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ピアニスト鐵百合奈さんのリサイタルを聴きに、立川のRISURU ホールに行って来ました

ピアニスト鐵百合奈(てつ ゆりな)さんのリサイタルを聴きに、立川のRISURU ホールに行って来ました

鐵さんはピアニストでありつつも研究者の一面もあり、音楽作品が書かれた当時の楽譜や演奏法、時代背景などを分析し、そこから学び得たものを自身の演奏に取り入れて発表するという、非常に興味深い活動をされている方です。

クラシック楽曲というのは、出版された「版」によって、微妙に音使いや装飾音などに違いがあったり、収録されている曲数が違ったりといろんなことがあり、それらを学術として研究される方がいるわけですが、鐵さんはその方面にも精通されており、演奏家の中でもとりわけ作品を深く掘り下げて演奏に臨まれる方と言えます。

ピアノなんて、楽譜を見て弾くだけでも大変なのに、いろんな「版」の譜面の違いをすべて見比べた上で、微細な違いを分析し、消化した上で自分が何を弾くことを決めるわけですから、本当に手間がかかります。

鐵さんが譜面台に置いた楽譜には、受験生の赤本を思い起こさせるほどのたくさんの付箋が貼り付けてあり、それだけの箇所、分析した跡が見て取れ、コンサートに至るまでのやることの多さにただただ驚くばかり。

私も一応音大では作曲学を専攻し、在学時は授業で同級生たちと色々な作品の楽曲分析をやりましたが、いかんせん不真面目な学生で、ロックとポップスにうつつを抜かしているうちに卒業してしまい、そこから先は何でもありの実践に突入し、今となっては理論がどんどん抜け落ち、手癖しか残ってない有様ですので、本当に学生の頃にしっかりと楽曲分析を勉強しておくべきだったと反省するもあとの祭りです。

私のことはどうでもいいとして、鐵さんはMCで、演奏前に曲の分析や背景などについて話をしてくださるんですね。今回のリサイタルはシューマンをベースにしたプログラムで、シューマンが生きていた時代がどうだったということ、当時出版されたいくつかの「版」によって、どのあたりに違いがあって、今日はどの「版」を弾くのかという話。

プログラム後半は、シューマンと同じ時代を生き、直接接点もあったショパンの作品を演奏されたのですが、ショパンが作曲するときに霊感を受けたと言われているそれぞれの「詩」の物語の内容について解説してくださり、そのストーリーを想像しながら演奏を楽しめるという、イマジネーション膨らむ楽しい演奏会でした。

こう書くと学者の方のようですが、鐵さんご自身はそういった譜面に秘められた謎を解き明かしながら演奏することを、純粋に楽しんでおられるように見え、その成果を観客の私達におすそ分けしてくださってるようにも感じました。

アンコールでは、白金ピアノスタジオでも演奏してくださいったショパン「別れの曲」を。

ロビーでは、19世紀のピアノ音楽の研究者である音楽学者・小岩信治さんとの鐵さんとの対談を収録した小冊子が配布され、楽しく拝見しました。

昨年末、鐵さんがベートーヴェンのピアノ協奏曲を、少人数演奏形態にて再現する研究発表のコンサートに足を運んだのですが、その際発売された、鐵さん執筆による研究発表をまとめた書籍『ベートーヴェン ピアノ協奏曲第0番 WoO4 カデンツァ - 実演の視点から見たピアノ書法の研究』も購入してきました。

書籍には、研究結果のほか、鐵さん自身が作曲した自作カデンツァの楽譜も収録されています。

演奏活動のみならず、桐朋学園大学院にて教鞭を執り、ご自身の研究活動も続けられているスーパーピアニスト鐵百合宗さん。

彼女のコンサートを聴き終えた帰路にはいつも、体に溜まった悪玉ストレスが浄化され、健やかな気持ちになって帰れるのが不思議です。

最近は、暗譜ではなく譜面を見ながら演奏するピアノリサイタルが結構気に入っているので、その点でも良かったです。またコンサートに足を運びたいです。

初めて足を運んだ立川のRISURU ホール


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Ryo Kimura
こんな一番下まで読んでくれてありがとう!モノ作りの楽しさを感じてもらえたら嬉しいです。これからも体を張ってなんか作りますね。君の応援が俺のやる気を倍増させる!