第三者の視点で考えるクリニックの現在価値とは。継承予定に関わらず意識したい3つの価値
近年、建築費をはじめ人件費の高騰・人材不足から「継承」を検討される方が増えている。そこで今回は、継承予定のご施設はもちろん継承予定でないご施設にも常に意識していただきたい「3つの現在価値」を第三者視点から深堀りしていく。
保険医療機関の新規開業件数は増加傾向にあることをご存じだろうか。本件数については過去の記事でも取り上げさせていただいたが、新型コロナウイルス感染症流行前の平均件数が13件ほどであったことに対し、直近1年間は22件(九州厚生局 保険医療機関指定一覧参照)の新規開業が行われた。
最近では、建物の老朽化や施設が手狭になったことでの建て替え・移転を検討されるご施設も多い。さらに第三者継承や親子間継承を希望される先生方からの相談も増えている。実際、譲受する側は初期投資を抑えつつ一定の患者数と共に働く職員を見込める。譲渡する側にとっても、基本的に全てを継承する場合は、これまで通院されていた患者の受け入れ先や職員の雇用先といった様々な悩みも解消されることだろう。ただ、継承は両者のすれ違いが起きることも多い。譲渡条件の算出には、施設の財務状況はもちろんのこと、継承後も見込める患者数やクリニックの認知度など様々な要素が絡んでくるが、見逃しやすいポイントは財務状況以外の第三者視点における「現時点でのクリニックの価値」(以後、現在価値と言う)の認識がすれ違うということだ。
では、財務状況を除いた第三者視点における現在価値とは何か。弊社で継承による譲渡・譲受をご希望の先生には、ある3つの価値について意識していただけるよう努めている。その価値とは「①院長の価値、②組織の価値、③不動産の価値」の3つに分解できる。一見、①と②は同じ括りに思われるが継承における第三者視点の価値では別物として考えるべきだ。なぜなら、第三者は自分自身がその施設の院長になる可能性を検討していることから、前院長に価値があればあるほど継承後の院長価値は未知数になってしまうのだ。そこで第三者視点としては、②組織の価値単体も必要となる。①に比べ忘れ去られがちではあるが、組織の魅力をどれだけ持っているのか、さらにその魅力は職員個々人に依存することなく組織全体として長期的に発揮可能かという点が現在価値を考えるうえで不可欠な要素である。重要なことは、院内組織としての仕組みを構築することで他施設との差別化ひいては地域に根差した医療を「永続的」に提供できるのだ。さらに③不動産の価値も欠かせない。施設の土地・建物などの純粋な不動産価値に加え、周辺環境や交通便の変化、近隣の競合施設の変化といった外的条件も重要な視点だ。
開業・移転件数が増加傾向にあると、これまで競合施設が少なかったエリアにも影響が及ぶだろう。今後より一層、競争が激化する医療施設において「第三者視点の現在価値」は継承予定に関わらず、常に意識しておくと良い。開業時は①や③に比重を置き戦略を立てるが、時間とともに②の価値を高めるための戦略を立てることも重要だ。開業時から継承時まで3つの価値のバランスをどう取るかで第三者の現在価値も変化し差別化にも繋がるだろう。そして、その②の価値の増加は組織の強化や患者満足度等の向上にも繋がるだろう。採用への影響力も大きい。
医療業界を取り巻く環境の変化や施設の競争激化時代に突入した今、自院の現在価値を「第三者」という視点から考え直してみてはいかがだろうか。
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