lsm(0),
meanSea: msl(0)
depthBelowLandLayer: st(0)
entireAtmosphere: tcwv(0)
これらのデータ取得のためのコードは、次のようになります。わかりやすくするために、エッセンスのみ抜き出しています。
import pygrib
#
# ECM GRIB2 データOpen
grbs = pygrib.open("./data/ecm/20230523120000-0h-oper-fc.grib2")
### データ取得
# 地上気圧(sp:単位Pa)
grb_sp = grbs(shortName="sp",typeOfLevel='surface',level=0)[0]
# 海面校正気圧(msl:単位Pa)
grb_msl = grbs(shortName="msl",typeOfLevel='meanSea',level=0)[0]
# 10m高度風速(10u:単位m/s)
grb_10u = grbs(shortName="10u",typeOfLevel='heightAboveGround',level=10)[0]
# 10m高度風速(10v:単位m/s)
grb_10v = grbs(shortName="10v",typeOfLevel='heightAboveGround',level=10)[0]
# 2m気温(2t:単位K)
grb_2t = grbs(shortName="2t",typeOfLevel='heightAboveGround',level=2)[0]
# 土壌気温(st:単位K)
grb_st = grbs(shortName="st",typeOfLevel='depthBelowLandLayer',level=0)[0]
# 表面温度(skt:単位K)
grb_skt = grbs(shortName="skt",typeOfLevel='surface',level=0)[0]
# 初期値からの総降水量(tp:単位m)
grb_tp = grbs(shortName="tp",typeOfLevel='surface',level=0)[0]
# 可降水量(tcwv:単位kg/m/m)
grb_tcwv= grbs(shortName="tcwv",typeOfLevel='entireAtmosphere',level=0)[0]
# 流出量(ro:単位m)
grb_ro = grbs(shortName="ro",typeOfLevel='surface',level=0)[0]
# 海陸マスク(lsm:0 or 1)
grb_lsm = grbs(shortName="lsm",typeOfLevel='surface',level=0)[0]
#
## 時刻取得
validDate = grb_msl.validDate
analDate = grb_msl.analDate
#
## データ配列取得
valPre, latPre, lonPre = grb_msl.data() # 海面更生気圧(Pa)
#
## データClose
grbs.close()
地上気圧配置と可降水量
初期値の天気図を作成しているため、図10に、地上気圧、風、可降水量の図を示します。着目している対流雲は、地上の気圧の谷(東西走行)の南側に位置し、可降水量は20kg/m^2の領域で発生していました。15時は、対流雲付近にスケールの小さい低気圧も解析されています。
図10のスクリプト(jupyter notebook用)を添付します
これまでの2回の記事で、気象庁FAX図と同様(一部表示要素が異なる)な図を作成して、対流雲との対応関係について考察しました。次回の記事では、断面図などの図を作成して、対流雲が発生・発達した環境場について検討します。