第27回 相続税理士のつぶやきコラム~AIは、判ってくれない !~
相続専門税理士小泉博嗣氏が軽快な語り口で気になるポイントを紐解く人気コラム。今回のテーマは「余韻から想いを馳せる」です。
このところ、映画にハマっているのです。フランスのフランソワトリフォー監督の出世作に「大人は判ってくれない」があります。そんな訳で、ちょっとタイトルをお借りしてみました。
映画鑑賞といっても、ネットフリックスのようなパーソナルなツールでなく、劇場で観ています。それも、相続の仕事で沖縄を訪れる時の隙間時間が合うのです。最初は、仕事でいろいろなトラブルもあり、気分転換の意味で出掛けてみました。気づくと、毎回の出張時に観ているのです。映画館で観る中で、スマホの電源を切る瞬間がなんとも言えません。もう、映画だけで、メールも電話も関係なくなる解放感はたまりません。
私と映画の出会いは、高校時代となります。当時、松本市にある伝統だけがある高校に通っていた落ちこぼれでした。その松本市は、昭和の時代に人口に比して映画館の数が日本で一番多いという話があるくらいの地域でした。勉学の限界を悟るなか、それに代わるように映画好きの素養が醸成されたのかもしれません。どこか、私の割り切れなさを癒してくれる存在でもあったからでしょうか。その後、資格試験や仕事に追われて、映画からも遠のいていくのです。映画の何が私に訴えるのでしょうか。作品には、作り手のメッセージはありますが、解釈は人それぞれ自由なのです。正解などないのです。作品について、感動させられるものほど、余韻があり、考えさせられていくのです。ところが、AIのチャット機能を利用すると、それらしい答えが必ずひとつ出てしまうのです。そこに、どうしても違和感が出てしまうことがあるのです。翻ると、相続財産も、どこか映画に似ていなくもありません。どうして、このような財産があるのかは、亡くなった父や母に想いを馳せてみることになるのです。父や母の生きた時間を辿る余韻のように。相続では、それを想う気持ちも大切でないでしょうか。しかしそれを「AIは、判ってくれない!」のです。
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